緑が綺麗に咲き誇っていた木々たちもすっかりと、赤色や黄色の葉を身に纏い、今日も穏やかな風に揺られ私たちを上から眺めている。
時折、地面へとひらひらと舞い落ちてくる赤色の紅葉が、中学の時に家族と行った京都の昔ながらの街並みを思い出してしまう。
確か、家族と行ったのも秋頃だった気がする。
京都の街並みとまではいかないが、紅葉が歩道に散らばり、芸能人が歩くような自然のレッドカーペットが作り出される。
踏み締めて歩くのが、惜しいほど美しい。近くで見れば見るほど、一枚一枚の紅葉が連なるように組み合わさっている。
夏の花火大会以来、私たちは正式に付き合うことになった。出会ってまだそれほど時間は経ってはいないが、不思議と昔から知り合っていたかのような感覚。
付き合ったことを未來に話したところ、赤く目を腫らして泣きながら祝ってくれたことが、私の中では印象的。
ちなみに、今日は土曜日でこれから太陽と映画を見にいく予定。
太陽と付き合ってから、私の世界は1人で病気に悩んでいた頃よりも遥かに世界自体が色づいて見えるようになった。
今では、あの時自分がどんな世界を見ていたのかすら思い出すことができないほど、幸せで満ちている。
世界は私が思っていたよりも多くの色で作られ、そして忙しなく動き続けている。
私が止まっていた時間も世界は、休むことなく回り続けていたのだと思うと少しだけ感慨深い。
季節が夏から秋に変わってしまったにもかかわらず、私たちの体は特に異常は見当たらない。
日中外を歩く時は、必ず日除け対策をしている。常に長袖というのはなかなかきつかったが。
太陽も薬を飲み続けることで、病の進行を遅らせることはできているらしいが、正直その薬がいつまで効力を持ち続けることができるのかはわからないらしい。
ギリギリな毎日を過ごしている私たちだけれど、特に不満は存在しない。
それもこれも、太陽と出会うことができたから。
家を出て既に20分が経過していた。時刻は11時5分。太陽との待ち合わせは11時30分。
この調子なら、あと5分もしたら集合場所に着いてしまうだろう。少し待ってしまうことになるが、それでいいんだ。
デート前に心を落ち着かせるタイミングが欲しかったから。
集合場所の駅前の大きな木の下に到着する。多くの人が、その木の日陰で誰かを待っている。この木の下は、待ち合わせには最適な地元民ならではの場所。
「あっ・・・」
たった2ヶ月の間にこんがり日焼けしてしまった姿が目に映る。
木の下の日陰で待っているのではなく、満遍なく太陽の当たる位置で携帯をいじっている彼。
「お待たせ!ごめん待たせたよね」
「いや、僕も今きたところだから。じゃあ、行こっか」
嘘が下手だ。今きたばかりなんて真っ赤な嘘。彼の首筋から流れる汗を見れば、わかってしまう。
彼がもっと前からここでずっと待っていたことくらい。9月といえど、まだ夏の余韻を感じさせるこの頃。
日陰にでも入っていなければ、誰だって汗をかいてしまうだろう。
小さな優しさが、私の心を擽る。
「行こっか!」
あえて気が付かないふりをする。彼の優しさを台無しにしたくはないから。
自然と彼の方から繋がれる私たちの手。初めは手を繋ぐことも恥ずかしかったが、今ではもう慣れてしまった。
「そういえば、今日ってなんの映画を見るの?」
「えっ? 太陽が決めてたんじゃないの?」
「え、僕はてっきり希空が決めてると思ってた」
「えー!何も決めてないよ〜」
「ま、それもそれで楽しそうだからいっか。気になる映画を観ようよ」
「そうだね!」
2人の笑い声が、その場に溢れ出す。意外にも周囲の雑音が大きいせいか他の人には聞こえていない。
(やっぱり太陽と過ごす時間は楽しいな)
私たちの目と鼻の先では、現在建設中の大型商業施設の工事が行われている。来年の1月に完成予定らしい。
2人が来年まで生きられる保証はないが、もし生きていたら絶対に行きたいな。
