「それじゃあ斗和さん、恵那さん、俺はここで」
「ああ、気を付けて帰れよ」
「忍くん、本当にありがとう!」
「お二人も気を付けて。それじゃあ、また明日」


 斗和と恵那の言葉に笑顔で答えた忍は、二人の自宅へと続く高架下を過ぎた辺りで来た道を引き返していく。

 忍と別れた斗和は再びバイクを走らせて恵那の住む祖父母宅の前でバイクを停めた。


「どうだ? 初めてバイクの後ろに乗った感想は」
「初めは怖かったけど、慣れて来たら快適だったかも」
「なら良かった。つーか、今日は本当、悪かったな」
「ううん。大丈夫」
「……こういう事があるから、俺は言ったんだ。一緒に居ねぇ方が良いって」
「……斗和」


 バイクから降りてヘルメットを取った恵那が大丈夫と口にしても、やはり今日の出来事は斗和の中でだいぶ堪えたらしい。

 自分のせいで仲間や恵那が危険に晒される事を避けたい斗和は、


「――恵那、やっぱりお前は、俺と居ない方が良いと思う。一人にする訳じゃねぇけど、行動を共にするならせめて忍の方が良いと思う」


 自分とは距離を置くべきだと、恵那にキッパリ言う。

 けれど恵那は、


「斗和……私ね、この町に来て、斗和と一緒に居るようになって、毎日本当に楽しいの。凄く、充実してるの。確かに、今日みたいに危険な目に遭うのは、怖いよ? でもね、私、それでも……斗和と一緒に居たい。斗和や忍くんや、プリュ・フォールのみんなには迷惑かけちゃうかもしれないけど、今まで通り、一緒に居たいの……駄目、かな?」


 素直な気持ちを口にする。

 そんな恵那の言葉を聞いた斗和は、


「――別に、駄目じゃねぇよ。お前がそうしたいってなら、いいけど……。それなら、危険な目に遭っても、文句言うなよな」


 一瞬呆気に取られはしたものの『一緒に居たい』という恵那の言葉が嬉しくて、その嬉しさを表情に出すのが恥ずかしかった斗和は視線を少しだけ外しながらぶっきらぼうな物言いをした。


「言わないよ、文句なんて。ありがとう、斗和。それじゃあ、また明日ね」
「ああ」


 斗和の返答に笑顔で返した恵那は『また明日』と言って家の中へ入って行った。


「……本当、変わったヤツ」


 自分と一緒に居たいだなんて、心底変わった人だと思いながらも嬉しさを隠しきれなくなった斗和の表情は緩んでいた。


 そして、家に入った恵那もまた、


「……良かった、これからも、傍に居られるんだ」


 明日からもまた変わらず斗和の傍に居られる事が嬉しくて、笑みが溢れていた。