「クエストに行かれるんですね。分かりました。今、支度しますね」
「え、支度?」
俺とルーナは『魔源』を抑え込むスキルを探すために、ダンジョンに潜ろうとしていた。
しばらく情報収集をしてみたが成果は得られなかった。それなら、一度ダンジョンに潜ってみるのも良いのではないかというルーナが提案した。
俺とルーナの出会いもルダンジョンだった。まだ情報が表に出ていないだけで、ダンジョンに住み着いたモンスターが、そのスキルを持っているかもしれないと可能性にかけて、俺達はダンジョンに向かおうとしていた。
なので、俺達はダンジョン攻略。アリスは聞き込みというふうに役割分担をしようと思っていたのだが、アリスはクエストに行く気満々といった様子で支度を始めていた。
「いやいや、アリスは聞き込みを続けてもらおうと思っていたんだけど」
「そんなわけにはいきません。アイクさんが行くならどこにでも付いて行きますよ」
「そう言ってもらえるのは嬉しいんだけど、危険じゃないか?」
さすがに、子供を連れてダンジョンに潜るのは危険すぎるだろう。そう思ってルーナの方に目配せをしたが、ルーナは特に驚いている様子はなかった。
「『魔源』持ちというのは、常に湧き出る魔力に耐えようとしながら成長をする。そのスキルがなくなっても、一般人とは比べ物にならないほどの魔力を手にしているはずだ。それを今は惜しみなく使えるのだから、問題はないんだろう」
「そうですよ。それに、私これでも元王族ですよ?」
以前にルーナも王族は魔力が高いと言っていた。
冷静に分析するようなルーナの言葉を聞く限り、本当に問題はないのかもしれない。
「この剣が飾りじゃないってところ、見せちゃいます!」
アリスはそう言うと、とびっきりの笑顔をこちらに向けた。
「『身体強化』『肉体強化』」
アリスはいくつかのスキルを同時に使用すると、そのまま狼型のモンスターに突っ込んでいった。数度の剣撃をモンスターに食らわせると、そのモンスターはその場に倒れ込んだようだった。
「驚いたな」
アリスが前衛は任せて欲しいというから任せてみたのだが、その手際がすこぶる良い。こちらが魔法を使う前にモンスターを倒していくので、俺とルーナはただ立ち尽くすだけになっていた。
そして何より驚いたのが、その戦い方だ。
「結構脳筋みたいな戦い方するんだな」
「ち、違うんですよ! 魔法のスキルを取得するためには鍛錬が必要で、その鍛錬をしちゃうと『魔源』を活性化させちゃうから、あまりできなかったんです! だから、基礎的なものしか使えなくて、それと剣技を合わせた戦いしかできないんです」
「ふむ。バーサーカーみたいな戦い方をしおる」
「ば、バーサーカー?!」
「いや、強いし別にいいんだけどな」
アリスの加入によって、想いもしなかった補強をすることができたこともあり、想像よりも早くダンジョンの攻略が進んでいった。
そうして徐々に下の階層に行く途中で、何か人の叫び声が聞こえてきた。
「誰か戦ってるのか?」
戦闘中の声はどこかで聞いたことのあるような声だった。あまり聞きたくないような声。それが誰なのかは分からないが、声を聞く限り穏やかな状況ではないことが分かる。さすがに、無視をすることはできないだろう。
「加勢するぞ、ルーナ、アリス!」
俺は二人にそう告げると、いの一番に飛び出してそこに駆け付けた。
そこには俺達と同じ三人で構成されているパーティがいた。それと向かい合っていたのは普通のオーガよりも一回り大きいオーガが数体。どうやら、この層はオーガの住処になっているらしい。
タンク役の男が頑張ってはいるみたいだが、どう考えても不利な状況だった。
「『肉体強化』『風爪』!」
俺はタンクの男のすぐ隣に立つと、スキルを使って荒々しい斬撃を飛ばした。俺の攻撃を受けて、目の前にいたオーガの上半身が吹っ飛んだ。そして、その直線状にいた数体のオーガを切りつけるようにして、その斬撃は飛んでいき、一度で複数体のオーガがその場に倒れた。
……やりすぎた。
『魔源』を身に着けてから、以前にもまして力の制御ができなくなっている。あまり、魔力を使いすぎると、今度は俺の身が危ないから『魔源』を刺激し過ぎるのはダメなんだけどな。
「ギォォォ」
残っているオーガ達は戦意喪失したような声を出して、俺から背を向けて走り去って行った。
まぁ、背中を向けて逃げるモンスターを狩る理由もないか。
俺は魔法を打とうと伸ばしていた手を静かに下した。
「大丈夫か? ……え?」
そして、俺はそこにいたパーティの安否を確認するために振り返った。そこにいたのは、意外な人物だった。
「ギース?」
そこにいたのは、ギース達のパーティだった。ギースとリン、それとエルドが傷だらけで満身創痍でそこにいた。
「え、何してんだ。こんな所で」
そんな心からの疑問が自然と漏れ出てしまっていた。
だって、ここはこいつらが所属しているギルドの管轄ではないはず。それなのに、なんでここにいるのだろうか。
そんなふうに状況を呑み込めない俺の視線を受けて、ギースは気まずそうに視線を逸らしたのだった。
