「はぁ〜。さっぱりした!」

 お風呂場から出て、全身を干してあったバスタオルで水滴が残らないように拭く。

 すぐに服を着るのは、体に良くはないとテレビかなんかで言っていたので、バスタオルで体を包み顔のケアを始める。

 洗面台の鏡に映る自分の顔。久しぶりにこんなまじまじと見たが、彼と出会う前と比べるとかなり顔色が良くなった気がする。

 むしろ、そこら辺にいるであろう健康な女の子そのもの。紫外線を浴びていない分、顔と髪の白さは際立ってしまうが。

 鏡の後ろにある棚から化粧水を取り出し、顔がびちゃびちゃになるくらい浸す。

「はい、終了!」

 これで私の顔のケアはおしまい。なんなら、化粧水もいらない気がするが、ママがそれくらいはつけた方がいいと言うので、渋々つけている。

 肌荒れなど一切したことがないこの肌。女友達に化粧水しか使ってないと言うと、まず疑われるほど。

 本当に化粧水しか使っていないのに...

 体の方もだいぶ乾いてきたので、準備しておいた服を順番に着ていく。

「よし!我ながらいい感じですね〜」

 鏡に向き合って顔をキメながら自画自賛している私。1人だからできることであって、誰かに見られていたら...

「大丈夫?」

「えっ!」

 声のした方に振り返ると、眠たい目を擦りながら扉の隙間から私を覗いているパジャマ姿のママ。

「もしかして、昨日のがまだ・・・」

「違うの! もう私はすっかり元気だから!」

「それならいいんだけど、もう少し静かにお願いね。それに、こんな朝早くからどこかにいくの?」

「ごめん。起こしちゃったよね。出かけるけど、もう少し日中になったらね」

「いいわよ、喉が渇いて起きてきただけだから。そう、出かける時は気をつけてね」

「はぁ〜い」

 扉が閉められ、階段を登っていく足音が聞こえると同時に羞恥心が湧き上がってくる。

 まさか、ママが起きてくるとは思ってもいなかった。それに、鏡の前でキメ顔をしていたせいで、体調がまだ悪いのかと心配までされてしまった。

 まだ親でよかったが、親でも流石にこれは恥ずかしすぎる。

「はぁ〜。もう最悪だよ〜」

 静かにその場にしゃがんで頭を抱え込む。まだ頭を乾かしていないせいか、毛先から首筋を伝う水が冷たい。

 タオルで水を吸い取ったはずの髪の毛から、フローリングの床に一滴、また一滴と滴が垂れ落ちていた。