陸上にすべてを捧げた高校三年間。
たったの0.1秒を縮めることができなかった。

「辞めるか、陸上」
「辞めないでください!」

顔を上げる。マネージャーが立っていた。

「なんで泣いてんだ」
「だって」

好きなんです先輩の走りが、と彼女が呟く。


もう少しだけ続けてみようかと思った。

#140字小説
『時間と距離』