「まさか、第三王女が『魔源』持ちだったとはな」
「ルーナは詳しいのか、その『魔源』っていうスキルについて」
「少しはな」
俺達は騎士団から逃げて村の端に移動していた。今すぐにでも村を出るべきだとは思ったが、さすがに状況も掴めない状態でアリスを連れまわすわけにはいかない。
とりあえず、アリスに色々と聞くため、村の端で俺達は足を休ませていた。
「『魔源』。魔力が無限に溢れ出てしまうスキルだ。このスキルは常時発動してしまうスキルと言われており、そのスキルを持つものは無限の魔力を手にする」
「それのどこか欠陥なんだ?」
「無限に増幅する魔力。それは年齢と共に増え続ける。『魔源』の魔力を制御できる者もいるが、たいていの場合は制御できずに自身の魔力に焼かれて死んでしまうのだ」
「詳しいんですね」
「年の功だ」
アリスはルーナが自分よりも歳下だと思っているのだろう。ルーナの言葉の意味が分からないと言った様子で、きょとんと首を傾げていた。
「私が賊に魔法を使わなかった理由はそこにあるます。あと数度魔法を使ったら、なくなった魔力を補おうとして、『魔源』が活発化されます。そうなると、もうこの体は耐えることができないみたいです。『魔源』持ちの『魔女の娘』が王族にいたと知られたら大変ですからね、今回の旅の中で私を処分しようと思ったんでしょう」
ルーナの言っていた欠陥。それは多すぎる魔力に耐えられなくなっていつか自分の身を滅ぼすということか。
俺のスキルを奪った実感のない『スティール』以上に欠陥のあるスキルみたいだ。常時発動していて、スキルの保有者を殺してしまうなんて、迷惑にも程がある。
「なぁ、ルーナ。それって俺が奪えないのか?」
「え?」
「話を聞いてなかったのか。無限に湧き続けるんだぞ。そんなことをしたら、アイクの体がもたないだろ」
「でも、俺は成人している。アリスで体が耐えられなくても、俺の体なら今の状態の『魔源』なら耐えられるかもしれないだろ」
話を聞くところによると、年齢と共にスキルが大きくなる可能性が高い。使いようにもよると思うが、アリスと体格と年齢が違う俺なら、耐えられるのではないだろうか。
「可能性はゼロではないが、死ぬ可能性だってあるぞ」
「えっと、どういうことですか?」
俺とルーナで進んでいく会話に置いていかれたアリスは、戸惑っていたようだった。それも当然だ、俺のスキルのことについてまだ何も教えてなかったからな。
「俺は『スティール』で相手のスキルを奪うことができるんだ。だから、アリスの『魔源』も奪うことができるんじゃないかと思ってな」
「そ、そんなことができるんですか?!」
アリスは驚くように目を見開くと、体を前のめりにした。自分の命が助かることの可能性。それを目の前でぶら下げられて、無反応で居ろという方が無理というものだ。
「私は認めんからな! なんで今日会ったばかりの娘のために、そこまで体を張るんじゃ!」
そんな俺達の態度を見て、ルーナは慌てるように声を張り上げた。その目には涙すら浮かんでおり、俺のことを必死に止めようとしていた。
あれだけ俺を闇闘技場に引っ張っていったくせに、本当に危険になると心配してくれるんだなと思うと、少しの笑みが溢れてしまった。
「なんだろな、なんか他人な気がしないんだよ」
アリスが置かれている状況を知った。
アリスが騎士団達に向けられてる視線。あれは少し前まで俺がギルドの連中に向けられていたものと同じものだ。
ただ『魔源』というスキルを持っていただけ。それだけの理由できっと今まで辛い思いをしてきたのだろう。
俺もルーナに出会ってなかったらと思うと、ただ辛いだけの人生だったと思って死んだのかもしれない。
ルーナと俺の出会いとまでいかなくても、少しでも生きていて良かったと思って欲しい。
そんな綺麗な理由ではなく、ただ少し前の自分に手を伸ばすような感じだった。
『魔源』を持っていくからという理由で、ただ何も奪うことが出来ないという理由だけで殺されるなんて、たまったもんじゃないだろ?
