――今日の天気は、出かけないのがもったいない! 思わずそう言いたくなるような快晴な空が広がります。また、お洗濯ものもよく乾く、そんな一日となるでしょう。

 ピンク色の爽やかなワンピースを着た20代ぐらいの笑顔もかわいいお姉さんは、そんな太陽みたいな明るい口調で今日の天気を伝えていた。どうやら、太陽は私たちが公園に行くのを知っていたのか……そうかのように味方してくれた。実を言うと、1週間前ぐらいまでは今日の予報は雨予報だったのだ。

 スマホを開くと、汐斗くんからラインが送られてきたみたいだ。太陽さんが『おはよう』と言っているスタンプが送られてきた。なので私も、太陽さんが『今日もよろしく』と言っているスタンプでお返しした。でも、送ってきたのが5時すぎだから、かなり早起きなんだな。そう思っていると、すぐに既読が付き、『最近知ったんだけど、今日行く公園に新しく鳥ゾーンっていうのができたんだって。海佳と唯衣花とかと行ってみたら?』と次はアドバイスが送られてきた。私は初耳だけど鳥を見ることができるなんてなんか面白そうだ。私は次に『ありがとう』と猫が言っているスタンプで返した。あとで、2人にも言ってみよう。

 時間になると、テレビを消す。それから、カバンの中身などの確認が終わると、最後に英単語帳を一番取りやすいポケット部分に入れる。そして、家を出る前にまだ出張中で頑張っているお母さんとお父さんにいってきますと言ってから扉を開けた。

 途中の(合流する)駅までは1人だ。会社員の人たちが大半を占める電車に乗って向かった。私が乗っているのは都会の方に行く上り電車なので、駅に停車するたびに乗る人数が増えてくる。十数分乗ったところで、合流する駅まで来たので、多くの降者とともに、電車を降りていった。

 この駅は初めてきたので、集合場所まで迷わないか想像以上に沢山の人たちがいたという要因もあって少し心配だったけれど、汐斗くんの姿をすぐに見つけることができた。特に問題もなくお互い待ち合わせ時間に合流できたので、昨日、汐斗くんが送ってくれた通りの電車に乗車した。

 さっきよりもこの路線は乗客が少ないので、私たちはボックス席に座ることができた。私たちは今、ボックス席を横並びに座っている。この路線の電車を使ってあの公園に行く人が大半だと思うけど、まだ同じ学校の知り合いは見ていない。

「改めておはよう」

「うん、汐斗くんおはよう」

 私は朝、コンビニで買ったもうすでにぬるくなっている水を飲んだ後に、さっそく持ってきた英単語帳を見始める。

「あー、早速、心葉は英単語の勉強か。僕はまだ全然してないけどやっぱ努力家は違うな」

「いや、そんなことはないよ」

 そんなことはない。何度も言ってるけどあくまでも私は勉強できないから勉強してるだけだ。あまり勉強しなくても点数が取れるんだったら、私はたぶんこんなに勉強することはないだろうし、そもそも人が変わっていると思う。

 とはいえ、せっかく汐斗くんと来ているんだから、というかそもそもの話、私が誘ったんだから、このまま英単語帳を見るのも少し違う気がする。

「なんか私から誘っておいてあれだから、もしよければ話しかけてよ」

 だから、私は堂々とそびえ立つ山々を窓の外から眺めている汐斗くんに対してこう言った。すると、すぐに汐斗くんが、

「なら、ちょっと僕の近況報告でもしようかな」
 
 そう言って、汐斗くんはスマホを取り出した。ロックを解除したと思われる後に、何かの画面をもし大丈夫だったらと言って、私に向かって見せてきた。

 私は英単語帳から汐斗くんが見せてくれた画面に少し視線を映す。そこにはマインドマップの画像があった。マインドマップっていうのは簡単に言うと、ある事柄を広げていくものだ。例えば、赤というものからりんごと信号機に分け、それをどんどん発展させていく……そんな感じのものだ。

