花火大会の会場に訪れる人混みの流れに、逆らうように進むこと4分。
「人減ってきたね」
「そうだね。ここら辺なら、少し遠いけど花火はゆっくり見られると思う」
「ここにしよっか。ちょっと履き慣れない下駄のせいで、足疲れちゃった」
「わかった。お、ベンチも空いてるからそこに座ろうか」
3つ横に並んでいるベンチ。既に2つはカップルらしき浴衣を着た男女が座っている。
パッと見た感じ、片方は私たちと同じ高校生。もうひとつのペアは大学生かまだ社会人になりたてのカップルに違いない。
2人の手には、缶ビールと缶チューハイが握られている。
美味しそうに頬を赤らめながら女性が飲んでいる姿は、なんとも色っぽさを感じられる。
浴衣から覗かせるうなじが色っぽくて、同性の私ですら見惚れてしまいそう。
こうして見ると、やはり高校生と大学生では大きく違う気がする。
肩書きだけではなく、見た目や行動を取るにしてもあどけなさが隠しきてない。
そのあどけなさが、高校生にしかできない淡く初々しい青春模様を表現しているのだろう。
1番右の空いているベンチに2人で腰掛ける。
人が少ない割には、この場所なら花火も綺麗に見ることができそう。
もしかしたら、私たちは最高の穴場を見つけてしまったのかもしれない。
「太陽! あと2分で花火打ち上がるよ!」
「間に合って良かった。それにしてもここの眺め割と良くない?」
「それね!私もそう思ってた」
「あっちで人波に呑まれながら見るより、全然優雅でいいね」
「間違いないね。私たち運いいのかもね」
「そうかも」
『それでは、ただいまから花火を打ち上げます。ぜひ夏の思い出のひとつとして目に焼き付けてください』
会場に設置されたスピーカーからアナウンスが会場全体に響き渡る。
アナウンスをきっかけに会場の熱気がさらに高まり、所々から割れんばかりの歓声が湧き上がる。
歓声をかき消すかのように、ひとつの光が空へと飛んでゆく。
"パァァァン!"
盛大な音と共に、夜空に浮かぶ数秒で散りゆく花が色を持って咲き誇る。
今年の最初の花火は、会場にいる人たちの声を奪っていくほどの大きなオレンジの花火だった。
「うわ〜、綺麗・・・」
「夏だな・・・」
次から次へと星の輝きすら奪ってしまう花火が、闇を纏った夜空を照らすように何発も何発も打ち上がる。
きっと今頃、この会場にいる人々は皆、空に上がっている七色に光る花を見ているだろう。
様々な想いを心の内に秘めながら、同じ花火を見ているんだ。
一緒に来ている異性に告白しようと思っている人、長年寄り添ってきたパートナーに最後の思い出として別れを切り出す者、ただただ純粋に花火大会を楽しみにきた者。
数えきれないほどの想いが、今この会場には溢れかえっている。
私の隣に座っている彼は、今何を想い花火を眺めているのだろうか。
ふと、気になり目線を花火から彼へと移す。
真っ直ぐな綺麗な瞳で花火を眺めている彼の横顔。
花火が上がるたびに赤・黄色・緑・青といった色に彩られる彼の顔が私の視界を埋め尽くす。
「綺麗・・・」
無意識に言葉を発してしまった。それも、花火に対してではなく、彼の横顔を見て...
