花火大会の会場が近づくにつれ、人々の歓声や人数も明らかに大きく増えてきた。
普段は滅多に見ることがない浴衣。それが、今日はどこを見渡しても浴衣で埋め尽くされる光景が広がっている。
男女のカップルで浴衣の人、4人組の男女、女子だけ、男子だけ。様々な関係性の人が花火を見るためだけにここに集まってきている。
普段よりも可愛く彩られた女の子たち。姿格好を見るだけで、いつもより気合を入れているのがわかる。同性だから、顔や服装よりも手や足といった細かいところに目がいってしまう。
綺麗に手入れされた素足から見える、ひとつひとつ綺麗に彩られた爪。花火に負けて劣らず、こちらも芸術的なものばかり。
今日のために彼女たちはネイルも頑張ったのだろう。隣にいる男性に気づかれなくとも、そういった努力を怠らないのはすばらしいこと。
どうか、世の男性諸君。彼女らの頑張りに気がついてほしいと願わずにはいられない。
気付くことができたら、間違いなく彼女は惚れ直しますよ。
口には出さず、助言をしてあげる。口に出して、気付かれても嬉しくはないからね。
「すごいね。希空もだけど、手足の爪までしっかり綺麗に彩られてる」
ほら、こんなところに気付く人がいた。この天然タラシめ。
「よく気づいたね」
「普通気づくよ。いつもと違うから、じっくり見ちゃうし」
「何それ、なんかいやらし〜」
「そうなの?ありがとう」
「え、あ、うん?」
やっぱり彼は普通の人たちとはどこかが違っているらしい。でも、それが彼のいいところであり、私が気を許せるところでもある。
彼ならきっと私の夢を叶えてくれそうな気がするから。
無事に会場には着いたもののあまりの人の多さに、身動きを取ることが難しい。
太陽は沈んだので、日傘はしまうことができたが、人の数が多すぎて歩くことさえ困難。
普段履き慣れない下駄を履いていることもあり、ゆっくり人に流されるように歩くのがやっと。
それは隣にいる彼も同じようで、普段履き慣れない下駄に紺色の甚平を着ているが、居心地の悪そうな表情を先ほどから貼り付けている。
「どうする?ここからじゃ、あまり花火見えないよ」
「そうだね。んー、お!あっちの方人少なそうだ」
「本当だ。あっち行く?」
「うん。そうしようか。それと離れたら困るから手を繋いでもいい?」
「いいよ」
できることなら聞かずにさらっとスマートに手を繋いで欲しかった。ま、これはこれで可愛いのでよしとするが。
彼の手は温かく大きかった。私の手を優しく包み込んでくれる彼の手。
私の手とは作りが違うらしく、骨がゴツゴツしていて安心感がある。
彼は私の手をどう思っているのだろうか。手汗でベタベタするとか思われていたら嫌だな。
手汗をかいていたとしても、この人混みの熱気で気付かれることはないかもしれないけれど。
「希空の手・・・」
ドキッとしてしまう。もしかして、本当に手汗を...
「柔らかい。僕の手とは全く違うや。守りたくなる手をしてる・・・」
良かった。安心したことで、肩の力がスーッと抜けていく。
「じゃあ、ちゃんと守ってよね。今日はずっとよろしくね」
「わ、わかった」
彼の横顔はいつも通りの冷静な表情のまま。でも、私は見逃さなかった。彼の耳が赤色に染まりきっていることを。
普段は滅多に見ることがない浴衣。それが、今日はどこを見渡しても浴衣で埋め尽くされる光景が広がっている。
男女のカップルで浴衣の人、4人組の男女、女子だけ、男子だけ。様々な関係性の人が花火を見るためだけにここに集まってきている。
普段よりも可愛く彩られた女の子たち。姿格好を見るだけで、いつもより気合を入れているのがわかる。同性だから、顔や服装よりも手や足といった細かいところに目がいってしまう。
綺麗に手入れされた素足から見える、ひとつひとつ綺麗に彩られた爪。花火に負けて劣らず、こちらも芸術的なものばかり。
今日のために彼女たちはネイルも頑張ったのだろう。隣にいる男性に気づかれなくとも、そういった努力を怠らないのはすばらしいこと。
どうか、世の男性諸君。彼女らの頑張りに気がついてほしいと願わずにはいられない。
気付くことができたら、間違いなく彼女は惚れ直しますよ。
口には出さず、助言をしてあげる。口に出して、気付かれても嬉しくはないからね。
「すごいね。希空もだけど、手足の爪までしっかり綺麗に彩られてる」
ほら、こんなところに気付く人がいた。この天然タラシめ。
「よく気づいたね」
「普通気づくよ。いつもと違うから、じっくり見ちゃうし」
「何それ、なんかいやらし〜」
「そうなの?ありがとう」
「え、あ、うん?」
やっぱり彼は普通の人たちとはどこかが違っているらしい。でも、それが彼のいいところであり、私が気を許せるところでもある。
彼ならきっと私の夢を叶えてくれそうな気がするから。
無事に会場には着いたもののあまりの人の多さに、身動きを取ることが難しい。
太陽は沈んだので、日傘はしまうことができたが、人の数が多すぎて歩くことさえ困難。
普段履き慣れない下駄を履いていることもあり、ゆっくり人に流されるように歩くのがやっと。
それは隣にいる彼も同じようで、普段履き慣れない下駄に紺色の甚平を着ているが、居心地の悪そうな表情を先ほどから貼り付けている。
「どうする?ここからじゃ、あまり花火見えないよ」
「そうだね。んー、お!あっちの方人少なそうだ」
「本当だ。あっち行く?」
「うん。そうしようか。それと離れたら困るから手を繋いでもいい?」
「いいよ」
できることなら聞かずにさらっとスマートに手を繋いで欲しかった。ま、これはこれで可愛いのでよしとするが。
彼の手は温かく大きかった。私の手を優しく包み込んでくれる彼の手。
私の手とは作りが違うらしく、骨がゴツゴツしていて安心感がある。
彼は私の手をどう思っているのだろうか。手汗でベタベタするとか思われていたら嫌だな。
手汗をかいていたとしても、この人混みの熱気で気付かれることはないかもしれないけれど。
「希空の手・・・」
ドキッとしてしまう。もしかして、本当に手汗を...
「柔らかい。僕の手とは全く違うや。守りたくなる手をしてる・・・」
良かった。安心したことで、肩の力がスーッと抜けていく。
「じゃあ、ちゃんと守ってよね。今日はずっとよろしくね」
「わ、わかった」
彼の横顔はいつも通りの冷静な表情のまま。でも、私は見逃さなかった。彼の耳が赤色に染まりきっていることを。