“ガチャッ”


 音がした、鍵を開ける。


 帰ってきた、一輝くんが。



 一輝くんが帰ってきて。
 慌てている自分がいる。


 なんでこんなにも慌てているのだろうか。

 そう思いながら。
 落ち着かせようとした、自分の気持を。





 そのとき。
 開いた、リビングのドアが。



 普通に、普通に。

 そう自分に暗示をかけ。


 整える、準備を。
 一輝くんに声をかけるための。


「おかえり、一輝くん」


 できるだけ平静を装いながら。
 かけた、声を。
 一輝くんに。


「ただいま」


 素っ気ない、やっぱり。


 そう、だよね。










 そんな一輝くん。


 まず。
 手を洗い。

 その後。
 食器棚からコップを取り出し。

 次に。
 冷蔵庫のドアを開け。
 お茶を手に取り。
 コップにお茶を注いで。
 飲み始めた、お茶を。





 その行動。
 見ている、一通り。


 そのとき。
 回っている、グルグルと。
 頭の中で。
 あのことが。

 一輝くんと女の子のこと。

 あの女の子と一輝くん。
 二人は、どういう関係なのか。

 もしかして。
 一輝くんは。
 あの女の子と……。



 考える、そんなことを。

 そうすると。
 辛い、すごくすごく。


 なぜ辛いのか、そんなにも。







 って。

 そんなこと。
 わかっている、とっくに。


 私は。
 一輝くんのことが……。