授業開始の少し前、ガラッと教室後ろのドアが勢い良く開かれる。

 現れたのは流行りのマッシュスタイルに緩いカールを全体に入れてワックスで仕上げられたシャープマッシュと呼ばれる髪型で、一際人目の引く金色の髪をしていて、服装も上が白いパーカーに制服のズボンをダボッとさせて穿いている、見るからに柄が悪そうなその出で立ちの男子生徒だった。

 クラスメイトたちは一瞬話を止めてそちらへ視線を向けるも、男子生徒に睨まれた事ですぐに逸らして話を再開させる。

 そんな様子を鬱陶しそうに見つめつつ、金髪の彼は自分の席でもある恵那の隣までやって来ると、窓の外を眺めたままの見た事の無い彼女の存在が気になったのか、


「…………」


 声は掛けないものの、何度かチラチラと彼女の方へ視線を向けていた。


 授業開始のチャイムが鳴り響き、周りの声を遮断していた恵那がふと隣に視線を向けると、


「あ……」
「…………」


 ちょうど恵那に視線の方へ視線を向けた金髪の彼と目が合い、若干気まずい空気が流れていた。