「仮に、上手く言ったとしても、その娘の帰る場所はないぞ? 分かってるいのか?」
アリスの話とあの騎士団の態度を見る限り、例え『魔源』のスキルがなくなったとしても、国に帰ることはできないだろう。
おそらく、『魔源』を持っているといる『魔女の娘』というだけで、煙たがれるのだと思う。
だから、きっとアリスを助けてと今後安心して帰れる場所はないのだと思う。
それでも、昔の自分を知っているもの達がいる場所以外なら、そんなこともないだろう。
「アリス、俺が君のスキルを奪っても、王国に帰ることはできないと思う。いや、帰ることはできてもその後の未来はない。良くても監禁状態だろうな」
だから、ここでアリスを助けるなら、アリス居場所を見つけるまで、一緒に面倒を見る必要がある。
人を救うということは、救った後の責任も取らなくてはならない。
だから、それが見つかるまでは面倒を見ようと、心の中で決めた。
「俺が奪うのは君のスキルだけじゃない。王族としての後ろ盾も、これまでの人生、これからの人生を奪うことになる」
これまでのアリスの人生を捨てて、別の人生を歩ませることになる。その覚悟を共にしてもらう必要があった。
「それでもいいなら、君の『魔源』を俺に奪わせて欲しい」
それまでいうと、アリスは顔を赤くして俯いてしまった。プロポーズに似たような言葉を初対面な人に言われて、困ってしまったのかもしれない。
「で、でも、そうしたら、いつかは分かりませんけど、アイクさんが死んでしまうかもしれないじゃないですか」
「多分、アリスと俺の年齢差を考えると、数年は持つだろ。だから、その数年の内に魔力を常時食い続けるようなスキルを見つけるよ」
そこまで言うと、俺はルーナの方に振り返った。未だ納得してない目は赤く、涙を浮かべてこちらを睨んでいた。
お気に入りのおもちゃを取り上げられてたような顔。ルーナにとって俺は、本当にそんな存在なのかもしれないと思うと、失笑のような笑みが溢れてしまった。
「ルーナ、しばらくの旅の目標は俺が死なないで済むスキルを何者かかは奪うことだ。協力してくれるか?」
「……認めたわけではない。だから、もしもアイクの死因が『魔源』だったとき、私はこの娘を八つ裂にする。それでもいいなら、協力してやらんこともない!」
ルーナは強がるようにそう言うと、鼻を啜って胸を張った。泣いて喚かないのは、俺を困られないためなのか、単なる強がりなのか。
「おまっ、随分怖いこと言うな」
「だから、約束しろ。絶対に死ぬなよ。絶対に私置いていくな」
「分かったよ、約束する」
俺はそう言うとルーナを抱き寄せた。いつもなら、俺が手を伸ばすと頬を引っ張られると思って逃げるくせに、やけに素直に抱き抱えられていた。
もしかしたら、お互いに不安だったのかもしれない。
死んでしまうのでないかという可能性が互いの頭の中にはあったのだろう。
「……こんな人間は初めてだ」
俺がルーナから離れると、少しだけ名残惜しそうに、ルーナは俺の手に触れていた。その手とゆっくり離れるようにして、俺はアリスの目の前にたった。
「これだけ色々言っといてなんだけど、数発は『魔源』の以外のスキルを奪うことになると思う。それは勘弁してくれ」
俺は情けないような笑みを浮かべて、何度も使ったことあるスキル名を言葉にした。
「『スティール』」
こうして、俺は一人の王女の人生を奪った。
王族として、何不自由のなかった少女のこれまでとこれからを奪ったのだ。今後どれだけ善行を積んでも許されないのかもしれない。
ギルドでは『駄賊』と呼ばれていた。そして、それから力をつけて、俺はそんな二つ名を払拭した気でいた。
けれど、払拭した気でいたのは俺だけだったみたいだ。
どうやら、俺は『駄賊』の二つ名が似合う、悪い盗賊みたいだった。
「ルーナは詳しいのか、その『魔源』っていうスキルについて」
「少しはな」
