第一幕
眠い。今は五時間目。昼食を食べた直後だ。食後はどうしても眠くなってしまう。
五時間目は科学の授業であり、付近の席の人と昨年の範囲の復習プリントを協力しながら解いていくという内容だ。
僕は早々に終わらせたので寝ても構わないのだがどうやら勉強が苦手らしい花咲さんが手伝いを強請ってきた為起きている。
「ねぇ、これって何ページまでやらなきゃいけないの?」
「そのページ含めないで三ページだよ」
「三!? あと二十分で? 無理無理!」
「つべこべ言ってる時間が勿体ないよ。ほら、手が止まってる」
「ねぇ、一つ賭けをしない?」
僕の言葉を遮って
動かしていた手を止めてそう投げかけてくる。何か良からぬことを考えていることが顔から滲み出ている。だけど駆けの内容に少しばかり興味がある。
「返事をする前に内容を聞いても良い?」
「じゃあ買い物に付き合ってくれるって約束してくれるなら解いてあげる。さっき話した服を買いに行きたいの!」
与えられた問題を解くという当たり前のことするのに約束を交わされることに多少の不満はあるものの、それで話が収束するなら構わない。
「分かった。じゃあ一先ずプリントを終わらせよう。手伝うからさ」
約束を交わした花咲さんは苦戦こそしながらもなんとか授業内にプリントを終わらせれた。最初からそのやる気を引き出してくれた苦労しないのにな。と少しながら思ったが提出することが出来たことを喜んでいる花咲さんの無垢な笑顔を見るとそんな卑屈な考えは何処かに消え去った。
「見て!この服可愛くない!?」
「そうだね。せっかくだし試着してみたら?」
僕の発言を耳に入れ、ニットカーディガンを片手にそさくさと試着室へと入って行った。
「どう? 似合ってる?」
「うん。似合ってるよ。その感じだとこのパンツが合いそうだね」
「パンツ!?」
「ズボンのこと」
「びっくりしたー。何言い出すかと思ったら」
「僕がそんなこと言うような変態に見える?」
「見えなくもないかな」
「……」
「ごめんごめん! ノリツッコミだから!」
「流石の僕でも分かってるよ。取り敢えず着てみたら?」
「うん! 着てみる!」
「どうしよっか。日が落ちるまでまだ時間あるし何処か寄って行く?」
「じゃあ彼処のカフェに行きたい!」
カフェに向かっている最中、花咲さんが呑気にスキップをしていて明らかに気分が高揚していることが伺えた。
カフェはどうしても意識が高い人が通うイメージがあるので少し怖い。外装から既に僕のような人は入店してはいけない店だと瞬時に悟った。
入店を躊躇していたが花咲さんに手を引かれ、未だに心の準備すらしていない僕を半ば強引に入店させた。
店員が人数の確認を取ってテラス席へと案内してくれた。テーブルの中心には穴が空いており、そこに刺さっているヒノキの棒で支えられている白色のパラソルがテーブルに日陰を作っている。
テーブルに置かれていたメニューを閲覧し、最初に浮かんできた言葉は“高い”だ。殆どのメニューが軽く二千円を超えている。特に特性大盛りスイーツの盛り合わせパフェなんて三千円もする。なのでこれだけは選んで欲しく無い。
そんなことを考えている内に全員が注文する料理を確定させたので定員を呼ぶ。
「ご注文はどうなさいますか?」
「僕はケーキセットでお願いします」
「私は特性大盛りスイーツの盛り合わせでお願いします!」
「かしこまりました。少々お待ち下さい」
定員の視界から僕が外れたと同時に脱力していまい、浅く座っていたが無意識に深々と腰がける。
脳内で計算をする。合計で5千八百円。払えない訳では無いが有り金の大半を持って行かれることとなる。
だがそんな考えは定員によって運ばれて来た料理によってどうでも良くなった。
花咲さんがスマートフォンを取り出して写真を撮り出す。
釣られて僕までスマートフォンを取り出して撮影を試みたがシャッターボタンの左下側にある縮小された最後に撮った写真が気になったので閲覧する。
