「んっ」
白い天井が目の前に広がる。家の天井ではないのは間違いない。恐ろしく高く、そして白い。
横になっているから高く感じるのか。いや、それにしてもなんだか薬臭い気もする。
「どこ、ここ」
固いマットレスがギシリと軋む。どうやら、私のベッドから出た音ではなく、レースのカーテンで遮られた隣のベッドから鳴った音らしい。
そうだ、私はコスモス畑で倒れたんだ。そうなると、この場所は...病院の病室。
「やっと起きた?」
この声は...寝ていた体を勢いよく起こして、耳をすませる。
聞き間違いではなければ、この声の持ち主はこの世界で最も私が生きていてほしいと望んでいる人。
「た、太陽なの・・・わ、私たち生きてるの?」
「生きてるよ。心配かけてごめんよ希空。不安だったよね、ほんとごめん」
間違いない。今私の隣にいる人は太陽だ。
「よ、よかった〜!生きててくれてよかったよ〜」
涙と鼻水が混じり、思ったように声にならない。そんな様子が伝わったのか、レース越しに彼のクスッと笑う声が聞こえてくる。
それだけで私は嬉しかった。彼が元気なことが何よりも嬉しかった...
「希空は体なんともない?」
「うん。いつも通りかな。太陽は?」
「・・・・・」
沈黙が1枚のカーテン越しに流れる。カーテンではなく、分厚い壁が私たちの間に聳え立っているような圧迫感。
「どうしたの、太陽」
「ちょっとね。体が痛くて・・・」
「大丈夫?カーテン開け・・・」
「開けるな!」
今まで彼が怒鳴ることは1度たりともなかった。それなのに、彼は今...
「太陽・・・?」
恐る恐る彼の次の言葉を待つしかできない私。
私たちを遮っているカーテンが、病室の微かな冷房の空気で揺らめく。
風に揺られるくらい薄いはずなのに、私はこのカーテンを捲ることができない。
手を差し伸べることさえも...
「ごめん、傷つけるつもりはないんだ。ただ・・・」
「できることなら、私は・・・」
「じゃあ、もう僕のことは忘れてくれ。別れよう希空」
「ど、どうして! なんで別れないといけないの!」
「もう希空のことを好きじゃなくなったんだ」
「そんなの嘘だよ。私にはわかる、絶対嘘ついてる」
「お願いだ・・・希空」
さっきまでの声量が嘘だったかのように、途端に雨に濡れた子犬のような弱々しさが伝わってくる。
「どうして。話してくれないとわからないよ」
「うるさい! もうほっといてくれよ!」
"コンコン"
私たちの病室をノックする音。
扉の隙間から顔を覗かせたのは、真っ赤に目を腫らしたママの姿だった。
「よかった・・・本当に無事でよかった」
その場に崩れるように地面に座り込んでしまうママを私は黙って見ていることしかできなかった。
自分の体の心配よりも今は、太陽のことで頭がいっぱいだった。
白い天井が目の前に広がる。家の天井ではないのは間違いない。恐ろしく高く、そして白い。
横になっているから高く感じるのか。いや、それにしてもなんだか薬臭い気もする。
「どこ、ここ」
固いマットレスがギシリと軋む。どうやら、私のベッドから出た音ではなく、レースのカーテンで遮られた隣のベッドから鳴った音らしい。
そうだ、私はコスモス畑で倒れたんだ。そうなると、この場所は...病院の病室。
「やっと起きた?」
この声は...寝ていた体を勢いよく起こして、耳をすませる。
聞き間違いではなければ、この声の持ち主はこの世界で最も私が生きていてほしいと望んでいる人。
「た、太陽なの・・・わ、私たち生きてるの?」
「生きてるよ。心配かけてごめんよ希空。不安だったよね、ほんとごめん」
間違いない。今私の隣にいる人は太陽だ。
「よ、よかった〜!生きててくれてよかったよ〜」
涙と鼻水が混じり、思ったように声にならない。そんな様子が伝わったのか、レース越しに彼のクスッと笑う声が聞こえてくる。
それだけで私は嬉しかった。彼が元気なことが何よりも嬉しかった...
「希空は体なんともない?」
「うん。いつも通りかな。太陽は?」
「・・・・・」
沈黙が1枚のカーテン越しに流れる。カーテンではなく、分厚い壁が私たちの間に聳え立っているような圧迫感。
「どうしたの、太陽」
「ちょっとね。体が痛くて・・・」
「大丈夫?カーテン開け・・・」
「開けるな!」
今まで彼が怒鳴ることは1度たりともなかった。それなのに、彼は今...
「太陽・・・?」
恐る恐る彼の次の言葉を待つしかできない私。
私たちを遮っているカーテンが、病室の微かな冷房の空気で揺らめく。
風に揺られるくらい薄いはずなのに、私はこのカーテンを捲ることができない。
手を差し伸べることさえも...
「ごめん、傷つけるつもりはないんだ。ただ・・・」
「できることなら、私は・・・」
「じゃあ、もう僕のことは忘れてくれ。別れよう希空」
「ど、どうして! なんで別れないといけないの!」
「もう希空のことを好きじゃなくなったんだ」
「そんなの嘘だよ。私にはわかる、絶対嘘ついてる」
「お願いだ・・・希空」
さっきまでの声量が嘘だったかのように、途端に雨に濡れた子犬のような弱々しさが伝わってくる。
「どうして。話してくれないとわからないよ」
「うるさい! もうほっといてくれよ!」
"コンコン"
私たちの病室をノックする音。
扉の隙間から顔を覗かせたのは、真っ赤に目を腫らしたママの姿だった。
「よかった・・・本当に無事でよかった」
その場に崩れるように地面に座り込んでしまうママを私は黙って見ていることしかできなかった。
自分の体の心配よりも今は、太陽のことで頭がいっぱいだった。