 中心となる一番大きな丸には伝えたいことと書かれていた。そこから、どんどん様々な方向に広がっていっている。一部見られるのが恥ずかしいのか、それともただ秘密にしたいのか分からないけれど、黒く加工で塗りつぶされている部分もあったが、伝えたいこと、自分の心、明日、虹、などのように書かれていた。

「これは?」

「あー、これはねー。前にも少し言ったけど、僕が今度作ろうとしてる工芸作品の染め物。まあ、ちょっと秘密な部分は隠してるけど」

「あー! それのイメージを決めてる感じ? 私も文芸部のとき、小説のアイデア出しのためにやったことがあるから、なんとなく共感できるかも!」

「確かに、こういうのは小説を書くときと似てる部分があるのかもね」

 どうやら、今、私に見せてくれたのは、汐斗くんが次に作ろうとしている染め物についてのアイデア出しのメモみたいだ。私が幼稚園の時だか小学校の時だかに作った輪ゴムで模様を付けるという染め物ではそんなことを一切考えずにただその時に思いついたものでやっていたから、そこからの段階から行なっているところにすごいとしか思えない。やっぱり本当の夢を持っている人のそれに込める想いは私たちが思う以上に強いみたいだ。私も、中学の時にやっていたアクセサリー作りでは確かに汐斗くんまでの想いはなかったとしても、強い想いが――

「頑張って、応援してる!」

「ありがとう。できるだけ早く見せられるように頑張るよ」 
 
「どんなイメージの作るの?」 
  
「まだ色々考えてるから決まってないかな。だからその時までのお楽しみに!」

 『まもなく、✕✕。✕✕。お出口は右側です』

 そんな話しをしていると、電車はどうやらどこかの駅に止まるみたいだ。でも、まだ私たちが今回行く公園の最寄り駅ではないので、もう少し時間がかかる。
 
 電車が✕✕駅につき、停車してから少し経ったところで扉が開いた。この駅では数えるぐらいの人が降りた後に、その降りた人の2倍ぐらいがこの電車に乗り込んできた。

「そうだよねー」

「分かるでしょ!」

 楽しそうなことを話しながら学生服姿の人が入ってきた。聞き馴染みのある声だ。昨日も聞いた声。

「あれ? 心葉? ……と汐斗?」

「あ、心葉ちゃんじゃん」

 どうやらその聞き染みのある声は、海佳ちゃんと唯衣花だった。そして、2人は私たちの存在に気づいたらしく、少し混んできた車内の中で声をかけてきた。こんな偶然あるんだ。

「おはよう」

「おはよっす」

 私たちが挨拶を返すと、座っていい? と海佳ちゃんに言われたので、私はいいよという意味を込めて、手招きした。まだ私たちの座っているボックス席は2人分空いている。それから、2人が座る。

「2人のペアって珍しいね。というか2人がいるところ初めて見たかも。偶然会ったって感じ?」

 本当のことを言うなら、約束して会たのだけど、でも、それだと私がどうして汐斗くんといるのかという理由――自分の明日を閉じようとしてることの話になってしまうかもしれない。だから、別に私は汐斗くんと約束したこと自体は隠したいとか思ってないけど、もう一つの方は隠しておきたいので、なんと言えばいいのか分からず、頭が反応を出してくれない。

「なんか、この時間に同じ路線乗る人を僕が探してて、そしたら偶然、心葉がいたから誘ったって感じ。僕、この路線ほとんど乗らないし、方向音痴だから少し不安で……」

 汐斗くんは少し照れた様子で演技しながら、少し嘘をついて2人に説明した。確かに、全部嘘をつくよりはまだましかも知れないけれど、自分から誘ったという部分は、私から誘ったことにしてもいい気がする。でも、私のことを気遣ってくれたんだろう。

