驚いた、突然のことで。

 それだからだろう。
 跳ねた、勢い良く。
 心臓が。


 なぜなら。
 一輝くんに掴まれていない、もう片方の腕。
 その腕も掴まれてしまったから、一輝くんに。





 結果。
 掴まれている、両方の腕を。

 そのため。
 とれない、全く。
 身動きが。


 封じられてしまった、動きを。

 そんな私は。
 パニック状態、頭の中が。



 そうなりながらも。
 訴える、心の中で必死に。
『一輝くんっ、離してっ‼』と。


 もちろん。
 届いていない、一輝くんに。
 その訴えは。

 それでも。
 訴え続ける。
 何度も何度も。
 心の中で。



「なんで」


 え?


「震えているの? 声」


 バレていた。


 震えそうな声。
 抑えようとしていた、必死に。
 そのことに。


「そんなことないよ。
 一輝くんの聞き間違いだよ」


 まだ震えそうになってしまう声。
 それを必死に抑え。
 そう言った。


 だけど。
 正反対。
 言葉と行動は。

 つい下を向いてしまう。


「じゃあ、
 なんで下を向いているの?」


 やっぱり。
 読まれてしまっている。
 心の中を。
 一輝くんに。