「どうか、あの子を助けてください」
 私は必死に頼み込んだ。これまでに積み上げた善行を全て売り払うつもりで、あの大いなる存在を前に、頭を地面につける。
「そなたの頼みであっても、こればかりは叶えることはできない」
 そんなことはわかりきっていた。わかった上での頼みだ。このままでは、あの子たちが、あまりに不憫でならない。
「全て私が責任を負います。地獄に落ちても構いません」
 覚悟はできていた。例えどのような不幸が自分の身に振りかかろうと、救えるのならそれでいい。
 すると、大いなる存在は芯のある声を私に降り注いだ。
「その覚悟はあるのだな?」
「はい、もちろんです」
 間髪を容れずに私も答えた。怖くないと言えば嘘になる。だが、怖気づいて言動を起こすことをやめてしまったら、何も変わらないのだ。
 大いなる存在は、優しい光に包まれており、姿を見ることはできなかったが、一点に見つめられている感覚はわかる。
「……わかった。そなたの今までの行いに免じて、特別に機会をやろう。但し、そう簡単に変えることはできない。選ぶのは、あの子自身だ」
 大いなる存在は、私に光を降り注いだ。温かく、どこまでも優しいその光は、体の芯の深いところまで強く響き渡る。
 頂いた特別な機会を、決して無駄にはしない。
 私はすぐに、あの子の元へ向かった。