「一輝くん⁉」
それは。
あまりにも突然のことで。
驚いた、ものすごく。
なぜなら。
引っ張られたから。
一輝くんに手を。
「結菜ちゃんも一緒にお風呂に入ろうよ」
驚いた、さらに。
なぜなら。
言ったから、一輝くんが。
『一緒にお風呂に入ろう』と。
それにっ。
一輝くんの声のトーン。
甘いっ、ものすごくっ。
「一輝くんっ、
一緒にお風呂に入るのは……」
恥ずかしいからイヤ‼ 絶対に‼
「なんで~」
より甘くなっている、一輝くんの口調。
その口調を保ちながら引っ張ってくる、私の服を。
「なんでも
ダメなものはダメ‼」
それでも。
抵抗をする、必死に。
「なんでダメなの?
僕と結菜ちゃんは恋人同士なのに」
一輝くん。
今、確かに。
言ってくれたよね。
『恋人同士』って。
「もう一度」
「え?」
「もう一度言って‼ 一輝くん‼」
聞きたい。
何度も。
一輝くんの口から。
『恋人同士』と。
「えっ? なにを?」
身を乗り出している。
それだからだろうか。
一輝くんは少し驚いた様子。
「だから」
「だから?」
「……恋人……同士って……」
「え?」
「今、一輝くん言ってくれたじゃない。
『恋人同士』だって」
「結菜ちゃん」
すご過ぎただろうか、勢いが。
固まっている、一輝くんが。
と思いきや。
それは一瞬のことで。
見せた。
フッと悪い笑みを。
する、嫌な予感が。