「へー、そうなんだ。まあ、この時間はまだ比較的早いからね。多分、皆のんびり屋だからぎりちょんで来るもん。やっぱ2人は偉いな。私たちもだけどねー」

 唯衣花が言ってくれて初めて知ったけれど、汐斗くんが提案してくれた電車はいくらか早い時間のものだったのか。だから、知っている人を見なかったのか。納得だ。たぶん、汐斗くんはそういうきっちりとした性格なんだろう。

「そう言えば、汐斗、少し前の話になるけど、インスタにパフェとか、パンケーキとか、それにサンドイッチとかの写真を載せてたでしょ! ちょっと羨ましすぎるよ……!」

「あー、あれね。色々あって行ったけど、美味しかったよ。あのカフェは評判高いからねー」

 汐斗くんが海佳ちゃんと言ったことに対してそう反応する。その話は確かあれだ。私が明日を閉じようとした時に、汐斗くんが止めてくれて、それでカフェに誘ったという……。3人で初めてお昼を食べた日に話題になった。

「確かに、食ベログとかでも評価が高かったかも。それはともかく、この手、だれ? こんなにたくさんの料理を一緒に食べた人って……?」

 唯衣花が汐斗くんのインスタグラムの写真を私たちに見せてきた。前も私たち3人でそういう話題が出ていた気がする。ごめんなさい、それ、私です。でも、心葉ちゃんは勉強してるのにずるいよねなんてことを海佳ちゃんに言われたので、私だとは言えなかったんだ。さっきはうまい嘘をついた汐斗くんだけど、今回はどう言うのか。たぶん、汐斗くんの性格と、さっきまでの傾向を考えれば、この手を私だとバラす確率はかなり低い。

「あー、この手……? 逆に誰だと思う? まあ、2人も知ってる人だから」

 汐斗くん……? これはばらす方向なのだろうか。それもクイズ形式で。どうやら私の読みは完全に外れたらしい。でも、バラされたとしたら、海佳ちゃんはあんなことを言ってくれたのにもかかわらず少し申し訳ない。

「んー、なんか男の手ではなさそうだよね」

「うん、この手は、女性の手かなと」

 ここで私の手を見られたら、もしかしたら気づかれてしまうかもしれないと思い、さりげなく私は自分の手を隠した。

「……誰かわからないけど、関係的に言うと定番的に、彼女とか?」

 唯衣花が自分の見解を述べる。男である汐斗くんが女の人と行くのなら、考えられる可能性は幼馴染やお姉さん、それにただの仲良しとかもあるが、一番定番なのは彼女なのかもしれない。この手の《《見た目》》的にお母さんとかそういうのは考えづらいし。

「そういう関係ではないな」

 その言葉によかったという気持ちと、少しだけ寂しいなという気持ちになる。甘いようで苦い……そんなジュースのよう。別に、汐斗くんはすごくいい人だけど好きという気持ちがあるわけでもないし、それにこんな明日を閉じようとした何の取り柄もない私を好きになっても困るし。

「そうかー。じゃあ、友達以上、恋人未満とかは?」

 次に、海佳が見解を述べた。さっきよりも少しだけ関係を下げた感じか。

『まもなく、△△。△△です。お出口は左側です』

 その時、私たちが行く公園の最寄り駅が読み上げられた。どうやらもうすぐ着くみたいだ。私はこの話も一旦区切られるだろうと思い、通路側に座っていた私は、窓側に座っていた汐斗くんが早く出られるように、開く側のドアに一足早く向かった。

 でも、まだこの話は終わっていなかったようで、汐斗くんはさっきの続きみたいなことを2人に言っていた。

 ただ、私には周りの音もあるし、少し離れた位置にいたので、その声を聞くことはできなかった。

 口の動きだけが見えた。

 ――

 その口の動きははっきり見えたはずなのに、何って言たのか分からなかった。

 この電車は私たちが今から行く公園の最寄り駅に着いた。

 そして、私はホームへ降り立った。
 
 さっき2人が言った通り、まだ私たちの乗った電車はいくらか早かったようで、公園には先生と少しの生徒しかいなかった。でも、この太陽を独り占めできるような開放的な空間が気持ちいい。私の心を温めていく。私たちは少しの間、空に向かって大きく手を広げた。この気持ちよさは皆がいると感じにくいので、早く来て正解だったかもしれない(汐斗くんがそうしたんだけど)。