「え、支度?」
俺とルーナは『魔源』を抑え込むスキルを探すために、ダンジョンに潜ろうとしていた。
しばらく情報収集をしてみたが成果は得られなかった。それなら、一度ダンジョンに潜ってみるのも良いのではないかというルーナが提案した。
俺とルーナの出会いもルダンジョンだった。まだ情報が表に出ていないだけで、ダンジョンに住み着いたモンスターが、そのスキルを持っているかもしれないと可能性にかけて、俺達はダンジョンに向かおうとしていた。
なので、俺達はダンジョン攻略。アリスは聞き込みというふうに役割分担をしようと思っていたのだが、アリスはクエストに行く気満々といった様子で支度を始めていた。
「いやいや、アリスは聞き込みを続けてもらおうと思っていたんだけど」
「そんなわけにはいきません。アイクさんが行くならどこにでも付いて行きますよ」
「そう言ってもらえるのは嬉しいんだけど、危険じゃないか?」
さすがに、子供を連れてダンジョンに潜るのは危険すぎるだろう。そう思ってルーナの方に目配せをしたが、ルーナは特に驚いている様子はなかった。
「『魔源』持ちというのは、常に湧き出る魔力に耐えようとしながら成長をする。そのスキルがなくなっても、一般人とは比べ物にならないほどの魔力を手にしているはずだ。それを今は惜しみなく使えるのだから、問題はないんだろう」
「そうですよ。それに、私これでも元王族ですよ?」
以前にルーナも王族は魔力が高いと言っていた。
冷静に分析するようなルーナの言葉を聞く限り、本当に問題はないのかもしれない。
「この剣が飾りじゃないってところ、見せちゃいます!」
アリスはそう言うと、とびっきりの笑顔をこちらに向けた。
「『身体強化』『肉体強化』」
アリスはいくつかのスキルを同時に使用すると、そのまま狼型のモンスターに突っ込んでいった。数度の剣撃をモンスターに食らわせると、そのモンスターはその場に倒れ込んだようだった。
「驚いたな」
アリスが前衛は任せて欲しいというから任せてみたのだが、その手際がすこぶる良い。こちらが魔法を使う前にモンスターを倒していくので、俺とルーナはただ立ち尽くすだけになっていた。
そして何より驚いたのが、その戦い方だ。
「結構脳筋みたいな戦い方するんだな」
「ち、違うんですよ! 魔法のスキルを取得するためには鍛錬が必要で、その鍛錬をしちゃうと『魔源』を活性化させちゃうから、あまりできなかったんです! だから、基礎的なものしか使えなくて、それと剣技を合わせた戦いしかできないんです」
「ふむ。バーサーカーみたいな戦い方をしおる」
「ば、バーサーカー?!」
「いや、強いし別にいいんだけどな」
アリスの加入によって、想いもしなかった補強をすることができたこともあり、想像よりも早くダンジョンの攻略が進んでいった。
そうして徐々に下の階層に行く途中で、何か人の叫び声が聞こえてきた。
「誰か戦ってるのか?」
戦闘中の声はどこかで聞いたことのあるような声だった。あまり聞きたくないような声。それが誰なのかは分からないが、声を聞く限り穏やかな状況ではないことが分かる。さすがに、無視をすることはできないだろう。
「加勢するぞ、ルーナ、アリス!」
俺は二人にそう告げると、いの一番に飛び出してそこに駆け付けた。
そこには俺達と同じ三人で構成されているパーティがいた。それと向かい合っていたのは普通のオーガよりも一回り大きいオーガが数体。どうやら、この層はオーガの住処になっているらしい。
タンク役の男が頑張ってはいるみたいだが、どう考えても不利な状況だった。
「『肉体強化』『風爪』!」
俺はタンクの男のすぐ隣に立つと、スキルを使って荒々しい斬撃を飛ばした。俺の攻撃を受けて、目の前にいたオーガの上半身が吹っ飛んだ。そして、その直線状にいた数体のオーガを切りつけるようにして、その斬撃は飛んでいき、一度で複数体のオーガがその場に倒れた。
……やりすぎた。
『魔源』を身に着けてから、以前にもまして力の制御ができなくなっている。あまり、魔力を使いすぎると、今度は俺の身が危ないから『魔源』を刺激し過ぎるのはダメなんだけどな。
「ギォォォ」
残っているオーガ達は戦意喪失したような声を出して、俺から背を向けて走り去って行った。
まぁ、背中を向けて逃げるモンスターを狩る理由もないか。
俺は魔法を打とうと伸ばしていた手を静かに下した。
「大丈夫か? ……え?」
そして、俺はそこにいたパーティの安否を確認するために振り返った。そこにいたのは、意外な人物だった。
「ギース?」
そこにいたのは、ギース達のパーティだった。ギースとリン、それとエルドが傷だらけで満身創痍でそこにいた。
「え、何してんだ。こんな所で」
そんな心からの疑問が自然と漏れ出てしまっていた。
だって、ここはこいつらが所属しているギルドの管轄ではないはず。それなのに、なんでここにいるのだろうか。
そんなふうに状況を呑み込めない俺の視線を受けて、ギースは気まずそうに視線を逸らしたのだった。