「好きです」

人生の分岐点。のちに、私は彼と婚約する。
けれど、私を助けて彼は命を喪う。
この時、私が断っていれば。

「今度は絶対――」

――彼が何かを言いかけた途中で目が覚めた。
机に突っ伏して寝ていたらしい。
足元で心配そうに見上げる飼い犬を優しく撫でる。

今日は彼の三回忌だった。

#140字小説
『三回忌』