放課後、帰り支度をしている恵那の元に他のクラスの男子生徒たちが数人やって来る。


「ねぇ恵那ちゃん、これから遊びに行こうよ」
「カラオケとかどお? 生歌披露して欲しいなぁ」
「良いでしょ? 奢るしさぁ」


 クラスメイトの女子たちはそんなやり取りを気にする事も無く、さっさと教室を出て行ってしまう。

 残ったのは男子生徒で、他のクラスの男子生徒たちに加わる形で恵那を遊びに誘おうとする。


「俺らも行きたいな」
「せっかくだし、みんなで行こうぜ。な、恵那ちゃん」


 当の本人はというと、


「……私、行くつもり無いから。そこ、退いてくれる?」


 特に気にする様子も無く帰り支度を終えると、男子生徒たちに「行く気は無い」とハッキリ告げた。

 けれど、男子生徒たちはそれに応じる事は無く、


「え~? つれないなぁ、あ、もしかして恵那ちゃん、緊張してる? それとも、警戒してる? 大丈夫、本当にカラオケ行くだけだからさぁ」
「そうそう、だから行こうよ」


 恵那がウンザリする程しつこく誘っていく。


「いい加減に――」


 流石に苛立った恵那が声を上げようとすると、


「お前ら何やってんだ? いくらアイドルだからって、海老原にちょっかい出してんじゃねぇぞ?」


 偶然通りがかった担任が様子を見兼ねて声を掛けたその隙に、


「さようならっ」


 恵那は逃げるように教室を出て行った。