俺達は騎士団から逃げて村の端に移動していた。今すぐにでも村を出るべきだとは思ったが、さすがに状況も掴めない状態でアリスを連れまわすわけにはいかない。
とりあえず、アリスに色々と聞くため、村の端で俺達は足を休ませていた。
「『魔源』。魔力が無限に溢れ出てしまうスキルだ。このスキルは常時発動してしまうスキルと言われており、そのスキルを持つものは無限の魔力を手にする」
「それのどこか欠陥なんだ?」
「無限に増幅する魔力。それは年齢と共に増え続ける。『魔源』の魔力を制御できる者もいるが、たいていの場合は制御できずに自身の魔力に焼かれて死んでしまうのだ」
「詳しいんですね」
「年の功だ」
アリスはルーナが自分よりも歳下だと思っているのだろう。ルーナの言葉の意味が分からないと言った様子で、きょとんと首を傾げていた。
「私が賊に魔法を使わなかった理由はそこにあるます。あと数度魔法を使ったら、なくなった魔力を補おうとして、『魔源』が活発化されます。そうなると、もうこの体は耐えることができないみたいです。『魔源』持ちの『魔女の娘』が王族にいたと知られたら大変ですからね、今回の旅の中で私を処分しようと思ったんでしょう」
ルーナの言っていた欠陥。それは多すぎる魔力に耐えられなくなっていつか自分の身を滅ぼすということか。
俺のスキルを奪った実感のない『スティール』以上に欠陥のあるスキルみたいだ。常時発動していて、スキルの保有者を殺してしまうなんて、迷惑にも程がある。
「なぁ、ルーナ。それって俺が奪えないのか?」
「え?」
「話を聞いてなかったのか。無限に湧き続けるんだぞ。そんなことをしたら、アイクの体がもたないだろ」
「でも、俺は成人している。アリスで体が耐えられなくても、俺の体なら今の状態の『魔源』なら耐えられるかもしれないだろ」
話を聞くところによると、年齢と共にスキルが大きくなる可能性が高い。使いようにもよると思うが、アリスと体格と年齢が違う俺なら、耐えられるのではないだろうか。
「可能性はゼロではないが、死ぬ可能性だってあるぞ」
「えっと、どういうことですか?」
俺とルーナで進んでいく会話に置いていかれたアリスは、戸惑っていたようだった。それも当然だ、俺のスキルのことについてまだ何も教えてなかったからな。
「俺は『スティール』で相手のスキルを奪うことができるんだ。だから、アリスの『魔源』も奪うことができるんじゃないかと思ってな」
「そ、そんなことができるんですか?!」
アリスは驚くように目を見開くと、体を前のめりにした。自分の命が助かることの可能性。それを目の前でぶら下げられて、無反応で居ろという方が無理というものだ。
「私は認めんからな! なんで今日会ったばかりの娘のために、そこまで体を張るんじゃ!」
そんな俺達の態度を見て、ルーナは慌てるように声を張り上げた。その目には涙すら浮かんでおり、俺のことを必死に止めようとしていた。
あれだけ俺を闇闘技場に引っ張っていったくせに、本当に危険になると心配してくれるんだなと思うと、少しの笑みが溢れてしまった。
「なんだろな、なんか他人な気がしないんだよ」
アリスが置かれている状況を知った。
アリスが騎士団達に向けられてる視線。あれは少し前まで俺がギルドの連中に向けられていたものと同じものだ。
ただ『魔源』というスキルを持っていただけ。それだけの理由できっと今まで辛い思いをしてきたのだろう。
俺もルーナに出会ってなかったらと思うと、ただ辛いだけの人生だったと思って死んだのかもしれない。
ルーナと俺の出会いとまでいかなくても、少しでも生きていて良かったと思って欲しい。
そんな綺麗な理由ではなく、ただ少し前の自分に手を伸ばすような感じだった。
『魔源』を持っていくからという理由で、ただ何も奪うことが出来ないという理由だけで殺されるなんて、たまったもんじゃないだろ?
