「聞かせて」


 え?


「なんで結菜ちゃんが泣いているのかを」


 えぇっ⁉


「僕で役に立つかどうかわからないけど、
 話なら聞くことはできるから」


 一輝くんっ⁉

 君は一体何を言っているのかな⁉


 君が理由で泣いている。
 それなのに。
 どうやって慰めるつもり⁉



 確かに。
 知らない、一輝くんは。
 私が泣いている理由。


「結菜ちゃん」


 わかっている、頭の中では。


 仕方がない。
 一輝くんが知らなくても。
 私が泣いている理由を。

 エスパーではない、一輝くんは。
 だから読めるわけがない。
 他人(ひと)の心の中なんて。


 わかっている、そんなこと。
 十分すぎるくらいに。







 だけど。

 ダメ。

 なんか。

 ものすごく。

 腹が立ってくる‼



 なによ‼ 一輝くんのわからず屋‼


 君のためにっ。
 どれだけ辛くて苦しい。
 そういう気持ちになっていると思っているの‼





 もういい‼

 わかった‼


 こうなったら‼
 泣いている。
 その理由。
 お教えしますわよ‼



「……君だから」


「え?」


「泣いているのは……
 ……一輝くんが理由だから」


「なんで?」


『なんで』って⁉

 まだわからないんだっ、一輝くんっ。


 もうっ‼

 こうなったら‼


「見かけたから」


「え?」


「一輝くんが……
 女の子と一緒にいたのを……」


 言っちゃった。

 言ってやった。


 引けない、もう。
 後には。


「結菜ちゃん」


 なんて言う? 一輝くん。