「せんせ・・・えっ、どうして・・・」
「突然来てごめんなさいね。やはり、君が太陽くんだったのね。先日は、失礼なことを言って申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げる女性。希空の母親。
「や、やめてください!頭を上げてください」
ゆっくりと重たそうに頭を上げ、僕の目を真っ直ぐに見つめてくる。
「本当にごめんなさい。何も知らなくて、あなたが苦しんでいることに気が付けなくて・・・」
「いいんです。僕の苦しみなんて、お二人の苦しみに比べたら大したことないですから」
「この前知ったの。太陽くんが病気で・・・それも希空と対になっている難病で残り余命が僅かってことも・・・」
僕の頭が真っ白になる。隠していた内容全てが、もうバレてしまっていた。
「どこでそれを・・・」
「希空の葬式の時にね、太陽くんだけが希空の葬式に参列していなかったの。他のクラスの子たちはみんな出席していたのに。だから、私気になって希空の親友の小川未來ちゃんって知ってる?」
「はい」
「未來ちゃんがね、言っていたのよ。『夜瀬くんはもう時間がないんです』って。それで、私は翌日ここへやって来て、希空の担当医でもあった立花先生に問い詰めたの。最初は口を開こうとはしなかったんだけれど、私がしつこくしたものだから諦めて全てを話してくれたわ」
「先生が・・・」
「ごめんね。こんな形で知られたくはなかったよね。私も本当はその日のうちに太陽くんと、話そうと思ったんだけど、怖気付いちゃって足が動かなかったの。私、とても失礼なことを言ったんだと思うと、怖くて足が動かなかった」
ポロポロと希空のお母さんの目から綺麗な涙が、顔の輪郭に沿って顎の先から床へと落ちていく。
「・・・・・」
なんて声をかけたらいいのか、僕にはわからなかった。ただ目の前で泣いている彼女の母親を見ていることしか...
「今日も先生に無理を言って、ここに来させてもらったの。どうしても太陽くんに渡しておきたいものがあったから」
「僕に渡したいもの?」
「えぇ、そうよ。私からじゃなくて希空からよ」
希空が僕に...何を渡されるのかさっぱり見当もつかない。
大きな鞄から取り出されたのは、真っ白な袋。見た目は手のひらサイズ。
「これは?」
希空のお母さんの手から、僕の手へと渡される希空からのプレゼント。
「開けてみて。きっと太陽くんなら、その2つの物の意味がわかるはずだから。私には何を意味しているのか、全く分からなかったわ。この前希空の部屋を掃除している時に、机の引き出しの中から見つけたの。『太陽へ』って書かれた手紙と共にね」
「手紙・・・」
ハンカチで目元を拭うおばさん。その様子が、生前の希空とどこか似ている雰囲気があり、懐かしく感じてしまう。
「それじゃ、私は失礼するわね」
「あ、はい。お気をつけて」
「あら、本当に優しい子ね。希空には勿体ないくらい」
「いえ、僕の方こそ希空には勿体ないですよ」
「ふふっ。あなたたちは似たもの同士なのね。もしよかったら、またここに来てもいいかしら?」
「はい、ぜひ。いつでも待ってます!」
「ありがとう。太陽くん、負けないでね。未来をちゃんと生きるのよ」
おばさんが出ていった後の病室には、希空から香っていた柔軟剤の甘い香りが漂っていた。
まるで、希空もさっきまで僕たちの近くにいたような感覚だった。
「突然来てごめんなさいね。やはり、君が太陽くんだったのね。先日は、失礼なことを言って申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げる女性。希空の母親。
「や、やめてください!頭を上げてください」
ゆっくりと重たそうに頭を上げ、僕の目を真っ直ぐに見つめてくる。
「本当にごめんなさい。何も知らなくて、あなたが苦しんでいることに気が付けなくて・・・」
「いいんです。僕の苦しみなんて、お二人の苦しみに比べたら大したことないですから」
「この前知ったの。太陽くんが病気で・・・それも希空と対になっている難病で残り余命が僅かってことも・・・」
僕の頭が真っ白になる。隠していた内容全てが、もうバレてしまっていた。
「どこでそれを・・・」
「希空の葬式の時にね、太陽くんだけが希空の葬式に参列していなかったの。他のクラスの子たちはみんな出席していたのに。だから、私気になって希空の親友の小川未來ちゃんって知ってる?」
「はい」
「未來ちゃんがね、言っていたのよ。『夜瀬くんはもう時間がないんです』って。それで、私は翌日ここへやって来て、希空の担当医でもあった立花先生に問い詰めたの。最初は口を開こうとはしなかったんだけれど、私がしつこくしたものだから諦めて全てを話してくれたわ」
「先生が・・・」
「ごめんね。こんな形で知られたくはなかったよね。私も本当はその日のうちに太陽くんと、話そうと思ったんだけど、怖気付いちゃって足が動かなかったの。私、とても失礼なことを言ったんだと思うと、怖くて足が動かなかった」
ポロポロと希空のお母さんの目から綺麗な涙が、顔の輪郭に沿って顎の先から床へと落ちていく。
「・・・・・」
なんて声をかけたらいいのか、僕にはわからなかった。ただ目の前で泣いている彼女の母親を見ていることしか...
「今日も先生に無理を言って、ここに来させてもらったの。どうしても太陽くんに渡しておきたいものがあったから」
「僕に渡したいもの?」
「えぇ、そうよ。私からじゃなくて希空からよ」
希空が僕に...何を渡されるのかさっぱり見当もつかない。
大きな鞄から取り出されたのは、真っ白な袋。見た目は手のひらサイズ。
「これは?」
希空のお母さんの手から、僕の手へと渡される希空からのプレゼント。
「開けてみて。きっと太陽くんなら、その2つの物の意味がわかるはずだから。私には何を意味しているのか、全く分からなかったわ。この前希空の部屋を掃除している時に、机の引き出しの中から見つけたの。『太陽へ』って書かれた手紙と共にね」
「手紙・・・」
ハンカチで目元を拭うおばさん。その様子が、生前の希空とどこか似ている雰囲気があり、懐かしく感じてしまう。
「それじゃ、私は失礼するわね」
「あ、はい。お気をつけて」
「あら、本当に優しい子ね。希空には勿体ないくらい」
「いえ、僕の方こそ希空には勿体ないですよ」
「ふふっ。あなたたちは似たもの同士なのね。もしよかったら、またここに来てもいいかしら?」
「はい、ぜひ。いつでも待ってます!」
「ありがとう。太陽くん、負けないでね。未来をちゃんと生きるのよ」
おばさんが出ていった後の病室には、希空から香っていた柔軟剤の甘い香りが漂っていた。
まるで、希空もさっきまで僕たちの近くにいたような感覚だった。