私が無事に退院でき、それから少し経った後、皆で元々汐斗くんと2人で行こうとしていた遊園地に遊びに行った。皆というのは、私と汐斗くんに加え、唯衣花や海佳(海佳からも呼び捨てで呼んでほしいと言われたので今はこうなっている)とも一緒に行ったということだ。明るい明日をともに創っていきたい人たちの集まりといったところだろうか。それとも、なんだろうか……。そんなことよりも今は楽しまないと。
「よーし、次はジェットコースター乗るぞー!」
「そうだね!」
「ジェットコースターかー。楽しそうだけど、少し苦手だから私はパスしようかなー」
「心葉と同じで僕もパスで。2人で楽しんできな。僕らはじゃあ、コーヒーカップにでも乗ろうか!」
「うん!」
私と汐斗くんはジェットコースターが少し苦手なので、その代わりに2人でコーヒーカップに乗ることにした。というか、皆のテンションが異常に高くて、そしてこの空間がすごく楽しい。少し前の私では考えられないぐらい楽しい。皆のおかげで失った日々を今日だけで埋められそうだ。
「お、2人は仲良くコーヒーカップですか。いいですねー。好きな者同士」
海佳が私たちの目を交互に見ながらそう言ってくる。その瞳が太陽の光もあってかより眩しい。そして私の瞳には海佳のミサンガが映し出されている。
「いや、別に、そういうんじゃ!」
「まあ、まあ、そういうことにしておいて……私たちは混んじゃうから先に行ってくるね。バイバイ」
「うん、バイバイ、汐斗、心葉をよろしくね」
「分かったよ」
もう、この会話で分かるかもしれないけれど、私が汐斗くんを好きなこと、そして汐斗くんが私を好きなこと……このことはもうすでにばれている。でも、私たちが2人に言ったわけではない。
では、そのことをどうして知っているのかと言うと、あの日、皆が病室を出て、汐斗くんと二人っきりになり、お互いに贈り物をしたり、お互いに「すき」と言ったあの場面をどうやら2人は病室の外から見ていたようなのだ。そのことを知ったのは2人が次にお見舞いに来てくれた翌日だったが、そのときは心臓が飛び出るぐらいびっくりしてしまった。でも、なぜだか恥ずかしさというものはなかった。
私たちは、コーヒーカップの方に行くと、そこはあまり人がいなかったので、すぐに乗ることができた。もちろん、2人で1つのコーヒーカップだ。私は一番奥のコーヒーカップを選んだ。
全部の確認が終わった後で、アナウンスが流れコーヒーカップがゆっくりと回り始めた。段々とスピードが速くなっていく。草原から吹いたような風を切っていく。私の周りを風が包み込んでいく。その風は、まるで私の黒い過去を飛ばし、新しい明るい未来を連れてきてくれてるかのようだった。私はその風に当たりながら、周りの景色を見ている。汐斗くんは、このコーヒーカップを回してくれている。
「汐斗くん……回し過ぎだよ! 速い! 速い!」
急に速くなったなと思い、汐斗くんの方を見てみると、汐斗くんが子供みたいな無邪気な顔で回していた。
「あー、ごめんごめん、つい回しすぎちゃった。じゃあ、今度は心葉が回して」
「うん」
今度は私が汐斗くんと交代して回し始めた。さっきのお返しだ! という気持ちも込めて、汐斗くんよりも速く回す。
「おーい、心葉だって!」
「えㇸㇸ」
子供だな、私。でも、そんな姿を汐斗くんになら見せられてしまう。
「じゃあ――」
汐斗くんが何やらスマホを出し、それを私の方に向けてくる。それから、何やらパシャっと音がなる。これは、もしや――
「ふふ、心葉の笑った顔。インスタにあげていい? 俺のフォロワー、まだ全然いないからそんな見られないよ」
「いや、もちろんだめ!」
私は汐斗くんの質問に即興で断った。私の顔なんて需要ないだろうし、フォロワーの数に関係なく見られるのがそもそも恥ずかしい……こんなことを、汐斗くんと関わりを持った日にも思った気がする。あの時が懐かしい。私たちの物語の始まりの日が。
「それぐらい分かってるよ。でも、幸せそうな顔が見られてよかった」
段々と、コーヒーカップの速度が落ちていく。そう、気づけばもうそろそろ終わりだ。
それからゆっくりと、コーヒーカップは止まった。
あっという間の時間だった。でもその時間は、すごく幸せだった。この数分が、何日もの価値があるように思えた。
「コーヒーカップは終わっちゃったけど、まだまだ続くよな」
「うん」
たぶん、その――まだまだ続くは2つの意味を持っているんだろう。私は大きくうなずいてから、コーヒーカップを下りる。
次はどの乗り物に乗ろうか、まだまだ楽しい日々は終わらない。私の人生はまだ新しいステージに入って、それは始まったばかりなのだから。
