土曜日の映画館は人混みで溢れていた。特に私たちと同年代の若者たちが大半を占めている。
もしかしたらと思い、映画館で上映中の作品を見ると、そこには若者たちが好みそうな恋愛映画が昨日から公開となっているではないか。
普段から恋愛映画を見るわけではないが、今テレビでも話題沸騰中の俳優陣が顔を並べている。
正直気になる。観てみたいが、隣にいる彼はどう思っているのだろう。
「あ、あのさ・・・」
「僕、この映画観たい」
「どれ?」
「これ!」
彼が指差していたのは、私が観たいと思った恋愛映画。ではなく、その隣にポスターが並んでいるアニメーション映画だった。
今まで見たこともないような興奮具合に、思わず笑みがこぼれてしまう。
大人っぽい普段の姿から一変して、今は無邪気な子供のように見える。
「これがいいの?」
「うん。ダメかな?」
「ううん。いいよ、なんでもよかったし」
恋愛映画を見たかったけれど、彼の笑顔にまで勝るものでは断じてない。
それに、あんなに冷静な太陽がこんなにはしゃぐ映画が、どんなものか興味も湧いてきた。
「これってどんな映画なの?」
「んーっとね。小さな雛鳥の映画なんだけど、生まれつきその子は他の兄弟とは違って出来損ないで、鳥なのに空を飛べないんだ。その雛鳥が数々の困難を乗り越えて、一人前の鳥になる話。簡潔に話すとね」
「随分、詳しいんだね」
「うん。前に予告で見た時から気になってたんだけど、まさか公開されているとは思わなくて」
なんだか似ている気がした。私たちの生い立ちと繋がっているような。
太陽は、この映画を通して何か伝えたいことがあるのかと、勝手にそんなことを思ってしまう。
ただ単純に見たかったからという可能性の方が大きいけれど。
20分後に映画が公開時間になるため、急いで券売機で席を決め、チケットを購入する。
お互いに映画を見る際の場所は同じだった。真ん中の1番後ろの席を2つ。
特にこだわりはないが、いつも映画を観る際は空いていれば、必ずこの席にしている。
彼も同じだったことが面白くて、つい時間がかかってしまい、後ろに並んでいたカップルに少し不快な顔をされてしまった。
まだ時間が少しだけある。その合間にお手洗いと食べ物を購入するために、若干混み合っている列に並ぶ。
「何買う?」
「そうだね、飲み物とポップコーンは必須だね」
「映画観た後、お昼食べるの忘れてないよね?」
「それとこれは別腹だよ」
「すごいな。僕には、無理そう」
「えー、男子高校生なのに食べないね」
「僕は、男子高校生の割には少食だからね。とりあえず、飲み物だけでいいかな」
「りょーかーい」
店員さんに2人分の飲み物と、キャラメルと塩のハーフ&ハーフで二分にされたポップコーンを注文する。
ちなみに、飲み物の中身は私がコーラで、太陽がジンジャエール。コーラよりもジンジャエールの方が好きらしい。
「こちら、コーラのMサイズとジンジャエールのMサイズ。それと、キャラメルと塩のハーフ&ハーフになります。ごゆっくりお楽しみください」
「ありがとうございます!」
映画館の食べ物類はなかなかの値段がするが、何も無しで私は映画を観ることはできないので、仕方がない。
『ただいまより・・・』
入場開始のアナウンスが館内に鳴り響く。どうやら、私たちが観る予定の映画の入場が開始されたらしい。
手の持っている荷物を整理しながら、入場口へと向かう。
入場口で立っているお姉さんの監督のもと、チケットをQRコードをリーダーへとかざす。
「入場者特典となります」
「あ、ありがとうございます」
手渡された入場者特典は、多分今から見るであろう映画の雛鳥が、メインにデカく印刷されているクリアファイルだった。
お姉さんから手渡され、2人揃って同じものを手にする。なんだか、お揃いみたいで嬉しいな。
徐々に光が薄れていく映画館の中へと、私たちの足は吸い込まれるように入っていく。
まるで、進むべき道がそこしかないかのように。
「この入場者特典のクリアファイルなんか見た目いまいちじゃない?」
「そうかな?私は嬉しいけど」
「じゃあ、僕のもあげるよ」
このクリアファイルを可愛いと思っているのは、私だけだったらしい。