 でも、あの時に汐斗くんがなんと言ったのかが無性に気になる。『違うよ』とか『そうだよ』みたいに一単語ではなく、少し文になっていた気がする。でも、なんと言ったか聞くのは恥ずかしくてとてもじゃないけどできない。それに、あそこで言ったことが本当だとも限らないし。

 時間が経つにしてまるでそれに比例するかのように人が増えてきた。なのであっという間にこの集合場所となってる臨時駐車場はお祭りでも開催されるかのように人で埋め尽くされた(臨時駐車場なので今日は特に車は停まっていない)。

 集合時刻になると、私たちは人数確認のためにクラス順かつ出席番号順に並んだ。私の名字は白野なのでちょうど真ん中の方だ。先生が休みの人がいないかなどの確認を終えると自由行動だ。特に誰と巡ってもいいので、私は海佳ちゃんと唯衣花と巡ることにしている(汐斗くんも誘ったが、3人で楽しみなよと断られてしまった。まあ、しょうがないか)。

「そう言えばこの公園に新しく、鳥がいる施設ができたんだって!」

「あー、なんかこの市で配布してる広報で見たかも。もう出来てるんだ。じゃあそこに行こう!」

「へー、そんなのできたんだー。行きたい!」

 私は今朝、汐斗くんからアドバイスされた鳥ゾーンに行かないかと提案すると、2人もそれに賛成してくれた。その場所を近くにあった園内マップで見つけ、早速そこに行くことにした。もうすでに、生徒たちがその鳥ゾーンにはいたが、まだ最近できたばかりで知ってる人はそこまで多くはないようで入れないほど混んでいるわけではなかった。

 私たちはそのドームに鳥が逃げないように少し気をつけながら入った。そのドームみたいなところに入ると、様々な鳥がすぐに私たちの世界を創っていく。

 ――チュンチュン。

 そんなような鳥の声が私たちにとっては一つの音楽のように聞こえる。私たちの心を優しく包んでいく。目をつぶってしまえば、もう、そこはどこかの広い草原にいるかのようだった。

「なんか、癒やされるよねー」

「分かる、わかる」

 2人の言うように、ただこの空間にいるだけでも、私の心の色が少し変わっているような気がする。一体、何色だろうか。ただ言えるのは、汐斗くんがアドバイスしてくれたここは大正解だったっていうことだろう。

「――私もこんな風に、鳥になりたいな」

 私の心の声が漏れる。何の偽りもない本音だ。子供みたいなこと言ってるかもしれないけれど、もし、鳥みたいに世界を駆けることができたら一生、明日を閉じたいなんて思わなくなるんじゃないか……そう思ったから。

「確かに、分かるかも宿題とかないしね!」
 
 海佳ちゃんは私の言ったことに対して反応した。でも、私はそこっ!? と思ったし、私が考えてる理由と全然違くて少し笑ってしまった。それを少し不審に思われたみたいなので、何でもないよと返した。

「私も少し頭が痛いから、鳥になったら痛くなくなるんだろうな。けど、これもよく言うけど、鳥も大変だからねー」

 唯衣花が正論をぶつけてきた。その通りなのだけど、私は鳥じゃなくてもいいから、羽ばたける――そんな人になりたい。

「っていうか、唯衣花、頭痛いの?」

「あー、うん。でもまあちょっとだけだから心配しないで」

「まあ、無理しないでね」

 少しだけなら特別心配するようなことはしなくてもいいかもしれないが、やっぱり無理は禁物だ。と言いながら、私は無理をしてしまうのだけれど。
 
「あれ、青色の鳥じゃない?」

 私たちの前を青色の鳥がゆっくりと通過した。私は鳥について詳しくないので、なんという名前の鳥なのかは分からないが、なにか不思議な力を持っているようなそんな風に思えた。ただ単純に、特別言葉を飾る必要もないぐらいに美しかった。

