「市条先輩の家に行って、
どんな相談されたの?」
治まらない、パニック状態。
「……なんで……
まだ何も言ってないのに……」
それでも。
なんとか声を出した。
私が言った言葉。
その言葉に一輝くんは小さいため息をついた。
「結菜ちゃんの様子を見てたらわかるでしょ。
そんなの市条先輩の家に行きましたって言っているようなものじゃない」
見抜かれてしまっている。
いとも簡単に。
そうなってしまう。
それは。
鋭いからだろうか、一輝くんが。
それとも。
わかりやすいのだろうか、誰から見ても。
私の態度が。
そうだとすれば。
出てくるだろう、困ることが。
これから先も。
困る、といえば。
訊いた、一輝くんが。
拓生くんからどんな相談をされたのかと。
正直なところ。
困ってしまう、かなり。
そんなことを訊かれても。
実際。
されていない、相談を。
拓生くんから。
もちろん。
拓生くんから相談をされていたとしても。
拓生くんのプライバシーに関わること。
だから。
拓生くんが話した相談内容。
話さない、そのことは。
一輝くんに。
だから。
どう返答すればいいのだろう、こういうときは。
いいのだろうか、言った方が。
正直に。
『実は拓生くんから相談はされていない』と。
だけど。
それも何か違うような。
「結菜ちゃん」
どう返答すればいいのか、一輝くんに。
そのことでグルグルしている、頭の中が。
それだからだろうか。
名前を呼ばれた、一輝くんに。
それだけで、びっくりしてしまった。
「ひょっとして……」
びっくりしたからだろう。
動いている、激しく。
心臓が。
そんな中。
『ひょっとして』
気になる一輝くんの言葉。
その言葉が入った、耳に。
言葉の続き。
何を言うのだろう、一輝くんは。