「……なんで会ったの?」


 あれこれ考えている。

 そうしている間にも。
 一輝くんの話は続いている。


 一輝くんの声のトーン。
 それは。
 怒っている。
 というより。
 悲しそう。
 そんな感じに聞こえた。


「まさか結菜ちゃんの方から会いたいって言ったの?」


「違うよっ。
 拓生くんが相談したいことがあるって。
 だから、その話を聞くためにっ」


 なんとか出た、声が。


 だけど。
 なかなか声が出なかった。
 その反動からだろうか。
 勢い良く声が出過ぎ。
 思ったよりも大きくなってしまった。
 声のボリュームが。


「そんなの休憩時間じゃダメだったの?」


 焦るように大声を出した私。
 それに対して一輝くんは不気味なくらいに静かな声を出している。


 だけど。
 一輝くんの静かな声。
 混ざっている、その中には。
 私が言った言葉に納得がいっていない。
 そんな気持ちが。


「うん、そうみたい。
 学校では話せないことだって言ってたから」


 いっていない、納得が。
 そんな様子の一輝くん。

 だけど。
 納得してもらいたい、どうにか。
 そう願いを込め。
 返答する、一輝くんの言葉に。


「まさかだけど、
 家に行ったわけじゃないよね?」


 納得してもらいたい、一輝くんに。
 そう願っていた。

 だけど。
 その願いは叶うことはなく。


 それどころか。
 とんでもない質問。
 されてしまった、一輝くんに。


「どうなの? 結菜ちゃん。
 市条先輩の家に行ったの?」


 困った。
 そんな質問。
 一輝くんにされて。


 正直なところ。
 一番触れてほしくない。
 一輝くんには。



 そう思っているからだろう。
 うろたえてしまっている、かなり。

 そして。
 声は再び出せなくなってしまっている。





 一体どうすればいいのか。

 パニック状態、頭の中が。