第二幕
「チュンチュン」と小鳥が鳴いている。それに起こされた僕は差す日差しに目を瞑った。
もう朝か。接客係の人が「朝食の準備が整った」と入室して起こされていないことからまだ朝食まで時間があるのだろう。
にしても遅起きだ。いつもは曜日問わず6時には起床していたのだが今はもう8時半だ。
僕らしくない。余程、疲労が溜まっていたのだろうか。
一先ず喉が乾いたので飲み物を飲もうと起き上がるとある風景が目に止まった。
花咲さんが机に伏せた状態で寝ている。
様子を知ろうと近寄ると花咲さんの手には鉛筆が机には一枚の紙があった。
花咲さんも僕と同じく疲労が溜まっているのだろうか。だが寝ぼけた状態で下階に降りるわけにもいかないので申し訳ないと思いつつも起こそうと試みる。
声を掛けながら肩を叩くが一向に起きる気配が無い。
何故か言葉にし難い焦燥感に襲われる。
病状が悪化しているのかもしれない。そんな考えが頭を過ったら最後、必死に目を覚まさせようとする。
起きてくれ。無事でいてくれと。
その一心で働き掛けたが結果は変わらず念の為、救急車を呼ぶことにした。
焦り過ぎているが故に上手く呂律が回らずとも必死に花咲さんの様体と現在地を教えた。
どうやら到着まで十分程かかるらしい。
その間何か出来ることは無いかと辺りを見渡していると再度、机に置かれている紙が視界に写った。
無意識に手に取る。紙は紙でも手紙のようだ。
読んでも良いのだろうか。
少しの葛藤の末、手紙の文章に目を通す。人間は欲には逆らえない。
【これを読んでいる人が涼介くんじゃない場合は彼に渡してください。涼介くんだったら恥ずかしいけど最後まで読んでね。
――涼介くんへ
まずはごめんね。もう駄目みたい。案外分かるんだね。もしかしたらもう直死んじゃうかも。
涼介くんに伝えたいことが沢山あるから起そうと思ったけど幸せそうに寝てるの見たら起こす気になれなかったから手紙に書くね。
改めてごめんね。『夢を一緒に叶えよう』なんて息巻いたのに約束守れなくて。役目は違えど一緒に立ちたかったな。全国決勝の舞台に。
私ね、実は結構涼介くんに救われてたんだよ? 割り切ってても時々、いつ死ぬのか怖くて泣き出しそうになってたときに涼介くんのどこか素っ気ない言葉の中にある優しさに心を救われてたんだよ。親の有り難みに巣立ってから気付く的な? まぁ、取り敢えず今まで沢山支えてくれてありがとね。
余白的にあんまり書けそうに無いからどうしても伝えたいことだけ書くね。
まずは私の恋愛事情について。
なんだかんだこれが初めての恋バナだね。と言っても私が一方的に伝えるだけなんだけどね。
もう気付いてるかもしれないけどかっこよくて優しくてサッカーに一生懸命な涼介くんのこと結構前から好きだったよ。
付き合いたかったな。一緒にもっと会話して授業受けて買い物してサッカーして……もっともっと一緒に居たかったなぁ。
はい! 恥ずかしいから後悔混じりの恋バナはここまで!
最後にサッカーについて少し書くね。
頼むよ。涼介くんなら絶対に約束を果たしてくれると信じてるから。空の上から見守ってるね。
やっぱり最後の最後にもう一度だけ言わせて。
好きだよ。大好きだよ!】
後の締め括りの一文は花咲さんが書いた字とは思えない程に歪な字体だった。
後に病院内にて花咲さんの死亡が確認され、告別式と通夜に参列させて頂き花咲さんのご両親のご好意から遺骨を一部分けていただくこととなった。
「チュンチュン」と小鳥が鳴いている。それに起こされた僕は差す日差しに目を瞑った。
もう朝か。接客係の人が「朝食の準備が整った」と入室して起こされていないことからまだ朝食まで時間があるのだろう。
にしても遅起きだ。いつもは曜日問わず6時には起床していたのだが今はもう8時半だ。
僕らしくない。余程、疲労が溜まっていたのだろうか。
一先ず喉が乾いたので飲み物を飲もうと起き上がるとある風景が目に止まった。
花咲さんが机に伏せた状態で寝ている。
様子を知ろうと近寄ると花咲さんの手には鉛筆が机には一枚の紙があった。
花咲さんも僕と同じく疲労が溜まっているのだろうか。だが寝ぼけた状態で下階に降りるわけにもいかないので申し訳ないと思いつつも起こそうと試みる。
声を掛けながら肩を叩くが一向に起きる気配が無い。
何故か言葉にし難い焦燥感に襲われる。
病状が悪化しているのかもしれない。そんな考えが頭を過ったら最後、必死に目を覚まさせようとする。
起きてくれ。無事でいてくれと。
その一心で働き掛けたが結果は変わらず念の為、救急車を呼ぶことにした。
焦り過ぎているが故に上手く呂律が回らずとも必死に花咲さんの様体と現在地を教えた。
どうやら到着まで十分程かかるらしい。
その間何か出来ることは無いかと辺りを見渡していると再度、机に置かれている紙が視界に写った。
無意識に手に取る。紙は紙でも手紙のようだ。
読んでも良いのだろうか。
少しの葛藤の末、手紙の文章に目を通す。人間は欲には逆らえない。
【これを読んでいる人が涼介くんじゃない場合は彼に渡してください。涼介くんだったら恥ずかしいけど最後まで読んでね。
――涼介くんへ
まずはごめんね。もう駄目みたい。案外分かるんだね。もしかしたらもう直死んじゃうかも。
涼介くんに伝えたいことが沢山あるから起そうと思ったけど幸せそうに寝てるの見たら起こす気になれなかったから手紙に書くね。
改めてごめんね。『夢を一緒に叶えよう』なんて息巻いたのに約束守れなくて。役目は違えど一緒に立ちたかったな。全国決勝の舞台に。
私ね、実は結構涼介くんに救われてたんだよ? 割り切ってても時々、いつ死ぬのか怖くて泣き出しそうになってたときに涼介くんのどこか素っ気ない言葉の中にある優しさに心を救われてたんだよ。親の有り難みに巣立ってから気付く的な? まぁ、取り敢えず今まで沢山支えてくれてありがとね。
余白的にあんまり書けそうに無いからどうしても伝えたいことだけ書くね。
まずは私の恋愛事情について。
なんだかんだこれが初めての恋バナだね。と言っても私が一方的に伝えるだけなんだけどね。
もう気付いてるかもしれないけどかっこよくて優しくてサッカーに一生懸命な涼介くんのこと結構前から好きだったよ。
付き合いたかったな。一緒にもっと会話して授業受けて買い物してサッカーして……もっともっと一緒に居たかったなぁ。
はい! 恥ずかしいから後悔混じりの恋バナはここまで!
最後にサッカーについて少し書くね。
頼むよ。涼介くんなら絶対に約束を果たしてくれると信じてるから。空の上から見守ってるね。
やっぱり最後の最後にもう一度だけ言わせて。
好きだよ。大好きだよ!】
後の締め括りの一文は花咲さんが書いた字とは思えない程に歪な字体だった。
後に病院内にて花咲さんの死亡が確認され、告別式と通夜に参列させて頂き花咲さんのご両親のご好意から遺骨を一部分けていただくこととなった。