今日も雲ひとつない青い空が2人。いや、ここにいる人たちの頭上に広がっていた。
時折、地面へとひらひらと舞い落ちてくる赤色の紅葉が、中学の時に家族と行った京都の昔ながらの街並みを思い出してしまう。
確か、家族と行ったのも秋頃だった気がする。
京都の街並みとまではいかないが、紅葉が歩道に散らばり、芸能人が歩くような自然のレッドカーペットが作り出される。
踏み締めて歩くのが、惜しいほど美しい。近くで見れば見るほど、一枚一枚の紅葉が連なるように組み合わさっている。
夏の花火大会以来、私たちは正式に付き合うことになった。出会ってまだそれほど時間は経ってはいないが、不思議と昔から知り合っていたかのような感覚。
付き合ったことを未來に話したところ、赤く目を腫らして泣きながら祝ってくれたことが、私の中では印象的。
ちなみに、今日は土曜日でこれから太陽と映画を見にいく予定。
太陽と付き合ってから、私の世界は1人で病気に悩んでいた頃よりも遥かに世界自体が色づいて見えるようになった。
今では、あの時自分がどんな世界を見ていたのかすら思い出すことができないほど、幸せで満ちている。
世界は私が思っていたよりも多くの色で作られ、そして忙しなく動き続けている。
私が止まっていた時間も世界は、休むことなく回り続けていたのだと思うと少しだけ感慨深い。
季節が夏から秋に変わってしまったにもかかわらず、私たちの体は特に異常は見当たらない。
日中外を歩く時は、必ず日除け対策をしている。常に長袖というのはなかなかきつかったが。
太陽も薬を飲み続けることで、病の進行を遅らせることはできているらしいが、正直その薬がいつまで効力を持ち続けることができるのかはわからないらしい。
ギリギリな毎日を過ごしている私たちだけれど、特に不満は存在しない。
それもこれも、太陽と出会うことができたから。
家を出て既に20分が経過していた。時刻は11時5分。太陽との待ち合わせは11時30分。
この調子なら、あと5分もしたら集合場所に着いてしまうだろう。少し待ってしまうことになるが、それでいいんだ。
デート前に心を落ち着かせるタイミングが欲しかったから。
集合場所の駅前の大きな木の下に到着する。多くの人が、その木の日陰で誰かを待っている。この木の下は、待ち合わせには最適な地元民ならではの場所。
「あっ・・・」
たった2ヶ月の間にこんがり日焼けしてしまった姿が目に映る。
木の下の日陰で待っているのではなく、満遍なく太陽の当たる位置で携帯をいじっている彼。
「お待たせ!ごめん待たせたよね」
「いや、僕も今きたところだから。じゃあ、行こっか」
嘘が下手だ。今きたばかりなんて真っ赤な嘘。彼の首筋から流れる汗を見れば、わかってしまう。
彼がもっと前からここでずっと待っていたことくらい。9月といえど、まだ夏の余韻を感じさせるこの頃。
日陰にでも入っていなければ、誰だって汗をかいてしまうだろう。
小さな優しさが、私の心を擽る。
「行こっか!」
あえて気が付かないふりをする。彼の優しさを台無しにしたくはないから。
自然と彼の方から繋がれる私たちの手。初めは手を繋ぐことも恥ずかしかったが、今ではもう慣れてしまった。
「そういえば、今日ってなんの映画を見るの?」
「えっ? 太陽が決めてたんじゃないの?」
「え、僕はてっきり希空が決めてると思ってた」
「えー!何も決めてないよ〜」
「ま、それもそれで楽しそうだからいっか。気になる映画を観ようよ」
「そうだね!」
2人の笑い声が、その場に溢れ出す。意外にも周囲の雑音が大きいせいか他の人には聞こえていない。
(やっぱり太陽と過ごす時間は楽しいな)
私たちの目と鼻の先では、現在建設中の大型商業施設の工事が行われている。来年の1月に完成予定らしい。
2人が来年まで生きられる保証はないが、もし生きていたら絶対に行きたいな。
今日も雲ひとつない青い空が2人。いや、ここにいる人たちの頭上に広がっていた。