「おい! 嘘だろ!」
俺は閉じられた扉を何度も強く叩いた。何度も何度も、手が腫れあがるほど叩いたのに、その扉はびくともしなかった。
「開けてくれよ! ギース! リン! エルド! ゾフィー!」
俺は喉から血が出るんじゃないかと思うほど、俺の仲間達の名前を呼んだ。いや、あいつらは俺のことを仲間だなんて思っていなかったのかもしれない。
今回の一件でそれが明確になった。
そして、明確になった矢先、俺は死ぬことになった。
「ギャアアアアアアアッ!」
俺のすぐ後ろでは俺の存在に気づいたドラゴンが咆哮していた。
俺達は最近ドラゴンが住み着いたと言われているダンジョンの最下層に来ていた。
そして、俺は仲間だと思っていた奴らに裏切られた。ドラゴンがいると言われている最下層の扉を開け、俺だけをこの部屋に閉じ込めたのだ。
いたずらにしては質が悪すぎる。しかも、あいつら俺を扉の奥に押した後、笑っていたように見えた。
信じたくはないけど、これが現実なのかもしれない。
あいつらはギルドのお荷物の俺を、排除したかったのだろう。
俺はギルドでは、ギルドのお荷物『駄賊のアイク』と呼ばれている。理由は簡単で、俺が盗賊のくせに何も盗めないからだ。
スキルである『スティール』。盗賊なら誰でも使えるそのスキルさえまともに使えない。
スキルが発動するだけで、何も奪えたことはないのだ。
そんな俺がドラゴンを目の前にして、できることなんかあるわけがなかった。
ドラゴンの中でも大型のドラゴン。全体を銀色に染めたそれは、遥か上から俺のことを見降ろしていた。
これから俺を殺す相手だというのに、その佇まいはやけに神々しく見えた。
「ちくしょう、おまえもおれを馬鹿にするのか?」
ギルドのお荷物だろうが、俺は盗賊だ。最後は盗賊らしく死んでやる。
俺は躍起になってそのドラゴンと向かい合った。どうせ死ぬなら、最後くらいは最強種のドラゴンから何か奪ってやる。冥土の土産として俺が貰っていってやる!
俺はドラゴンに手を伸ばすと、唯一使えるスキルを発動させた。
「スティール!!!」
俺の声に反応するように、盗賊スキルである『スティール』が発動した。しかし、当然俺の手の上には何も現れない。
失敗した。そんなのは分かりきっていた。
「スティール! スティール! スティール! スティール!!」
俺は狂ったようにドラゴンにスティールを連続で発動させた。当然、一度もそのスキルが成功することはなく、何も怒らない。
「スティール!!!」
俺は渾身の力を込めて、スキルを発動させ続けた。何度スキルを発動させたところで、何も起こらない。
それでも、ギルドでどれだけ馬鹿にされても、最後は盗賊らしく死にたかったのだ。
「はぁ、はぁ、はぁ」
ドラゴンは俺に抵抗する力がないことを分かっていたのか、俺から数度スティールをただ受けた。
そして、俺がスキルを使うのをやめたタイミングで、大きく口を開いた。
ドラゴンが大きな口を開けたとき、それは『ドラゴンブレス』を吐くときだ。ドラゴン特有の灼熱の炎。それを俺なんかに向けて打とうとしてくれているのだ。
俺のことを一人に冒険者として認めてくれたのかもしれない。死に際に、ドラゴンに認めてもらえた。それだけで十分じゃないか。
「ありがとうな」
俺はドラゴンの気遣いに感謝しながら、そのドラゴンに顔向けできるように最後まで抗うことにした。
「スティール!!!」
「え?」
その瞬間、目の前のドラゴンが眩しく光り輝いた。思わず、眩しさに目を強く閉じてしまう。
そして、その光が収まった先には、銀髪碧眼のロリっ子がいた。
それも、一糸まとわぬ姿で、今にも泣きそうな目でこちらを睨んでいる。
「う、うぅぅぅぅぅ~~」
「あ、あれ? ドラゴンは?」
目の前にいたはずの銀色のドラゴンが突然消えた。そして、その代わりと言わんばかりに、ロリっ子が現れた。
「……えせ」
