家出をしたとか、そういう訳では無い。

 夜には家に帰っているし、朝は早くに出掛けていると斗和の祖父から聞いていた恵那。

 学校をサボる事は恵那が来る前から日常的だった事もあって祖父は勿論、忍もさほど気にしてはいなかった。


 斗和が学校に来なくなって二週間が過ぎた頃、恵那はふと、どこからか視線を感じるようになっていた。


「恵那さん、どうかしましたか?」


 何だか常に監視されているような、どこか落ち着かない感覚を感じるようになってから数日が経った放課後、恵那の様子が少しおかしいと気付いた忍が声を掛ける。


「……その、気のせいかもしれないけど、実は最近、誰かに見られてるような気がするの……」
「見られてる? それは、学校でですか?」
「学校もそうだけど、登下校とか、家の窓から外を覗いた時とか、とにかく、あらゆるところで……」


 そんな恵那の言葉を聞いた忍はふと足を止め、辺りをぐるりと見回し、


「……斗和さんにその事を伝えた方がいいですね。とりあえず急いで帰りましょう」


 今のところ危険は無さそうだと確認するも、早めに斗和に伝えるべきと判断した忍は恵那の手を取ってやや足早に歩き出した。

 そして、恵那の家から少しだけ離れた高架下に差し掛かった、その時、


「なぁ、お前はプリュ・フォールの一人で、その横に居るのがアイドルの恵那ちゃん……だよな?」


 柄の悪そうな男数人が二人の行く手を阻むように現れた。