「お疲れ様だ、アイク! 言ったであろう、今のアイクが負けるはずがないと!」
「ああ。俺自身が一番驚いているよ」
俺は闇闘技場で大男との勝負に勝利し、控室に移動していた。控室では嬉しそうな顔でルーナが俺を向かえてくれた。
戦闘をした後の俺にこんな顔を向けてくれる人が今までにいただろうか。
そう考えると、ルーナから向けられる笑顔にも少し思う所があったりした。
「見てみろ、アイク! 一発当ててやったわ! フハハハハーっちょ、いたい! なぜ頬を抓るのだ!」
「俺が命張ってる側で大穴に賭けて、大金を手にしたのが気に入らん!」
俺は大金を見せびらかしてくるルーナの頬を引っ張り、俺が味わった恐怖を少しでも味合わせてやろうとした。しかし、ルーナはそんな俺の手から簡単に逃れてしまった。
柔らかすぎた頬は完全に子供そのもので、本当に俺よりも年上なのか疑わしくなる。
「まったく、こんな美少女に手をあげるとは何事だ、アイクよ」
「くそっ、身軽なロリっ子め」
「ロリじゃないと言っておろうが!」
いや、その体躯でロリじゃないのは無理があるだろう。そんな俺のジトっとした視線はルーナに届くことなく、ルーナの勢いに跳ねのけられたようだった。
「それで、どうだアイク? 『鑑定』のスキルは奪えてのか?」
「いや、どうだろうな。特に体に変化とかはないな」
「アイクはお馬鹿さんなのか。スキルという物は使わないと分からんだろ。試しに、使ってみればよいではないか」
「ルーナに馬鹿って言われたくないな。『鑑定』……いや、だめだな。何も変わりないみたいだ」
「やはり、あの大男が『鑑定』のスキルを持っているわけもないか」
ルーナは少し落胆するように溜息を吐いた。
まぁ、ルーナの言っていることが分からないわけじゃない。明らかにさっきの男は力任せの戦闘スタイルだった。前科の内容的にも『鑑定』を持っている可能性が低いことは分かっていた。
力任せの戦闘スタイル。俺はそんな男に何度もスティールを浴びせた。
一体、俺はどんなスキルをあの男から奪ったのだろうか。
「だが、安心しろアイク! 次の奴は薬の売人だったらしいから、かなり『鑑定』のスキルを持っている可能性は高いぞ!」
「薬の売人のどこに安心要素があるんだか。普通に怖いっての」
ルーナの話によると、次に戦う奴は違法ドラッグの売人だったらしい。違法ドラッグの所持と密造、販売などを繰り返していたらしく、一部の界隈ではその名前を知らない者はいないとか。
売人という経歴からも、『鑑定』のスキルを持っているだろう。しかし、問題はどうやってそのスキル奪うかだ。
俺の『スティール』は相手のスキルをランダムに奪うものだと思う。つまり、俺の運次第で『鑑定』のスキルが奪えない可能性もある。
「そこでだ、アイク! 素晴らしい作戦を考えてきた!」
「またろくでもないことを」
「むむ。そうじゃけんにするでない! 私の方法を使えば、アイクは無事『鑑定』のスキルを奪うことができるであろう!」
そんな売り文句を目の前に垂らされて、俺は不本意ながらその方法を聞かされることになったのだった。
そして迎えた第二回戦。俺の前には長髪で手足の長い男が立っていた。ずっと小さな声で独り言を言っているし、焦点も合っていない。急に大きな声を出すし、薬物中毒患者を目の前にしているようだった。
「ぶち殺せ! そんなガキは潰せ!」
「負けたら承知しねーぞ、内蔵引きちぎれぇ!」
「全額ベッドしたぞ! やってやれ、アイク!!」
ちくしょう、あいつまた俺で金稼ぎしてやがる。
「第二回戦! 闇の薬剤師ドンラン対新人マスク、試合開始!」