「そうだね・・・って花火見てないじゃん」
「あ・・・あ、ごめん」
「僕のことを言ったの?」
「う、うん」
図星すぎて言葉に詰まってしまう。
「嬉しいけど、希空の綺麗さには勝てないよ」
柔らかく微笑む太陽。花火の光がちょうどよく顔に当たっているため、さらにその顔が朗らかに見えてしまう。
「あ、ありがと」
「さ、花火を見ようよ」
相槌を打つ私を見て、彼は花火へと視線を戻してしまった。
ずっと離されることなく繋がれた私たちの手の奥で、花火が人々の歓声を浴びながらも夜空を彩り続けていた。
「人減ってきたね」
「そうだね。ここら辺なら、少し遠いけど花火はゆっくり見られると思う」
「ここにしよっか。ちょっと履き慣れない下駄のせいで、足疲れちゃった」
「わかった。お、ベンチも空いてるからそこに座ろうか」
3つ横に並んでいるベンチ。既に2つはカップルらしき浴衣を着た男女が座っている。
パッと見た感じ、片方は私たちと同じ高校生。もうひとつのペアは大学生かまだ社会人になりたてのカップルに違いない。
2人の手には、缶ビールと缶チューハイが握られている。
美味しそうに頬を赤らめながら女性が飲んでいる姿は、なんとも色っぽさを感じられる。
浴衣から覗かせるうなじが色っぽくて、同性の私ですら見惚れてしまいそう。
こうして見ると、やはり高校生と大学生では大きく違う気がする。
肩書きだけではなく、見た目や行動を取るにしてもあどけなさが隠しきてない。
そのあどけなさが、高校生にしかできない淡く初々しい青春模様を表現しているのだろう。
1番右の空いているベンチに2人で腰掛ける。
人が少ない割には、この場所なら花火も綺麗に見ることができそう。
もしかしたら、私たちは最高の穴場を見つけてしまったのかもしれない。
「太陽! あと2分で花火打ち上がるよ!」
「間に合って良かった。それにしてもここの眺め割と良くない?」
「それね!私もそう思ってた」
「あっちで人波に呑まれながら見るより、全然優雅でいいね」
「間違いないね。私たち運いいのかもね」
「そうかも」
『それでは、ただいまから花火を打ち上げます。ぜひ夏の思い出のひとつとして目に焼き付けてください』
会場に設置されたスピーカーからアナウンスが会場全体に響き渡る。
アナウンスをきっかけに会場の熱気がさらに高まり、所々から割れんばかりの歓声が湧き上がる。
歓声をかき消すかのように、ひとつの光が空へと飛んでゆく。
"パァァァン!"
盛大な音と共に、夜空に浮かぶ数秒で散りゆく花が色を持って咲き誇る。
今年の最初の花火は、会場にいる人たちの声を奪っていくほどの大きなオレンジの花火だった。
「うわ〜、綺麗・・・」
「夏だな・・・」
次から次へと星の輝きすら奪ってしまう花火が、闇を纏った夜空を照らすように何発も何発も打ち上がる。
きっと今頃、この会場にいる人々は皆、空に上がっている七色に光る花を見ているだろう。
様々な想いを心の内に秘めながら、同じ花火を見ているんだ。
一緒に来ている異性に告白しようと思っている人、長年寄り添ってきたパートナーに最後の思い出として別れを切り出す者、ただただ純粋に花火大会を楽しみにきた者。
数えきれないほどの想いが、今この会場には溢れかえっている。
私の隣に座っている彼は、今何を想い花火を眺めているのだろうか。
ふと、気になり目線を花火から彼へと移す。
真っ直ぐな綺麗な瞳で花火を眺めている彼の横顔。
花火が上がるたびに赤・黄色・緑・青といった色に彩られる彼の顔が私の視界を埋め尽くす。
「綺麗・・・」
無意識に言葉を発してしまった。それも、花火に対してではなく、彼の横顔を見て...
「そうだね・・・って花火見てないじゃん」
「あ・・・あ、ごめん」
「僕のことを言ったの?」
「う、うん」
図星すぎて言葉に詰まってしまう。
「嬉しいけど、希空の綺麗さには勝てないよ」
柔らかく微笑む太陽。花火の光がちょうどよく顔に当たっているため、さらにその顔が朗らかに見えてしまう。
「あ、ありがと」
「さ、花火を見ようよ」
相槌を打つ私を見て、彼は花火へと視線を戻してしまった。
ずっと離されることなく繋がれた私たちの手の奥で、花火が人々の歓声を浴びながらも夜空を彩り続けていた。