「ん? えっと、お嬢ちゃん。どうしたんだ?」
「……返せ。返せ! 返せよぉ!」
目の前にいたロリっ子はぺたぺたと俺の所まで駆け寄ってくると、両手を使って俺をぽかぽかと叩いてきた。
あれだ、子供が喧嘩の時とかにやる可愛らしい叩き方だ。
「このチート能力野郎が! 返せ、私のスキルを返せ~!」
「ま、まてまて! チート野郎? スキルを返せ? 一体何のことを言ってるんだ?」
「ううぅぅ、返せよぉ! なんでそんな意地悪するんだよぉぉ!」
そのロリっ子はいよいよ俺の前でぺたんと座り込んでしまった。そして、わんわんと泣きだしてしまった。
目の前には全裸で泣いているロリっ子。そして、その場には青年が一人。
やばい、犯罪臭しかしないな。
「えっと、お嬢ちゃん。俺が君に何かしちゃったのかな?」
「惚けるなよぉ、私のスキルを奪っただろ?」
「奪った? スキルを奪うことなんかできるわけがないだろ?」
相手のスキルを奪う。そんなスキル聞いたことがない。
「だから私も戸惑っているんだ。こんなの初めてだ! このチート能力持ちめ!」
チート能力? このロリっ子は何を言っているんだ?
俺がこの子のスキルを奪ったというのか? いや、俺はそんなスキルを持っていない。
俺の持っているスキルは『スティール』のみ。その『スティール』は何も奪うことができない使えないスキルのはずだ。
その俺の『スティール』が、この子のスキルを奪ったとでもいうのか?
そこで、俺は一つの疑問に行き当たった。
そもそも、何も奪うことができない『スティール』なんて存在するのだろうか。もしかして、目に見えないだけで俺は無意識のうちに何かを奪っていたのか?
例えば、相手のスキルとか。
そんなこと、ありえるのだろうか。
俺は突然の出来事に驚きを隠せないでいた。
そして、このロリっ子との出会いが俺の人生を大きく変えることになるとは、この時の俺は思いもしなかった。
俺は閉じられた扉を何度も強く叩いた。何度も何度も、手が腫れあがるほど叩いたのに、その扉はびくともしなかった。
「開けてくれよ! ギース! リン! エルド! ゾフィー!」
俺は喉から血が出るんじゃないかと思うほど、俺の仲間達の名前を呼んだ。いや、あいつらは俺のことを仲間だなんて思っていなかったのかもしれない。
今回の一件でそれが明確になった。
そして、明確になった矢先、俺は死ぬことになった。
「ギャアアアアアアアッ!」
俺のすぐ後ろでは俺の存在に気づいたドラゴンが咆哮していた。
俺達は最近ドラゴンが住み着いたと言われているダンジョンの最下層に来ていた。
そして、俺は仲間だと思っていた奴らに裏切られた。ドラゴンがいると言われている最下層の扉を開け、俺だけをこの部屋に閉じ込めたのだ。
いたずらにしては質が悪すぎる。しかも、あいつら俺を扉の奥に押した後、笑っていたように見えた。
信じたくはないけど、これが現実なのかもしれない。
あいつらはギルドのお荷物の俺を、排除したかったのだろう。
俺はギルドでは、ギルドのお荷物『駄賊のアイク』と呼ばれている。理由は簡単で、俺が盗賊のくせに何も盗めないからだ。
スキルである『スティール』。盗賊なら誰でも使えるそのスキルさえまともに使えない。
スキルが発動するだけで、何も奪えたことはないのだ。
そんな俺がドラゴンを目の前にして、できることなんかあるわけがなかった。
ドラゴンの中でも大型のドラゴン。全体を銀色に染めたそれは、遥か上から俺のことを見降ろしていた。
これから俺を殺す相手だというのに、その佇まいはやけに神々しく見えた。
「ちくしょう、おまえもおれを馬鹿にするのか?」
ギルドのお荷物だろうが、俺は盗賊だ。最後は盗賊らしく死んでやる。
俺は躍起になってそのドラゴンと向かい合った。どうせ死ぬなら、最後くらいは最強種のドラゴンから何か奪ってやる。冥土の土産として俺が貰っていってやる!
