「結菜ちゃん?」


 入り込んでいた、自分の世界に。


 一輝くんに声をかけられ。
 我に返った。

 それと同時に。
 その反動で心臓が勢い良く飛び跳ねた。


「どうしたの?
 ぼーっと突っ立って」


 お茶を飲み終えた一輝くんが私の方を見ている。


「あ……あの……その……」


 どういうふうに言えばいいのだろう。

 出てこない、言葉が。


 そのためだろう。
 できない、なかなか。
 声を出すことが。







 一輝くんと一緒にいた女の子。

 その女の子との関係。


 今まで。
 どこで何をしていたのか。
 その女の子と。





 それらは。
 気になる、ものすごく。


 だけど。
 できない、訊くことが。



 だって、私は。

 彼女じゃないから。
 一輝くんの。


 だから。
 何も言えなくて。
 訊けなくて。

 それが。
 すごく、もどかしくて。

 辛すぎる。



「僕に何か用?」


 また。
 入り込んでしまっていた、自分の世界に。


 一輝くんに声をかけられ。
 再び我に返った。

 またまた、それと同時に。
 その反動で再び心臓が勢い良く飛び跳ねた。



 だけど。
 思った、そうなりながらも。


 もしかして。
 読まれてしまったかもしれない。
 心の中を。

 訊きたいことがある。
 一輝くんに。
 ということを。







 驚いた。

『何か用?』
 一輝くんにそう訊かれて。





 だけど。

 それよりも。


 一輝くんの声のトーン。

 感じた、冷たさを。



 そんな一輝くんの声を聞いて。
 ショックというか何というか。
 よくわからない感情。
 そういうものが押し寄せてきた。