「たまたま下を向いただけだよ」


 私。


「じゃあ」


 ダメだな。


「僕の方を見て」


 かなわない、全然。


「結菜ちゃん」


 一輝くんには。







 どうしよう。

 できない、一輝くんの顔を見ることが。





 本当なら。

 平気でいなくてはいけない。


 一輝くんが誰と会っていても。

 その相手が女の子であっても。



 だって私は。

 彼女ではないのだから。
 一輝くんの。


 だから。
 できない、問うことも。

『どうして女の子と会っていたの?』って。





 だけど。

 言いたい、本当は。
 一輝くんに。

『私のことを好きって言ったのに、
 なんで他の女の子と簡単に会っているの?』って。



 もし私が。
 一輝くんの彼女だったら。
 言えるのかな?

『他の女の子と会わないで』って。