俺はドラゴンに手を伸ばすと、唯一使えるスキルを発動させた。
「スティール!!!」
俺の声に反応するように、盗賊スキルである『スティール』が発動した。しかし、当然俺の手の上には何も現れない。
失敗した。そんなのは分かりきっていた。
「スティール! スティール! スティール! スティール!!」
俺は狂ったようにドラゴンにスティールを連続で発動させた。当然、一度もそのスキルが成功することはなく、何も怒らない。
「スティール!!!」
俺は渾身の力を込めて、スキルを発動させ続けた。何度スキルを発動させたところで、何も起こらない。
それでも、ギルドでどれだけ馬鹿にされても、最後は盗賊らしく死にたかったのだ。
「はぁ、はぁ、はぁ」
ドラゴンは俺に抵抗する力がないことを分かっていたのか、俺から数度スティールをただ受けた。
そして、俺がスキルを使うのをやめたタイミングで、大きく口を開いた。
ドラゴンが大きな口を開けたとき、それは『ドラゴンブレス』を吐くときだ。ドラゴン特有の灼熱の炎。それを俺なんかに向けて打とうとしてくれているのだ。
俺のことを一人に冒険者として認めてくれたのかもしれない。死に際に、ドラゴンに認めてもらえた。それだけで十分じゃないか。
「ありがとうな」
俺はドラゴンの気遣いに感謝しながら、そのドラゴンに顔向けできるように最後まで抗うことにした。
「スティール!!!」
「え?」
その瞬間、目の前のドラゴンが眩しく光り輝いた。思わず、眩しさに目を強く閉じてしまう。
そして、その光が収まった先には、銀髪碧眼のロリっ子がいた。
それも、一糸まとわぬ姿で、今にも泣きそうな目でこちらを睨んでいる。
「う、うぅぅぅぅぅ~~」
「あ、あれ? ドラゴンは?」
目の前にいたはずの銀色のドラゴンが突然消えた。そして、その代わりと言わんばかりに、ロリっ子が現れた。
「……えせ」
「ん? えっと、お嬢ちゃん。どうしたんだ?」
「……返せ。返せ! 返せよぉ!」
目の前にいたロリっ子はぺたぺたと俺の所まで駆け寄ってくると、両手を使って俺をぽかぽかと叩いてきた。
あれだ、子供が喧嘩の時とかにやる可愛らしい叩き方だ。
「このチート能力野郎が! 返せ、私のスキルを返せ~!」
「ま、まてまて! チート野郎? スキルを返せ? 一体何のことを言ってるんだ?」
「ううぅぅ、返せよぉ! なんでそんな意地悪するんだよぉぉ!」
そのロリっ子はいよいよ俺の前でぺたんと座り込んでしまった。そして、わんわんと泣きだしてしまった。
目の前には全裸で泣いているロリっ子。そして、その場には青年が一人。
やばい、犯罪臭しかしないな。
「えっと、お嬢ちゃん。俺が君に何かしちゃったのかな?」
「惚けるなよぉ、私のスキルを奪っただろ?」
「奪った? スキルを奪うことなんかできるわけがないだろ?」
相手のスキルを奪う。そんなスキル聞いたことがない。
「だから私も戸惑っているんだ。こんなの初めてだ! このチート能力持ちめ!」
チート能力? このロリっ子は何を言っているんだ?
俺がこの子のスキルを奪ったというのか? いや、俺はそんなスキルを持っていない。
俺の持っているスキルは『スティール』のみ。その『スティール』は何も奪うことができない使えないスキルのはずだ。
その俺の『スティール』が、この子のスキルを奪ったとでもいうのか?
そこで、俺は一つの疑問に行き当たった。
そもそも、何も奪うことができない『スティール』なんて存在するのだろうか。もしかして、目に見えないだけで俺は無意識のうちに何かを奪っていたのか?
例えば、相手のスキルとか。
そんなこと、ありえるのだろうか。
俺は突然の出来事に驚きを隠せないでいた。
そして、このロリっ子との出会いが俺の人生を大きく変えることになるとは、この時の俺は思いもしなかった。