秋も終わりに差し掛かっているのだろうか。あんなに綺麗に街を彩っていた紅葉が、すっかり枯れ果ててしまっている。

　またあの紅葉を見るのに、また1年も待たないといけないと思うと切なくなる。

　それが、日本の四季の良さであり切なさを心に残したまま去っていく季節の最大限の持ち味なのだろう。

　どの季節も最初はその季節を待ち遠しく思い、人々は訪れるのを待っている。

　しかし、中盤になるにつれだんだんと飽きやその季節の悪いところばかりが見えてしまう。

　春は花粉症。夏は絶望的な暑さ。秋は気温の変化での体調管理。冬は単純に寒い。

　どれも人々にとっていいものばかりではない。

　でも、これ以上に四季がもたらしてくれる私たちへの恩恵は計り知れないのだ。

　今、我々が冬を待ち望んでいるように、冬にしか見ることができない景色や体験が待っている。

　毎年訪れるものだが、人々が感じるものは毎年違う。高校3年生の冬と大学1年生の冬が全く違うように、ひとつ歳が違うだけでも見えてくる景色や感性は大きく変わってくる。

　今年もまた秋が終わりを迎える。冬に備え、動物たちは冬眠をし、木々は葉を散らし細身の枝が浮き彫りになる。

　冬になるにつれ、寒さと共に寂しさや切なさが増していくだろう。

　寒さは孤独感を増幅させていくんだ。だから、私は今日も彼の隣に寄り添うために彼の元へと向かう。

　決して1人にさせないように。寂しい思いをさせないように。

「今日は一段と冷えるな〜」

　いつからか私の制服もコートに隠れてしまっている。制服だけでは寒いので、つい先日茶色のダッフルコートをママに買ってもらった。

　最近はこれがないと寒さで、やられてしまいそう。

　通り過ぎていく人たちの格好も完全に冬仕様のものへと切り替わっている。

「もうそんな季節なんだな〜」

　言葉にして吐く息が、若干私の目に白っぽく写る。白くぼやけて一瞬で消えていく。

　あと数週間もすると、本格的に冬シーズンに差し掛かるだろう。街全体が空から降る白い結晶のベールに包まれ、白銀世界へと変わりゆく日はそう遠くはない。

　どの季節が1番好きかと聞かれたら、私は間違いなく『冬』だと答える。

　なぜと聞かれたら、すぐにこれと言って答えることはできないだろう。ただ、冬が孕んでいる切なさや寂しさが私は好き。

　切なさや寂しさが増幅する分、人から与えてもらう温もりがいつも以上に温かく感じるから。

　電線の上から私を見下している黒一色に染まったカラスが、空へと羽ばたいていく。

　揺れる電線。私の足元には、黒く綺麗な羽がひとつだけ落ちていた。