「隙があるからだよ」


 やめておこう、一輝くんに何かを言うことは。

 そう思っている私とは正反対。
 一輝くんは容赦なく次々と言葉を発している。



 今度は何を言った?

 隙?


『隙』とは何に対して?


「頬とはいえ。
 キスをされるということは
 結菜ちゃんに隙があり過ぎるからだよ」


 はぁ~?

 なに、その言い方。


 なんで。
 言われなくてはいけないのだろう。
 そんなことを一輝くんに。

 私に隙がある。
 そんな言い方をすることないのでは?







 拓生くんの家に行くことになった。
 その理由は。
 拓生くんが相談したいことがあると言って。
 その話は外ではできないと言っていたからで。
 それなのに。

 結局、拓生くんからの相談はなかったのだけど。





 確かに。
 そういう意味では。
 当たっているのかもしれない、少しだけ。
 一輝くんが言ったことも。


 拓生くんも一人の男の人。
 それなのに。
 部屋に二人きりでいる。
 それは軽率だったかもしれない。



 それに。
 拓生くんが私のことを想う気持ち。
 知っている。

 それなのに。
 拓生くんの部屋で拓生くんと二人きりでいる。


 そういう意味では。
『隙がある』
 そういうふうに言われてしまった、一輝くんに。

 それは仕方がないのかもしれない。










 だけど。

 それって。
 言うべきこと?
 一輝くんが。



 確かに。
 告げられている、想いを。
 一輝くんから。

 だから一輝くんがそういうふうに言った。
 そのことは間違ってはいないと思う。





 だけど。
 どうなのだろう、やっぱり。



 だって。
 一輝くんは私にとって……。