そして、そんな俺の心情を今回も置き去りに、試合開始のゴングが鳴らされた。
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す……殺す!」
ブツブツと独り言を言っていた長身の男は、ゆらりゆらりと左右に体を揺らした後、すぐ俺の目の前までやって来た。
その速すぎる動きに付いていけなかった。
その男はその揺れた勢いを利用して、手に持ったナイフをこちらに突き刺そうとしていた。そして、俺がそれを防ぐことは無理だと瞬時に分かった。
だから、俺はルーナが言っていた作戦を取らざる負えなくなったのだった。
「『放電』!」
俺はルーナから奪ったというもう一つのスキルを使うことにした。『放電』というスキルは辺りに電気をまき散らすスキルである。
覚えているモンスターも珍しくないスキルだが、それを人が使う所を見たことはない。それは、相手を痺れさせて麻痺の状態にするのに特化した物だった。
だから、このスキルを食らっても相手が死ぬことはない。
「うぐっ、はっ」
俺の無差別に放たれる電流を食らい、長身の男は体を大きく体を跳ねさせながら、その場に倒れた。
本来なら、戦闘不能状態になったのでここでゴングが鳴らされてしまう。しかし、ここからがルーナの作戦の本領発揮する場面だった。
「ふ、フハハハハー! こ、このー、雑魚めがー! 俺様に盾ついてどうなるか分からんのかぁー!」
俺はそう言いながら、倒れるその男の背中を軽く踏みつけた。本当は足をそっと添えいるだけである。
そうすることで、ゴングを鳴らそうとしていた審判がその手を止めた。
そう、ここは闇闘技場。勝負がついても、俺のスタンドプレーを止める者はいない。審判でさえも、より残虐な試合を期待しているのだ。
だから、俺がこの男に攻撃の手をやめない限り、試合は続くのだ。
「おらー、このー、雑魚が! スティール。 ほら、何とか言ってみろい! スティール。 おらおら! スティール」
「な、なんで、攻撃の間にスティールを、するんだ」
俺の下で痺れている長身の男にとっては、俺が異常なものに見えていたのだろう。痺れながらも俺にツッコミを入れていた。
俺はダメージにもならない蹴りを入れながら、スティールを何度も浴びせた。そうして、しばらくスティールをしたところで、感覚が今までと違くなった瞬間があった。
もしかしたら、この長身の男のスキルを全て奪いつくしたのかもしれない。そうなれば、この安いスタンドプレーももう必要ないだろ。
「最後なんで、少し強いの入れますね。『空拳』!」
「がはっ!」
俺は長身の男にそう言い残すと、最後に軽めの『空拳』を打ち込んだ。もろ背中でそれを受けた長身の男は、それを受けて完全に動かなくなってしまった。
ただ気を失っているだけなのだろうけれども、なんかあんまり良い気しないな。
そして、その男が動かなくなって数秒。またしても凄い歓声が闘技場内に響いた。
どうやら、俺は無事に二回戦を突破したらしい。
「さて、無事に『鑑定』のスキルは奪えたのだろうか? 『鑑定』」
俺はそんな歓声の中、独り言のようにそのスキルを試してみることにした。自分の手の平を見ながら『鑑定』のスキルを使ってみる。すると、俺の脳内に一気に文字が並ぶ映像が入ってきた。
「な、なんだ。これ?」
初めて使用した『鑑定』のスキル。そのスキルを発動したことによって、頭の中には俺の持っているスキルが一気に表示された。
「数百? いや、これは千以上あるだろ」
一気に流れてくる俺が持っているスキルの情報。それは百を優に超えて千以上の数があった。
ちょっと待て、このスキル全部使えるのか?