 何の鳥なのかを気になったのか、唯衣花がスマホで何かを検索し始めた。その調べた結果を私たちにも報告する。

「どうやら、青色の鳥は幸せを呼ぶって」

 確かに、どこか海外の童話でも青い鳥が幸せを呼ぶということで使われてた気がする。

「おー、ロマンチックじゃん!」

「汐斗、さっきの人と来ればいいのにね」

「そうだよねー」

 さっきの人って、まさか、カフェに一緒に行った人のことだろうか。あの時、聞けなかった、友達以上、恋人未満とか思ってるかを2人に聞くチャンスだ。

「ねー、あのとき、汐斗くん、その人のことを『友達以上、恋人未満』とか言ってた?」

「どうした、心葉、急に? なんか近くない?」

 どうやら私は、そのことについて気になりすぎていたせいか、2人に近づき過ぎていたみたいだ。少し恥ずかしい。それに少し、大げさみたいな声の出し方だったし。

「あー、確かに、心葉ちゃん先にドアの方行っちゃったから聞こえてなかったんだろうね。でも、そんなに気になるの? もしかしてだけど、汐斗くんのことが……とか?」

 海佳ちゃんの言ったことに心が揺らぐ。あくまで、海佳ちゃんは「ことが……とか」と好きとかとは断言はしなかったけど、そういうことが言いたかったんだろう。確かに、こんなにも興味があるということは好きと言ってるようなものなのかもしれない。正直に言えば、汐斗くんは優しいし、気遣いもできるし、何よりも今の心の支えは汐斗くんだ。

 でも、恋をしているのかなんて分からない。してないとも、してるとも断言できないから、その可能性もなくはない。でも、私は恋をすることは考えてないと思う。正反対のことを持つ人が恋をするのは違う気がするし、それに仮に一方的に恋をしたからって、こんな私を認めてもらえるはずもない。だから、本当のところ、どうなんだろう――

「まあ、とりあえずいいや。汐斗はね、その人のこと、『友達以上、恋人未満』とかとは少し違うって言ってたかな。でも、なんか一緒にいたい人とか言ってたよ。つまり言うと、分からないが本音らしい」

 どうやら、汐斗くんも私と同じことを考えているみたいだった。必ずしも人との関係にこういうのだってつけなければいけないわけではないけど、もし、つけるのだとしたらどういう関係になるんだろうか。

「そうなんだ」

「なんか、心葉ちゃん、興味深そうだね」

「いや、そんなことないよ!」

 それは、その人物こそが私だから、興味深いのは当たり前だけど、その事実を2人は知らないので、否定した。

「そうかなー」

 でも、海佳ちゃんは少しニヤリとした表情で私を見てきた。どうやらまだ、疑われてるようだ。

「まあ、次、行こうか!」

 私が何かかわいそうだとでも思ったのか、唯衣花がそう言ってくれたので、事なきを得た。でも、2人とも汐斗くんに対して私が何かを感じているのは悟ってしまったんじゃないだろうか。

 この後は、様々な色がまるでどこかおとぎ話の国にいるかのように咲いている花の世界に入り込んでそこでちょっとだけ萌え要素の入った写真を撮ったり、持ってきたメモ帳と鉛筆でその美しい景色を(絵はど下手なのだけど)スケッチしたりして集合時間まで過ごした。
 
 少し面白かったのが、花を見ている時に蜂がいて、それを無性に唯衣花が怖がっていたことだ。私の知ってる唯衣花は強い子というものが頭の中にあるので、蜂を怖がっている姿は節分の時に鬼から逃げる小さな子供のようで少しだけ面白かった。もちろん、そのまま放っておくわけにもかないので、私たちと海佳ちゃんで唯衣花を蜂のいないところまで連れて行った。