小鳥の囀りで目が覚める。

 時計を見なくても今の時刻が、大体何時かは想像がつく。

 多分早朝の5時くらいだろう。ベッドの枕元に置かれた置き時計で時間を確認する。

 5時4分。

「大体合ってるや」

 今頃東の空から、ゆっくりと朝日が我々人間に朝を届けるために顔を出している頃だろう。

 窓を開けたら、気持ちのいい陽光が差し込んでくるというのに、私はそれを肌で感じることも見ることもできないのが残念。

「昨日シャワー浴びなかったから、浴びないと」

 着替えるための荷物をクローゼットの引き出しから選別する。

 たくさんの服が収納されている割には、綺麗な方だろう。色別に収納しているあたり、かなりの几帳面さが出ているなと実感できる。

 今手に取ったのは、黒色のVネックワンピースにちょっと女の子らしさを出した腕の辺りがフリフリっとしたブラウス。

 可愛さを出しつつ、綺麗さも兼ね備えたファッション。

「よし!今日はこれを着て太陽に会いに行こう」

 自室のドアを慎重に閉め、足音を立てないようにゆっくりと忍足で階段を降りる。

 今日は両親ともに休日なので、休日くらいはのんびりと寝かせておいてあげたい。

 ほとんど物音を立てずに、お風呂場まで到着することが私の最重要任務。

 そーっと、音を立てないように。階段を降りていく。

 無事何事もなく一階に辿り着いた私は、そのままお風呂場へと直行する。

 衣服を脱ぎ捨て、洗濯物籠へと押し込む。几帳面なところは神経質だが、意外とずぼらなところもちらほら。

 お風呂場の換気扇が回っているのか、ほんの少しだけ肌寒い空気が私の体を撫でるように伝わる。

「うぅ、さむっ」

 急いでシャワーの栓を捻る。勢いよく出てくるお湯...ではなく水。

「きゃー! つめたっ!!」

 慌てて栓を捻ったため、水が出てくることを予期していなく全身に浴びてしまった。

 すかさずシャワーを体から離し、お湯が出てくるのを片手で確かめながら待つ。

 徐々にお風呂場の冷え切った空気と相まって、お風呂場に湯気が湧き始める。お湯が出てきた証拠だ。

 今度こそ、しっかりお湯が出ていることを片手で確認をして体へと浴びせる。

「あったかーい。朝に浴びるの気持ちいい」

 ついさっきまで寝ていたとは思えないほど、シャワーを浴びているせいか目が覚醒しきっている気がする。

 モクモクとお風呂場に立ち込める湯気。口から吸い込む空気がほんのりと熱っぽい。

 シャワーから溢れ出すお湯を頭へとかけていく。じんわりと熱を持ち始める頭皮。

 下を向いている私の横から、大量に排水溝へと吸い込まれていくお湯。

 気分が良くなってきたので、ちゃっかりと鼻歌を口ずさんでしまう。

「あなたに・・・これからも・・・」

 鼻歌のはずがいつの間にか、口から歌が漏れ出す。口から音源とは程遠い歌声が、お風呂場の中に響き渡る。

 お風呂で歌うと音が反響するせいか、普段自分がカラオケで歌うよりも数倍上手く聞こえる。

 大部分が錯覚なのだけれど...

「さーて、洗いますか!」

 排水溝に流れていく、白い泡たち。彼への不安もこのまま水に流してしまいたかった。