「希空」
「ん?」
「希空の夢は叶いそう?」
「私の夢?」
「うん。空を飛びたいって夢」
「あぁ、忘れてた。太陽と付き合う前は、それが私の死ぬまでにしたいことだったけど、今は違うかな。飛びたいって気持ちはまだあるけど、それよりも大きな夢ができちゃったから」
「何?」
「太陽といつまでも長生きしたいな」
「希空・・・」
「へへへっ! これも無謀な夢だけど、夢くらいは高く設定した方が人は頑張れるからね!」
「いい夢だ・・・ごめんなんか泣きそう」
「なんでよ!太陽、入院してから涙もろくなったよね」
「そうかもしれない。希空が泣かせること言うからだよ」
「しーらない! 太陽の夢はなんなの?」
「特にはないんだけど、強いて言うなら・・・希空より先に空へ飛んでいくことかな」
私の空を飛ぶとは、少しニュアンスが違って聞こえるのは気のせいだろうか。
まるで、私より先に空へと旅立っていくのが夢と言っているように聞こえる。
「それってさ・・・私より先に・・・」
「希空には、僕の骨を焼いたあと灰になった僕の一部を空に飛ばしてほしいんだ。それが、僕の小さな夢」
「そんな・・・悲しいこと言わないでよ」
「僕は、もう長くない。自分の体のことはよくわかる。多分春は迎えられない・・・だからお願いだよ希空。この世で1番大好きで大切な君にしか頼めないことなんだ」
「太陽・・・」
「辛い気持ちを承知の上だし、勝手なのはわかってる。ごめ・・・」
「謝らないでよ。約束は守る。ただし、ひとつだけ約束させて」
「うん」
「旅立つ前に生きている太陽の笑顔が見たいよ」
固唾を飲む音が聞こえる。予想外だったのか、ベッドが軋む音が止まない。
「・・・・・」
「最後に見る太陽の顔が、眠っている顔なんて私嫌だよ。一度でいいから・・・お願い」
カーテンの奥で、深呼吸をしている音がやけにクリアに聞こえる。
一言告げるのにも覚悟がいるのが、彼の様子を感じることでわかってしまう。
張り詰めた空気の中、彼の息を吐く音、私の心臓が鼓動する音が病室に響いているみたいだ。
「・・・わかった。でも、もう少しだけ待ってほしい」
「うん。待ってるよ。約束だよ、太陽」
「うん。約束は守るよ」
「約束の証!指切りはできないから、手をカーテンに当てて」
彼の手がカーテンに触れる。私よりも大きくゴツゴツした手。その手にそっと私の手を重ねる。
彼の体温が、カーテンの布越しにほんのりと伝わってくる。温かく、優しい彼の熱。
「希空の手、冷たいよ」
「さっきまで外にいたからね」
「あと少しだけこのままでいさせて」
「もちろん!」
繋がっている手から私たちの気持ちも重なり合っている気がした。
「ん?」
「希空の夢は叶いそう?」
「私の夢?」
「うん。空を飛びたいって夢」
「あぁ、忘れてた。太陽と付き合う前は、それが私の死ぬまでにしたいことだったけど、今は違うかな。飛びたいって気持ちはまだあるけど、それよりも大きな夢ができちゃったから」
「何?」
「太陽といつまでも長生きしたいな」
「希空・・・」
「へへへっ! これも無謀な夢だけど、夢くらいは高く設定した方が人は頑張れるからね!」
「いい夢だ・・・ごめんなんか泣きそう」
「なんでよ!太陽、入院してから涙もろくなったよね」
「そうかもしれない。希空が泣かせること言うからだよ」
「しーらない! 太陽の夢はなんなの?」
「特にはないんだけど、強いて言うなら・・・希空より先に空へ飛んでいくことかな」
私の空を飛ぶとは、少しニュアンスが違って聞こえるのは気のせいだろうか。
まるで、私より先に空へと旅立っていくのが夢と言っているように聞こえる。
「それってさ・・・私より先に・・・」
「希空には、僕の骨を焼いたあと灰になった僕の一部を空に飛ばしてほしいんだ。それが、僕の小さな夢」
「そんな・・・悲しいこと言わないでよ」
「僕は、もう長くない。自分の体のことはよくわかる。多分春は迎えられない・・・だからお願いだよ希空。この世で1番大好きで大切な君にしか頼めないことなんだ」
「太陽・・・」
「辛い気持ちを承知の上だし、勝手なのはわかってる。ごめ・・・」
「謝らないでよ。約束は守る。ただし、ひとつだけ約束させて」
「うん」
「旅立つ前に生きている太陽の笑顔が見たいよ」
固唾を飲む音が聞こえる。予想外だったのか、ベッドが軋む音が止まない。
「・・・・・」
「最後に見る太陽の顔が、眠っている顔なんて私嫌だよ。一度でいいから・・・お願い」
カーテンの奥で、深呼吸をしている音がやけにクリアに聞こえる。
一言告げるのにも覚悟がいるのが、彼の様子を感じることでわかってしまう。
張り詰めた空気の中、彼の息を吐く音、私の心臓が鼓動する音が病室に響いているみたいだ。
「・・・わかった。でも、もう少しだけ待ってほしい」
「うん。待ってるよ。約束だよ、太陽」
「うん。約束は守るよ」
「約束の証!指切りはできないから、手をカーテンに当てて」
彼の手がカーテンに触れる。私よりも大きくゴツゴツした手。その手にそっと私の手を重ねる。
彼の体温が、カーテンの布越しにほんのりと伝わってくる。温かく、優しい彼の熱。
「希空の手、冷たいよ」
「さっきまで外にいたからね」
「あと少しだけこのままでいさせて」
「もちろん!」
繋がっている手から私たちの気持ちも重なり合っている気がした。