最後にカメラ機能を使った時期さえ覚えていないため当然内容なんて覚えている筈が無い。だが写真の内容を一見しただなのに把握出来てしまった。
それは2年前の秋に撮ったサッカーの強化合宿での集合写真だ。
写真を見た途端に襲ってきた悪寒と嫌悪感に耐えきれず、即座に削除する。
忘れたい。
どうにかして記憶のフィルムから切り捨てたい僕の黄金期であり暗黒期の頃の写真だ。
「食べないの?すっごい美味しいよ!」
花咲さんの言葉によって僕の思考は強制的に遮断されて我に返る。
気を正して注文したケーキを口に運ぶ。
甘過ぎ無いケーキがコーヒと良く合う。
花咲さんは満足気にしている。その満面の笑みが見れたので同行した価値はあったなと思う。
「涼介くんのコーヒー一口頂戴!」
「良いけどコーヒー飲めるの?」
「子供扱いしなくても大丈夫です!」
そう胸を張りながら豪語し、花咲さんがコーヒーを口にする。途端、先程までの余裕そうな表情は消え去り虫を噛んだかの如く顔を歪めた。
「苦い……角砂糖入ってると思ってた」
「事前に聞いてくれたら良かったのに」
「角砂糖無しで飲めるの凄いね」
「最初は然程美味しく感じれなかったけど長い間飲んでたらこの苦みが物欲しくなるんだよ」
「そうなんだ……ってあれ? ねぇ涼介くん」
「ん? どうしたの?」
「実テって何時だっけ?」
「確か、三日後かな。それがどうしたの?」
「え、嘘……やばいやばいやばいやばい」
「ど、どうしたの?」
花咲さんにはとても似つかわない程に小さな声でボソボソとそう呟いている。
「英語がやばいの。私、自分で言うのも何だけどあまり頭が良くなくて。特に英語なんて毎回赤点ギリギリで……えっと、その……」
余程焦っているのか語彙力が少しばかり低下している。これだと事態に収集が着かない為一先ず落ち着かせなくては。
「取り敢えず落ち着いて。僕で良ければ可能な限り助力するから」
眠い。今は五時間目。昼食を食べた直後だ。食後はどうしても眠くなってしまう。
五時間目は科学の授業であり、付近の席の人と昨年の範囲の復習プリントを協力しながら解いていくという内容だ。
僕は早々に終わらせたので寝ても構わないのだがどうやら勉強が苦手らしい花咲さんが手伝いを強請ってきた為起きている。
「ねぇ、これって何ページまでやらなきゃいけないの?」
「そのページ含めないで三ページだよ」
「三!? あと二十分で? 無理無理!」
「つべこべ言ってる時間が勿体ないよ。ほら、手が止まってる」
「ねぇ、一つ賭けをしない?」
僕の言葉を遮って
動かしていた手を止めてそう投げかけてくる。何か良からぬことを考えていることが顔から滲み出ている。だけど駆けの内容に少しばかり興味がある。
「返事をする前に内容を聞いても良い?」
「じゃあ買い物に付き合ってくれるって約束してくれるなら解いてあげる。さっき話した服を買いに行きたいの!」
与えられた問題を解くという当たり前のことするのに約束を交わされることに多少の不満はあるものの、それで話が収束するなら構わない。
「分かった。じゃあ一先ずプリントを終わらせよう。手伝うからさ」
約束を交わした花咲さんは苦戦こそしながらもなんとか授業内にプリントを終わらせれた。最初からそのやる気を引き出してくれた苦労しないのにな。と少しながら思ったが提出することが出来たことを喜んでいる花咲さんの無垢な笑顔を見るとそんな卑屈な考えは何処かに消え去った。
「見て!この服可愛くない!?」
「そうだね。せっかくだし試着してみたら?」
僕の発言を耳に入れ、ニットカーディガンを片手にそさくさと試着室へと入って行った。
「どう? 似合ってる?」
「うん。似合ってるよ。その感じだとこのパンツが合いそうだね」
「パンツ!?」
「ズボンのこと」
「びっくりしたー。何言い出すかと思ったら」
「僕がそんなこと言うような変態に見える?」