――明日を見る君は、私の世界を変えてくれた。
その君と、ずっとずっとこの先の未来も歩んでいきたい。
汐斗くんが急に走り出した。私も負けじとその背中を追って走り始めた。
太陽が、ずるいぐらいに眩しい。
「よーし、次はジェットコースター乗るぞー!」
「そうだね!」
「ジェットコースターかー。楽しそうだけど、少し苦手だから私はパスしようかなー」
「心葉と同じで僕もパスで。2人で楽しんできな。僕らはじゃあ、コーヒーカップにでも乗ろうか!」
「うん!」
私と汐斗くんはジェットコースターが少し苦手なので、その代わりに2人でコーヒーカップに乗ることにした。というか、皆のテンションが異常に高くて、そしてこの空間がすごく楽しい。少し前の私では考えられないぐらい楽しい。皆のおかげで失った日々を今日だけで埋められそうだ。
「お、2人は仲良くコーヒーカップですか。いいですねー。好きな者同士」
海佳が私たちの目を交互に見ながらそう言ってくる。その瞳が太陽の光もあってかより眩しい。そして私の瞳には海佳のミサンガが映し出されている。
「いや、別に、そういうんじゃ!」
「まあ、まあ、そういうことにしておいて……私たちは混んじゃうから先に行ってくるね。バイバイ」
「うん、バイバイ、汐斗、心葉をよろしくね」
「分かったよ」
もう、この会話で分かるかもしれないけれど、私が汐斗くんを好きなこと、そして汐斗くんが私を好きなこと……このことはもうすでにばれている。でも、私たちが2人に言ったわけではない。
では、そのことをどうして知っているのかと言うと、あの日、皆が病室を出て、汐斗くんと二人っきりになり、お互いに贈り物をしたり、お互いに「すき」と言ったあの場面をどうやら2人は病室の外から見ていたようなのだ。そのことを知ったのは2人が次にお見舞いに来てくれた翌日だったが、そのときは心臓が飛び出るぐらいびっくりしてしまった。でも、なぜだか恥ずかしさというものはなかった。
私たちは、コーヒーカップの方に行くと、そこはあまり人がいなかったので、すぐに乗ることができた。もちろん、2人で1つのコーヒーカップだ。私は一番奥のコーヒーカップを選んだ。
全部の確認が終わった後で、アナウンスが流れコーヒーカップがゆっくりと回り始めた。段々とスピードが速くなっていく。草原から吹いたような風を切っていく。私の周りを風が包み込んでいく。その風は、まるで私の黒い過去を飛ばし、新しい明るい未来を連れてきてくれてるかのようだった。私はその風に当たりながら、周りの景色を見ている。汐斗くんは、このコーヒーカップを回してくれている。
「汐斗くん……回し過ぎだよ! 速い! 速い!」
急に速くなったなと思い、汐斗くんの方を見てみると、汐斗くんが子供みたいな無邪気な顔で回していた。
「あー、ごめんごめん、つい回しすぎちゃった。じゃあ、今度は心葉が回して」
「うん」
今度は私が汐斗くんと交代して回し始めた。さっきのお返しだ! という気持ちも込めて、汐斗くんよりも速く回す。
「おーい、心葉だって!」
「えㇸㇸ」
子供だな、私。でも、そんな姿を汐斗くんになら見せられてしまう。
「じゃあ――」
汐斗くんが何やらスマホを出し、それを私の方に向けてくる。それから、何やらパシャっと音がなる。これは、もしや――
「ふふ、心葉の笑った顔。インスタにあげていい? 俺のフォロワー、まだ全然いないからそんな見られないよ」
「いや、もちろんだめ!」
私は汐斗くんの質問に即興で断った。私の顔なんて需要ないだろうし、フォロワーの数に関係なく見られるのがそもそも恥ずかしい……こんなことを、汐斗くんと関わりを持った日にも思った気がする。あの時が懐かしい。私たちの物語の始まりの日が。
「それぐらい分かってるよ。でも、幸せそうな顔が見られてよかった」
段々と、コーヒーカップの速度が落ちていく。そう、気づけばもうそろそろ終わりだ。
それからゆっくりと、コーヒーカップは止まった。
あっという間の時間だった。でもその時間は、すごく幸せだった。この数分が、何日もの価値があるように思えた。
「コーヒーカップは終わっちゃったけど、まだまだ続くよな」
「うん」
たぶん、その――まだまだ続くは2つの意味を持っているんだろう。私は大きくうなずいてから、コーヒーカップを下りる。
次はどの乗り物に乗ろうか、まだまだ楽しい日々は終わらない。私の人生はまだ新しいステージに入って、それは始まったばかりなのだから。
――明日を見る君は、私の世界を変えてくれた。
その君と、ずっとずっとこの先の未来も歩んでいきたい。
汐斗くんが急に走り出した。私も負けじとその背中を追って走り始めた。
太陽が、ずるいぐらいに眩しい。