先生と太陽の病室へと向かうため、エレベーターに乗り込む。
密室に2人きり。これで、誰にも会話を聞かれることはない。
「先生、ありがとうございます」
「いいんだよ。希空ちゃんの頼みなら聞かないわけにもいかない。それに太陽くんとは、僕は希空ちゃん以上に長い付き合いだ。今の彼に何が必要なことかくらい僕にだって、肌がピリつくくらい感じられる」
「先生は太陽の担当医なんですか?」
「そうだよ。僕は2人の担当医さ。だから、本当はダメなんだけど、2人の望むことはできることなら僕も手助けをしたいんだ。僕は2人のことが大好きだからね。完全に私用が入ってしまってるけど、それくらい君らのことは応援してるんだよ。でも、現実はそううまい話ばかりじゃない。特に今回は・・・深刻だよ」
先生の顔色が悪くなったのが、見てわかる。深刻...その言葉の意味が深くのしかかる。
「太陽のことですか?」
「希空ちゃん」
「はい」
「太陽に会う覚悟はあるね?中途半端な気持ちでは会わない方がいい。希空ちゃんが傷つくだけだから」
「はい、そのつもりでここに来ました。私は何があっても逃げません。もう逃げないって決めたんです。私の世界を変えてくれた太陽を今度は私が変える番なんです」
「そっか。希空ちゃんは強くなったね。もしかして、彼氏のおかげかな?」
「ど、どうしてそれを!」
「いつも太陽くんと話すと希空ちゃんの話しか出てこないから。それに、君たちはお似合いだよ」
お似合い...この言葉にはどんな意味が込められているのだろう。単純に私と太陽がお似合いなのか、それとも対になっている病気を患っているからお似合いなのか。
口に出しはしないが、前者であればいいなと思った。
"チン"
エレベーターが目的の階に到着した合図。昨日までいた場所とは明らかに違うのがわかる。
この病院にこんな場所があったとは。特別病室と書かれている部屋が3室用意されている。
「ここはね、特別な人しか入れないんだ。親族でも入れる人は限られているくらいにね。それくらいここには、奇病や治療不可能な難病を患った患者が入院しているんだ」
「そう・・・なんですね」
治療不可能という言葉が、太陽と会えると思って高鳴っていた心臓をスーッと落ち着かせていく。
「希空ちゃんをここに入れたのにも理由があるんだよ」
「理由?」
「そう、希空ちゃんも世界的に稀な難病、そして奇病を患っているからね。君にもこの病室に入れる資格は十分ある。一応症状が分かりやすく出ているわけではないけど、該当はしているからね」
「先生、太陽はもう・・・」
先ほどからの先生の言動が、私の心を不安に駆り立てていく。
「希空ちゃん、それは僕の口から聞くことじゃない。自分の目で耳で肌で感じなさい。この先からは僕にできることは何もないよ。僕はここまでの案内要員にすぎないからね」
「先生。私大丈夫でしょうか。太陽に話を聞いてもらえるでしょうか」
「大丈夫さ、希空ちゃんの真剣な想いを伝えれば、きっと太陽くんの心も動くはずだよ」
「が、頑張ってみます」
「頼んだよ。この世で彼の心を動かせるのは世界中探しても希空ちゃんしかいないだろうから・・・」
私が彼女だから?似たような病気だから?考えていても仕方がない。エレベーターの扉が閉まり、先生の姿は見えなくなる。
ここからは、私1人の勝負だ。病院らしくない、薬の匂いが一切感じられない空気を肺に取り込み、ゆっくりと吐き出す。
さぁ、準備はできた。目の前の『夜瀬太陽』と書かれた病室のドアを握りしめた。
密室に2人きり。これで、誰にも会話を聞かれることはない。
「先生、ありがとうございます」
「いいんだよ。希空ちゃんの頼みなら聞かないわけにもいかない。それに太陽くんとは、僕は希空ちゃん以上に長い付き合いだ。今の彼に何が必要なことかくらい僕にだって、肌がピリつくくらい感じられる」
「先生は太陽の担当医なんですか?」
「そうだよ。僕は2人の担当医さ。だから、本当はダメなんだけど、2人の望むことはできることなら僕も手助けをしたいんだ。僕は2人のことが大好きだからね。完全に私用が入ってしまってるけど、それくらい君らのことは応援してるんだよ。でも、現実はそううまい話ばかりじゃない。特に今回は・・・深刻だよ」
先生の顔色が悪くなったのが、見てわかる。深刻...その言葉の意味が深くのしかかる。
「太陽のことですか?」
「希空ちゃん」
「はい」
「太陽に会う覚悟はあるね?中途半端な気持ちでは会わない方がいい。希空ちゃんが傷つくだけだから」
「はい、そのつもりでここに来ました。私は何があっても逃げません。もう逃げないって決めたんです。私の世界を変えてくれた太陽を今度は私が変える番なんです」
「そっか。希空ちゃんは強くなったね。もしかして、彼氏のおかげかな?」
「ど、どうしてそれを!」
「いつも太陽くんと話すと希空ちゃんの話しか出てこないから。それに、君たちはお似合いだよ」
お似合い...この言葉にはどんな意味が込められているのだろう。単純に私と太陽がお似合いなのか、それとも対になっている病気を患っているからお似合いなのか。
口に出しはしないが、前者であればいいなと思った。
"チン"
エレベーターが目的の階に到着した合図。昨日までいた場所とは明らかに違うのがわかる。
この病院にこんな場所があったとは。特別病室と書かれている部屋が3室用意されている。
「ここはね、特別な人しか入れないんだ。親族でも入れる人は限られているくらいにね。それくらいここには、奇病や治療不可能な難病を患った患者が入院しているんだ」
「そう・・・なんですね」
治療不可能という言葉が、太陽と会えると思って高鳴っていた心臓をスーッと落ち着かせていく。
「希空ちゃんをここに入れたのにも理由があるんだよ」
「理由?」
「そう、希空ちゃんも世界的に稀な難病、そして奇病を患っているからね。君にもこの病室に入れる資格は十分ある。一応症状が分かりやすく出ているわけではないけど、該当はしているからね」
「先生、太陽はもう・・・」
先ほどからの先生の言動が、私の心を不安に駆り立てていく。
「希空ちゃん、それは僕の口から聞くことじゃない。自分の目で耳で肌で感じなさい。この先からは僕にできることは何もないよ。僕はここまでの案内要員にすぎないからね」
「先生。私大丈夫でしょうか。太陽に話を聞いてもらえるでしょうか」
「大丈夫さ、希空ちゃんの真剣な想いを伝えれば、きっと太陽くんの心も動くはずだよ」
「が、頑張ってみます」
「頼んだよ。この世で彼の心を動かせるのは世界中探しても希空ちゃんしかいないだろうから・・・」
私が彼女だから?似たような病気だから?考えていても仕方がない。エレベーターの扉が閉まり、先生の姿は見えなくなる。
ここからは、私1人の勝負だ。病院らしくない、薬の匂いが一切感じられない空気を肺に取り込み、ゆっくりと吐き出す。
さぁ、準備はできた。目の前の『夜瀬太陽』と書かれた病室のドアを握りしめた。