「仮に、上手く言ったとしても、その娘の帰る場所はないぞ? 分かってるいのか?」
アリスの話とあの騎士団の態度を見る限り、例え『魔源』のスキルがなくなったとしても、国に帰ることはできないだろう。
おそらく、『魔源』を持っているといる『魔女の娘』というだけで、煙たがれるのだと思う。
だから、きっとアリスを助けてと今後安心して帰れる場所はないのだと思う。
それでも、昔の自分を知っているもの達がいる場所以外なら、そんなこともないだろう。
「アリス、俺が君のスキルを奪っても、王国に帰ることはできないと思う。いや、帰ることはできてもその後の未来はない。良くても監禁状態だろうな」
だから、ここでアリスを助けるなら、アリス居場所を見つけるまで、一緒に面倒を見る必要がある。
人を救うということは、救った後の責任も取らなくてはならない。
だから、それが見つかるまでは面倒を見ようと、心の中で決めた。
「俺が奪うのは君のスキルだけじゃない。王族としての後ろ盾も、これまでの人生、これからの人生を奪うことになる」
これまでのアリスの人生を捨てて、別の人生を歩ませることになる。その覚悟を共にしてもらう必要があった。
「それでもいいなら、君の『魔源』を俺に奪わせて欲しい」
それまでいうと、アリスは顔を赤くして俯いてしまった。プロポーズに似たような言葉を初対面な人に言われて、困ってしまったのかもしれない。
「で、でも、そうしたら、いつかは分かりませんけど、アイクさんが死んでしまうかもしれないじゃないですか」
「多分、アリスと俺の年齢差を考えると、数年は持つだろ。だから、その数年の内に魔力を常時食い続けるようなスキルを見つけるよ」
そこまで言うと、俺はルーナの方に振り返った。未だ納得してない目は赤く、涙を浮かべてこちらを睨んでいた。
お気に入りのおもちゃを取り上げられてたような顔。ルーナにとって俺は、本当にそんな存在なのかもしれないと思うと、失笑のような笑みが溢れてしまった。
「ルーナ、しばらくの旅の目標は俺が死なないで済むスキルを何者かかは奪うことだ。協力してくれるか?」
「……認めたわけではない。だから、もしもアイクの死因が『魔源』だったとき、私はこの娘を八つ裂にする。それでもいいなら、協力してやらんこともない!」
ルーナは強がるようにそう言うと、鼻を啜って胸を張った。泣いて喚かないのは、俺を困られないためなのか、単なる強がりなのか。
「おまっ、随分怖いこと言うな」
「だから、約束しろ。絶対に死ぬなよ。絶対に私置いていくな」
「分かったよ、約束する」
俺はそう言うとルーナを抱き寄せた。いつもなら、俺が手を伸ばすと頬を引っ張られると思って逃げるくせに、やけに素直に抱き抱えられていた。
もしかしたら、お互いに不安だったのかもしれない。
死んでしまうのでないかという可能性が互いの頭の中にはあったのだろう。
「……こんな人間は初めてだ」
俺がルーナから離れると、少しだけ名残惜しそうに、ルーナは俺の手に触れていた。その手とゆっくり離れるようにして、俺はアリスの目の前にたった。
「これだけ色々言っといてなんだけど、数発は『魔源』の以外のスキルを奪うことになると思う。それは勘弁してくれ」
俺は情けないような笑みを浮かべて、何度も使ったことあるスキル名を言葉にした。
「『スティール』」
こうして、俺は一人の王女の人生を奪った。
王族として、何不自由のなかった少女のこれまでとこれからを奪ったのだ。今後どれだけ善行を積んでも許されないのかもしれない。
ギルドでは『駄賊』と呼ばれていた。そして、それから力をつけて、俺はそんな二つ名を払拭した気でいた。
けれど、払拭した気でいたのは俺だけだったみたいだ。
どうやら、俺は『駄賊』の二つ名が似合う、悪い盗賊みたいだった。