そんな俺の驚く顔をしたり顔で見つめていたルーナは、こちらに全てを察したような笑みを向けていた。
どうやら、俺はこの瞬間から千を越えるスキルを使えるようになったらしい。
これは、さすがにチート過ぎるんじゃないだろうか。
俺は歓声が冷めない中、一人冷静にそんなことを思っていた。
「ああ。俺自身が一番驚いているよ」
俺は闇闘技場で大男との勝負に勝利し、控室に移動していた。控室では嬉しそうな顔でルーナが俺を向かえてくれた。
戦闘をした後の俺にこんな顔を向けてくれる人が今までにいただろうか。
そう考えると、ルーナから向けられる笑顔にも少し思う所があったりした。
「見てみろ、アイク! 一発当ててやったわ! フハハハハーっちょ、いたい! なぜ頬を抓るのだ!」
「俺が命張ってる側で大穴に賭けて、大金を手にしたのが気に入らん!」
俺は大金を見せびらかしてくるルーナの頬を引っ張り、俺が味わった恐怖を少しでも味合わせてやろうとした。しかし、ルーナはそんな俺の手から簡単に逃れてしまった。
柔らかすぎた頬は完全に子供そのもので、本当に俺よりも年上なのか疑わしくなる。
「まったく、こんな美少女に手をあげるとは何事だ、アイクよ」
「くそっ、身軽なロリっ子め」
「ロリじゃないと言っておろうが!」
いや、その体躯でロリじゃないのは無理があるだろう。そんな俺のジトっとした視線はルーナに届くことなく、ルーナの勢いに跳ねのけられたようだった。
「それで、どうだアイク? 『鑑定』のスキルは奪えてのか?」
「いや、どうだろうな。特に体に変化とかはないな」
「アイクはお馬鹿さんなのか。スキルという物は使わないと分からんだろ。試しに、使ってみればよいではないか」
「ルーナに馬鹿って言われたくないな。『鑑定』……いや、だめだな。何も変わりないみたいだ」
「やはり、あの大男が『鑑定』のスキルを持っているわけもないか」
ルーナは少し落胆するように溜息を吐いた。
まぁ、ルーナの言っていることが分からないわけじゃない。明らかにさっきの男は力任せの戦闘スタイルだった。前科の内容的にも『鑑定』を持っている可能性が低いことは分かっていた。
力任せの戦闘スタイル。俺はそんな男に何度もスティールを浴びせた。
一体、俺はどんなスキルをあの男から奪ったのだろうか。
「だが、安心しろアイク! 次の奴は薬の売人だったらしいから、かなり『鑑定』のスキルを持っている可能性は高いぞ!」
「薬の売人のどこに安心要素があるんだか。普通に怖いっての」
ルーナの話によると、次に戦う奴は違法ドラッグの売人だったらしい。違法ドラッグの所持と密造、販売などを繰り返していたらしく、一部の界隈ではその名前を知らない者はいないとか。
売人という経歴からも、『鑑定』のスキルを持っているだろう。しかし、問題はどうやってそのスキル奪うかだ。
俺の『スティール』は相手のスキルをランダムに奪うものだと思う。つまり、俺の運次第で『鑑定』のスキルが奪えない可能性もある。
「そこでだ、アイク! 素晴らしい作戦を考えてきた!」
「またろくでもないことを」
「むむ。そうじゃけんにするでない! 私の方法を使えば、アイクは無事『鑑定』のスキルを奪うことができるであろう!」
そんな売り文句を目の前に垂らされて、俺は不本意ながらその方法を聞かされることになったのだった。
そして迎えた第二回戦。俺の前には長髪で手足の長い男が立っていた。ずっと小さな声で独り言を言っているし、焦点も合っていない。急に大きな声を出すし、薬物中毒患者を目の前にしているようだった。
「ぶち殺せ! そんなガキは潰せ!」
「負けたら承知しねーぞ、内蔵引きちぎれぇ!」
「全額ベッドしたぞ! やってやれ、アイク!!」
ちくしょう、あいつまた俺で金稼ぎしてやがる。
「第二回戦! 闇の薬剤師ドンラン対新人マスク、試合開始!」
そして、そんな俺の心情を今回も置き去りに、試合開始のゴングが鳴らされた。
