「えっと……そう、です……」
「マジっすか!? え? ってか何でえなりんが斗和さんと!?」


 彼のような反応には慣れている恵那だけど、あまりの気迫に押され気味で戸惑っていると、


「おい(しのぶ)、何なんだよ、その『えなりん』ってのは」


 茶髪の少年――針ヶ谷(はりがや) 忍に向かって一体何事かと問い掛ける斗和。


「え? 斗和さんもしかして、えなりん知らないんですか!?」
「え!?」


 そんな斗和に忍は勿論、恵那も驚き二人揃って斗和を見た。


「な、何なんだよ?」
「えなりんは【CANDY POP】の人気ナンバー1で常にセンターポジションの超人気アイドルですよ!?」
「アイドル!? 海老原、お前、アイドルなのかよ?」
「……うん、一応……」
「どうりでお前をどこかで見たと思ったわ」


 忍と恵那の言葉で、初対面を果たした時に感じた既視感の正体が分かった斗和は一人納得していた。


「うわー、嬉しいなぁ、まさかこんな所でえなりんに会えるなんて!」
「…………」


 喜ぶ忍をよそに、若干引き攣った表情を浮かべる恵那を前にした斗和は、


「おい忍、テメェはそういうキャラじゃねぇだろうが。つーか、コイツは今日俺のクラスに転校して来た海老原 恵那だ。その、えなりん? とかいうのはあくまでもアイドル活動してる時の呼ばれ方だろ? そいつもその呼び方は気に入って無さそうだし、止めてやれよ」


 半ば呆れ顔で浮かれている忍を一喝した。