「違うんでしょ」


 言葉の続き。
 それが気になっている。

 そのとき。
 言った、一輝くんは。
『違うんでしょ』と。


 一輝くんの言葉の意味。
 わからない、全く。

 一体何が違うのだろう。


「市条先輩から相談をされたというのは」


 見抜かれてしまった、完全に。
 一輝くんに。


 そのことに驚き過ぎて。
 パニック状態、頭の中が。

 そのためだろう。
 できない、冷静に考えることが。


「やっぱり」


 考えなければならない、何か。

 そして。
 言わなければいけない、少しでも早く。
 適切な言葉を一輝くんに。



 そう思っても。
『何か』とは何か。 
『適切な言葉』とは、どういう言葉なのか。


 わからない。
 何を考え、何を言えばいいのか。

 回らない、全く。
 頭が。


「結菜ちゃん、
 顔と態度に出過ぎ」


 そんな私とは真逆で。
 次々と言葉が出てくる一輝くん。



 そんな一輝くんに対応しなくては、なんとか。

 そう思っても。
 良い方法。
 良い言葉。
 思いつかない、全く。


「それで?」


 思いつかない、方法も言葉も。





 そんな中。
 訊いてくる、何かを。
 一輝くんが。



 一輝くんがするであろう質問の内容。

 良い予感。
 しない、全く。


 きっと訊いてくる、一輝くんは。
 返答するのに難しいことを。


「市条先輩と何をしてたの?」


 やっぱり。
 訊いてきた、一輝くんは。
 返答しづらいことを。



 言えないっ。

 私と拓生くんが何をしていたか。
 そんなこと。


 拓生くんが私の頬に……。
 なんて絶対に言えない‼


「まさか」


 一輝くん?
 次は何を言ってくるのっ?