「はぁ、なんとか間に合ったね」
「いや、本当に。今年で1番疲れたかもしれない」
「かもね。間違いなく半年で1番走ったのは確かだね」
意外と車内は混み合ってはいなかった。2人で空いている席に腰掛け、ぐったりと背もたれにもたれる。
車内の冷房が絶妙な温度に設定されているのか、居心地が良すぎてとろけてしまいそう。
ちなみに、この電車はトンネルの中しか走らないので、太陽の光を浴びることはないので安心。
それは事前に確認済み。もし、電車内で太陽の光を浴びてしまったら、チェックメイト間違いなしだから。
光を通さないことを太陽に告げると、彼も薬は今朝飲んできたようで大丈夫らしい。
でも、夏に彼と付き合い始めた頃よりは服用する薬の量が増えた気がするのは気のせいだろうか。
一見普通に見える私たちだが、こうしている間にも病は進行しているのだと思うと、不憫で仕方がない。
本当なら、電車の窓から見える移りゆく景色を堪能したいものだが、できないのがひどく虚しい。
数年前に電車で見たあの1秒間の、色々な景色をコマ送りにするような光景は今でも忘れない。
電車に乗っている時間さえも忘れさせてくれる、小刻みに揺られている時間が何よりも好きだった。
それが今では体験できないのは、心細い。でも、今はあの時にはいなかった大好きな彼が隣に座っている。
それだけでもう満足すぎるくらいだ。
「ねぇ太陽。私と出会ってくれてありがとうね」
「なんだよ。急に、照れくさいよ」
言葉通り照れたのかそっぽを向いてしまう彼。かわいいな。
彼の方へと自然な流れで、頭を預ける。彼の匂いがまた一段と強く私の鼻を掠めた。
太陽の穏やかな温かみのある匂い。
「そろそろ着くよ」
「え、もう着くの?意外と早かったね」
「40分近くは乗ってたけどね」
「そんなに時間経ってたのか。あっという間すぎた」
「だね。ずっと話してたからかもね」
電車に乗っている間、絶え間なく続いた私たちの会話。
映画の細部の描写の話やお昼ご飯の食レポをふざけてしてみたり、これから向かう場所の軽い詳細を話した、充実した時間だった。
「さぁ、着いたよ。降りるよ、太陽!」
「う、うん。待ってよ」
「遅いと置いていくからね!」
1年前の私には考えられないほど、今は人生が楽しくて仕方がない。
あんなに諦めていた人生もまだまだ捨てたもんじゃないな。
太陽がいれば、私はいくらでも強くなれる気がしたんだ。
まさに、『鬼に金棒』だ。
「希空に太陽だね!」
「はぁ?」
意味わからなそうに首を傾げる彼を置いて、私は足早に電車を降りた。
「いや、本当に。今年で1番疲れたかもしれない」
「かもね。間違いなく半年で1番走ったのは確かだね」
意外と車内は混み合ってはいなかった。2人で空いている席に腰掛け、ぐったりと背もたれにもたれる。
車内の冷房が絶妙な温度に設定されているのか、居心地が良すぎてとろけてしまいそう。
ちなみに、この電車はトンネルの中しか走らないので、太陽の光を浴びることはないので安心。
それは事前に確認済み。もし、電車内で太陽の光を浴びてしまったら、チェックメイト間違いなしだから。
光を通さないことを太陽に告げると、彼も薬は今朝飲んできたようで大丈夫らしい。
でも、夏に彼と付き合い始めた頃よりは服用する薬の量が増えた気がするのは気のせいだろうか。
一見普通に見える私たちだが、こうしている間にも病は進行しているのだと思うと、不憫で仕方がない。
本当なら、電車の窓から見える移りゆく景色を堪能したいものだが、できないのがひどく虚しい。
数年前に電車で見たあの1秒間の、色々な景色をコマ送りにするような光景は今でも忘れない。
電車に乗っている時間さえも忘れさせてくれる、小刻みに揺られている時間が何よりも好きだった。
それが今では体験できないのは、心細い。でも、今はあの時にはいなかった大好きな彼が隣に座っている。
それだけでもう満足すぎるくらいだ。
「ねぇ太陽。私と出会ってくれてありがとうね」
「なんだよ。急に、照れくさいよ」
言葉通り照れたのかそっぽを向いてしまう彼。かわいいな。
彼の方へと自然な流れで、頭を預ける。彼の匂いがまた一段と強く私の鼻を掠めた。
太陽の穏やかな温かみのある匂い。
「そろそろ着くよ」
「え、もう着くの?意外と早かったね」
「40分近くは乗ってたけどね」
「そんなに時間経ってたのか。あっという間すぎた」
「だね。ずっと話してたからかもね」
電車に乗っている間、絶え間なく続いた私たちの会話。
映画の細部の描写の話やお昼ご飯の食レポをふざけてしてみたり、これから向かう場所の軽い詳細を話した、充実した時間だった。
「さぁ、着いたよ。降りるよ、太陽!」
「う、うん。待ってよ」
「遅いと置いていくからね!」
1年前の私には考えられないほど、今は人生が楽しくて仕方がない。
あんなに諦めていた人生もまだまだ捨てたもんじゃないな。
太陽がいれば、私はいくらでも強くなれる気がしたんだ。
まさに、『鬼に金棒』だ。
「希空に太陽だね!」
「はぁ?」
意味わからなそうに首を傾げる彼を置いて、私は足早に電車を降りた。