「訊けばいいじゃない」


 え。


「訊かないことで、
 結菜ちゃんがモヤモヤしているのなら、
 訊いてスッキリした方がいいよ」


 スッキリって。

 訊けることじゃないよ、そんな簡単に。



 それに。
 訊いてしまった。
 そのことで。
 残るかもしれない。
 もっともっとモヤモヤが。


 それだけではない。

 一輝くんの返答。
 それによっては。
 ショックが大きくなり。
 できなくなるかもしれない。
 立ち直ることが。



「結菜ちゃん」


 またまた入り込んでいた、自分の世界に。

 そのためだろう。
 下を向いていた、いつの間にか。





 そんなとき。
 一輝くんの声が聞こえ。
 驚いた、ものすごく。

 ハッとして顔を上げる。



 そうしたら。
 いた、目の前に。
 一輝くんが。

 そのとき。
 合ってしまった、目が。
 一輝くんと。


 それだからだろう。
 動かなくなってしまった、全く。
 身体がガチガチに固まり。


「結菜ちゃん、
 僕に訊きたいことあるんでしょ」


 固まっている。
 身体がガチガチに。

 それでも。
 働いている、なんとか。
 頭の中は。


 思った、そんな中。
『おかしい、何かが』と。



 もしかして。
 誘導しているのだろうか。
 一輝くんは。

 私が一輝くんに質問するように。


 そうだとすれば。

 乗らないっ。
 一輝くんの誘導には。


「なんでもないよっ。
 ちょっと、ぼーっとしてただけ。
 じゃあ、自分の部屋に戻るね」


 早く、少しでも。
 離れて、一輝くんから。


 って。

 えっ⁉

 一輝くん⁉