「……確かに」


 解放されたい、この重苦しい空気から。



 そう思っていると。
 やっと開いた、口を。
 一輝くんが。


 どんな言葉でも。
 話を始めた、一輝くんが。

 そのことに少しだけ安心感を抱いた。


「確かにそうだね。
 僕は結菜ちゃんの彼氏じゃない」


 抱いた、安心感は。

 だけど。
 すぐにスーッと引いてしまう。







 一輝くんは入って行ってしまった、自分の部屋に。
 私に背を向けて。


 そんな一輝くんの背中。
 見える、冷ややかに。

 だけど。
 感じる、寂しさも。





 言い過ぎたかな、少しだけ。
『一輝くんは私の彼氏じゃない』って。



 一輝くんにそう言ってしまった。
 そのことを後悔した、少しだけ。


 だけど。
 一輝くんに声をかける。
 できなかった、そうすることは。