昇降口で靴を履き替え、日差しが燦々と照らす外の世界へと足を踏み出す。
日差しは日傘でカットされているが、夏の暑さだけは遮ることができない。
歩いているだけでも、体から汗が出てきてしまいそう。朝綺麗に整えたはずの前髪は、もうおでこに張り付いてしまっている。
「あれって、転校生じゃん」
未來の目線の先にいたのは、空を眺めている太陽の姿。黒々とした熱せられたアスファルトの上で、呆然と立ち尽くしている姿は異様とまで言える。
一体、彼には何が見えているのだろうか。
「あ」
私たちの存在に気がついたらしいが、依然として彼は空に視線を戻してしまう。
私も空を眺めたい。あの澄み渡った澱みのない自由な大空を。
しかし、それはとうの昔にできなくなってしまった。
「希空、いこっか」
「うん」
彼の横を通り抜けていく。通り過ぎる瞬間さえ、私は彼から目を離すことができなかった。
彼は何を思って空を眺めているのか。君は今何を考えているの。
後ろを振り返り、佇んでいる彼を見つめる。
「ねぇ、太陽」
「ん?」
「何してるの?」
「空を眺めてる」
「それは見たら、わかるよ」
「あぁ、そうだね。空ってさ、広いね。大きいね。そして、自由だ」
何を言っているのか理解できなかった。でも、なぜだか彼が言いたいことはうっすらとわかる気がした。
「うん」
隣にいる未來は、私たちの様子を見守っている。後で色々聞かれるだろうが、それは仕方ないだろう。今日の夜は長いので、その時話すとしよう。
「空を自由に飛べたら、最高だろうな〜。いつか、あの大空を自由に飛んでみたい」
信じられない。私と同じことを考えている仲間がこんなに近くにもいたなんて。
「どうして、飛びたいの?」
聞かずにはいられなかった。なぜ、彼が空を飛んでみたいのか。
私にも明確な理由があるわけではない。彼に答えを求める意味合いも込めて尋ねてみたかった。
「僕は・・・自由じゃないから」
「自由じゃない?それって・・・」
「おーい、希空。帰るわよ」
校門の前に車を止め、私たちを呼んでいるママ。もう私も高校生で、恥ずかしさもあるので呼ぶのはやめてほしい。
「うん。今行くよ」
「それじゃあ、また月曜日。希空はいつも保健室にいるの?」
悲しげな瞳を揺らす彼。何に彼は悲しんでいるのか。彼は何に囚われて生きているのだろう。
力になれるならなりたいが、私たちの関係はそこまで深くはない。まだ今日出会ったばかりの仲。
「そうだよ。ちょっと体が弱くてね」
「そうか。案外僕たちは、似たもの同士なのかもね。また月曜」
影が一切ない日の当たる道へと歩いていく彼。なぜか、輝いているはずの彼の後ろ姿は寂しそうだった。
「似たもの同士・・・」
その言葉だけが私の中に虚しく残り続けた。カラスが1羽、2羽と電線から大空へと飛び立っていく。
その度に私は彼との会話を思い出しながら、車へと向かった。
日差しは日傘でカットされているが、夏の暑さだけは遮ることができない。
歩いているだけでも、体から汗が出てきてしまいそう。朝綺麗に整えたはずの前髪は、もうおでこに張り付いてしまっている。
「あれって、転校生じゃん」
未來の目線の先にいたのは、空を眺めている太陽の姿。黒々とした熱せられたアスファルトの上で、呆然と立ち尽くしている姿は異様とまで言える。
一体、彼には何が見えているのだろうか。
「あ」
私たちの存在に気がついたらしいが、依然として彼は空に視線を戻してしまう。
私も空を眺めたい。あの澄み渡った澱みのない自由な大空を。
しかし、それはとうの昔にできなくなってしまった。
「希空、いこっか」
「うん」
彼の横を通り抜けていく。通り過ぎる瞬間さえ、私は彼から目を離すことができなかった。
彼は何を思って空を眺めているのか。君は今何を考えているの。
後ろを振り返り、佇んでいる彼を見つめる。
「ねぇ、太陽」
「ん?」
「何してるの?」
「空を眺めてる」
「それは見たら、わかるよ」
「あぁ、そうだね。空ってさ、広いね。大きいね。そして、自由だ」
何を言っているのか理解できなかった。でも、なぜだか彼が言いたいことはうっすらとわかる気がした。
「うん」
隣にいる未來は、私たちの様子を見守っている。後で色々聞かれるだろうが、それは仕方ないだろう。今日の夜は長いので、その時話すとしよう。
「空を自由に飛べたら、最高だろうな〜。いつか、あの大空を自由に飛んでみたい」
信じられない。私と同じことを考えている仲間がこんなに近くにもいたなんて。
「どうして、飛びたいの?」
聞かずにはいられなかった。なぜ、彼が空を飛んでみたいのか。
私にも明確な理由があるわけではない。彼に答えを求める意味合いも込めて尋ねてみたかった。
「僕は・・・自由じゃないから」
「自由じゃない?それって・・・」
「おーい、希空。帰るわよ」
校門の前に車を止め、私たちを呼んでいるママ。もう私も高校生で、恥ずかしさもあるので呼ぶのはやめてほしい。
「うん。今行くよ」
「それじゃあ、また月曜日。希空はいつも保健室にいるの?」
悲しげな瞳を揺らす彼。何に彼は悲しんでいるのか。彼は何に囚われて生きているのだろう。
力になれるならなりたいが、私たちの関係はそこまで深くはない。まだ今日出会ったばかりの仲。
「そうだよ。ちょっと体が弱くてね」
「そうか。案外僕たちは、似たもの同士なのかもね。また月曜」
影が一切ない日の当たる道へと歩いていく彼。なぜか、輝いているはずの彼の後ろ姿は寂しそうだった。
「似たもの同士・・・」
その言葉だけが私の中に虚しく残り続けた。カラスが1羽、2羽と電線から大空へと飛び立っていく。
その度に私は彼との会話を思い出しながら、車へと向かった。