どうやら今回は、意見が合わなかったみたいだ。
もしかしたらと思い、映画館で上映中の作品を見ると、そこには若者たちが好みそうな恋愛映画が昨日から公開となっているではないか。
普段から恋愛映画を見るわけではないが、今テレビでも話題沸騰中の俳優陣が顔を並べている。
正直気になる。観てみたいが、隣にいる彼はどう思っているのだろう。
「あ、あのさ・・・」
「僕、この映画観たい」
「どれ?」
「これ!」
彼が指差していたのは、私が観たいと思った恋愛映画。ではなく、その隣にポスターが並んでいるアニメーション映画だった。
今まで見たこともないような興奮具合に、思わず笑みがこぼれてしまう。
大人っぽい普段の姿から一変して、今は無邪気な子供のように見える。
「これがいいの?」
「うん。ダメかな?」
「ううん。いいよ、なんでもよかったし」
恋愛映画を見たかったけれど、彼の笑顔にまで勝るものでは断じてない。
それに、あんなに冷静な太陽がこんなにはしゃぐ映画が、どんなものか興味も湧いてきた。
「これってどんな映画なの?」
「んーっとね。小さな雛鳥の映画なんだけど、生まれつきその子は他の兄弟とは違って出来損ないで、鳥なのに空を飛べないんだ。その雛鳥が数々の困難を乗り越えて、一人前の鳥になる話。簡潔に話すとね」
「随分、詳しいんだね」
「うん。前に予告で見た時から気になってたんだけど、まさか公開されているとは思わなくて」
なんだか似ている気がした。私たちの生い立ちと繋がっているような。
太陽は、この映画を通して何か伝えたいことがあるのかと、勝手にそんなことを思ってしまう。
ただ単純に見たかったからという可能性の方が大きいけれど。
20分後に映画が公開時間になるため、急いで券売機で席を決め、チケットを購入する。
お互いに映画を見る際の場所は同じだった。真ん中の1番後ろの席を2つ。
特にこだわりはないが、いつも映画を観る際は空いていれば、必ずこの席にしている。
彼も同じだったことが面白くて、つい時間がかかってしまい、後ろに並んでいたカップルに少し不快な顔をされてしまった。
まだ時間が少しだけある。その合間にお手洗いと食べ物を購入するために、若干混み合っている列に並ぶ。
「何買う?」
「そうだね、飲み物とポップコーンは必須だね」
「映画観た後、お昼食べるの忘れてないよね?」
「それとこれは別腹だよ」
「すごいな。僕には、無理そう」
「えー、男子高校生なのに食べないね」
「僕は、男子高校生の割には少食だからね。とりあえず、飲み物だけでいいかな」
「りょーかーい」
店員さんに2人分の飲み物と、キャラメルと塩のハーフ&ハーフで二分にされたポップコーンを注文する。
ちなみに、飲み物の中身は私がコーラで、太陽がジンジャエール。コーラよりもジンジャエールの方が好きらしい。
「こちら、コーラのMサイズとジンジャエールのMサイズ。それと、キャラメルと塩のハーフ&ハーフになります。ごゆっくりお楽しみください」
「ありがとうございます!」
映画館の食べ物類はなかなかの値段がするが、何も無しで私は映画を観ることはできないので、仕方がない。
『ただいまより・・・』
入場開始のアナウンスが館内に鳴り響く。どうやら、私たちが観る予定の映画の入場が開始されたらしい。
手の持っている荷物を整理しながら、入場口へと向かう。
入場口で立っているお姉さんの監督のもと、チケットをQRコードをリーダーへとかざす。
「入場者特典となります」
「あ、ありがとうございます」
手渡された入場者特典は、多分今から見るであろう映画の雛鳥が、メインにデカく印刷されているクリアファイルだった。
お姉さんから手渡され、2人揃って同じものを手にする。なんだか、お揃いみたいで嬉しいな。
徐々に光が薄れていく映画館の中へと、私たちの足は吸い込まれるように入っていく。
まるで、進むべき道がそこしかないかのように。
「この入場者特典のクリアファイルなんか見た目いまいちじゃない?」
「そうかな?私は嬉しいけど」
「じゃあ、僕のもあげるよ」
このクリアファイルを可愛いと思っているのは、私だけだったらしい。
どうやら今回は、意見が合わなかったみたいだ。