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す……殺す!」
ブツブツと独り言を言っていた長身の男は、ゆらりゆらりと左右に体を揺らした後、すぐ俺の目の前までやって来た。
その速すぎる動きに付いていけなかった。
その男はその揺れた勢いを利用して、手に持ったナイフをこちらに突き刺そうとしていた。そして、俺がそれを防ぐことは無理だと瞬時に分かった。
だから、俺はルーナが言っていた作戦を取らざる負えなくなったのだった。
「『放電』!」
俺はルーナから奪ったというもう一つのスキルを使うことにした。『放電』というスキルは辺りに電気をまき散らすスキルである。
覚えているモンスターも珍しくないスキルだが、それを人が使う所を見たことはない。それは、相手を痺れさせて麻痺の状態にするのに特化した物だった。
だから、このスキルを食らっても相手が死ぬことはない。
「うぐっ、はっ」
俺の無差別に放たれる電流を食らい、長身の男は体を大きく体を跳ねさせながら、その場に倒れた。
本来なら、戦闘不能状態になったのでここでゴングが鳴らされてしまう。しかし、ここからがルーナの作戦の本領発揮する場面だった。
「ふ、フハハハハー! こ、このー、雑魚めがー! 俺様に盾ついてどうなるか分からんのかぁー!」
俺はそう言いながら、倒れるその男の背中を軽く踏みつけた。本当は足をそっと添えいるだけである。
そうすることで、ゴングを鳴らそうとしていた審判がその手を止めた。
そう、ここは闇闘技場。勝負がついても、俺のスタンドプレーを止める者はいない。審判でさえも、より残虐な試合を期待しているのだ。
だから、俺がこの男に攻撃の手をやめない限り、試合は続くのだ。
「おらー、このー、雑魚が! スティール。 ほら、何とか言ってみろい! スティール。 おらおら! スティール」
「な、なんで、攻撃の間にスティールを、するんだ」
俺の下で痺れている長身の男にとっては、俺が異常なものに見えていたのだろう。痺れながらも俺にツッコミを入れていた。
俺はダメージにもならない蹴りを入れながら、スティールを何度も浴びせた。そうして、しばらくスティールをしたところで、感覚が今までと違くなった瞬間があった。
もしかしたら、この長身の男のスキルを全て奪いつくしたのかもしれない。そうなれば、この安いスタンドプレーももう必要ないだろ。
「最後なんで、少し強いの入れますね。『空拳』!」
「がはっ!」
俺は長身の男にそう言い残すと、最後に軽めの『空拳』を打ち込んだ。もろ背中でそれを受けた長身の男は、それを受けて完全に動かなくなってしまった。
ただ気を失っているだけなのだろうけれども、なんかあんまり良い気しないな。
そして、その男が動かなくなって数秒。またしても凄い歓声が闘技場内に響いた。
どうやら、俺は無事に二回戦を突破したらしい。
「さて、無事に『鑑定』のスキルは奪えたのだろうか? 『鑑定』」
俺はそんな歓声の中、独り言のようにそのスキルを試してみることにした。自分の手の平を見ながら『鑑定』のスキルを使ってみる。すると、俺の脳内に一気に文字が並ぶ映像が入ってきた。
「な、なんだ。これ?」
初めて使用した『鑑定』のスキル。そのスキルを発動したことによって、頭の中には俺の持っているスキルが一気に表示された。
「数百? いや、これは千以上あるだろ」
一気に流れてくる俺が持っているスキルの情報。それは百を優に超えて千以上の数があった。
ちょっと待て、このスキル全部使えるのか?
そんな俺の驚く顔をしたり顔で見つめていたルーナは、こちらに全てを察したような笑みを向けていた。
どうやら、俺はこの瞬間から千を越えるスキルを使えるようになったらしい。
これは、さすがにチート過ぎるんじゃないだろうか。
俺は歓声が冷めない中、一人冷静にそんなことを思っていた。