「見えなくもないかな」
「……」
「ごめんごめん! ノリツッコミだから!」
「流石の僕でも分かってるよ。取り敢えず着てみたら?」
「うん! 着てみる!」
「どうしよっか。日が落ちるまでまだ時間あるし何処か寄って行く?」
「じゃあ彼処のカフェに行きたい!」
カフェに向かっている最中、花咲さんが呑気にスキップをしていて明らかに気分が高揚していることが伺えた。
カフェはどうしても意識が高い人が通うイメージがあるので少し怖い。外装から既に僕のような人は入店してはいけない店だと瞬時に悟った。
入店を躊躇していたが花咲さんに手を引かれ、未だに心の準備すらしていない僕を半ば強引に入店させた。
店員が人数の確認を取ってテラス席へと案内してくれた。テーブルの中心には穴が空いており、そこに刺さっているヒノキの棒で支えられている白色のパラソルがテーブルに日陰を作っている。
テーブルに置かれていたメニューを閲覧し、最初に浮かんできた言葉は“高い”だ。殆どのメニューが軽く二千円を超えている。特に特性大盛りスイーツの盛り合わせパフェなんて三千円もする。なのでこれだけは選んで欲しく無い。
そんなことを考えている内に全員が注文する料理を確定させたので定員を呼ぶ。
「ご注文はどうなさいますか?」
「僕はケーキセットでお願いします」
「私は特性大盛りスイーツの盛り合わせでお願いします!」
「かしこまりました。少々お待ち下さい」
定員の視界から僕が外れたと同時に脱力していまい、浅く座っていたが無意識に深々と腰がける。
脳内で計算をする。合計で5千八百円。払えない訳では無いが有り金の大半を持って行かれることとなる。
だがそんな考えは定員によって運ばれて来た料理によってどうでも良くなった。
花咲さんがスマートフォンを取り出して写真を撮り出す。
釣られて僕までスマートフォンを取り出して撮影を試みたがシャッターボタンの左下側にある縮小された最後に撮った写真が気になったので閲覧する。
最後にカメラ機能を使った時期さえ覚えていないため当然内容なんて覚えている筈が無い。だが写真の内容を一見しただなのに把握出来てしまった。
それは2年前の秋に撮ったサッカーの強化合宿での集合写真だ。
写真を見た途端に襲ってきた悪寒と嫌悪感に耐えきれず、即座に削除する。
忘れたい。
どうにかして記憶のフィルムから切り捨てたい僕の黄金期であり暗黒期の頃の写真だ。
「食べないの?すっごい美味しいよ!」
花咲さんの言葉によって僕の思考は強制的に遮断されて我に返る。
気を正して注文したケーキを口に運ぶ。
甘過ぎ無いケーキがコーヒと良く合う。
花咲さんは満足気にしている。その満面の笑みが見れたので同行した価値はあったなと思う。
「涼介くんのコーヒー一口頂戴!」
「良いけどコーヒー飲めるの?」
「子供扱いしなくても大丈夫です!」
そう胸を張りながら豪語し、花咲さんがコーヒーを口にする。途端、先程までの余裕そうな表情は消え去り虫を噛んだかの如く顔を歪めた。
「苦い……角砂糖入ってると思ってた」
「事前に聞いてくれたら良かったのに」
「角砂糖無しで飲めるの凄いね」
「最初は然程美味しく感じれなかったけど長い間飲んでたらこの苦みが物欲しくなるんだよ」
「そうなんだ……ってあれ? ねぇ涼介くん」
「ん? どうしたの?」
「実テって何時だっけ?」
「確か、三日後かな。それがどうしたの?」
「え、嘘……やばいやばいやばいやばい」
「ど、どうしたの?」
花咲さんにはとても似つかわない程に小さな声でボソボソとそう呟いている。
「英語がやばいの。私、自分で言うのも何だけどあまり頭が良くなくて。特に英語なんて毎回赤点ギリギリで……えっと、その……」
余程焦っているのか語彙力が少しばかり低下している。これだと事態に収集が着かない為一先ず落ち着かせなくては。
「取り敢えず落ち着いて。僕で良ければ可能な限り助力するから」