翌日、お腹が空いて堪らずに目が覚めた。そういえば、昨日高羅とドーナツを食べてから、胃に何も入れていないことを思い出す。
 まだ日は昇っていないものの、窓から見える空は、淡い紫色を伴った、幻想的な明るさになっていた。
 早朝だったが、昨日はあのまま眠ってしまったため、シャワーだけ浴びに行こうと着替えを探す。私の部屋は個室で、よく見ると荷物や服は、全て見覚えのある私の持ち物だった。
 私はひっそりと扉を開けて部屋を出た。まだ誰も起きていないだろうと思ったが、浴室へ向かっていると、近くの扉がゆっくりと開き、女の子が出てきた。
 寝起きのようで、髪は前髪はヤシの木のような寝癖がついており、目は腫れている。
 その子は私を見ると、肩を跳ね上げ、驚いたような表情をしていたが、無言ですぐに視線を逸らし、私に背を向けてスタスタと歩いて行った。
 ああ、私は嫌われているのだ。ここには誰も、私を必要としてくれる人はいないのだな。
 昨晩は怒りが湧いたが、朝の寝ぼけた頭では妙に冷静に受け止めることができた。
 何だろう、この喪失感は。高校に入学して初めてのテストで、低い点数を取り、母に怒鳴られた時のような感情。
 どう足掻いたって、変わらないのだという、全てを諦めたような気分だった。
 母のいない世界だと、こうなるのか。
 体がぐんと重くなる。足の裏に張り付いた床は、やはり見慣れない茶色い木目調のフローリングだった。
 私の家の廊下は白い床だったな。
 ふとそんなことを思い出した。そういえば、この世界で私の家はどうなっているのだろう。
 そう考えながら、私はシャワーを浴び、何も口にすることなく、学校に行く準備をして外へと出た。