それから暫く、噂は思わぬ形に変わっていく。


「なぁ、えなりんって今度は針ヶ谷と、付き合ってんだろ?」
「マジかよ? 針ヶ谷って江橋が一番可愛がってる後輩だろ?」
「まあでも、江橋よりはマシかもなぁ」
「だな、ぶっちゃけ針ヶ谷(アイツ)って不良っぽくねぇし、どうしてプリュ・フォールのメンバーなのか分からねぇもんな」
「確かに、言えてる」


 なんて噂が恵那たち三年生の間で持ち切りになり、そこから二年、一年生へと広まり、気付けば噂は更に変化を遂げ、忍が斗和から恵那を横取りしたという話になっていた。

 勿論、それは根も葉もない噂だし、当の本人たちは全く気にしてはいなかったのだが、斗和相手だと怖くて何も出来なかった隠れ恵那ファンから忍が嫌がらせをされるようになっていたのだけど、忍はそれを斗和や恵那には隠していた。


「何か、ごめんね、最近また変な噂が広まってて……」
「いや、全然! まあデマだけど、それでも恵那さんと付き合ってるなんて噂、寧ろ凄く光栄ですよ!」
「もう、忍くんってば……」


 昼休み、いつもの様に屋上でお昼ご飯を食べていた恵那たち。

 斗和はというと、担任から呼び出されて渋々ながら職員室へ行っていた。