「アイク、リリ。こっちに座ってくれ」
俺たちはクエストの達成報告の後、ギルド長のガリアに連れられて応接室に通されてしまった。
以前はワイバーンの調査をして来いとのことだったが、今回はどんなクエストを依頼されるのか。
少しの不安が混じりに応接室に入ると、そこには初めて見る人が俺たちの正面に腰かけていた。
「ガリア、この人たちが条件に該当する冒険者の方か?」
正面に座っていたのは、冒険者ギルドにいるにしては畏まった服装をした男だった。年齢はガリアと同い年くらいだろうか。短髪の白髪頭はセットでもしたかのように整えられていた。
上下黒の服で決め込んで、皺ひとつない服装。俺たちも人のことを言えた義理ではないが、俺達以上に冒険者らしくない格好だった。
商人にしても、しっかりとし過ぎている気がする。
「お前が言った条件はすべて満たすと思うぞ。ほら、とりあえず、二人とも座ってくれ」
俺たちはガリアに言われて、その男の正面に腰を下ろした。
俺の隣にリリが座って、俺の上にはポチが飛び乗ってきた。相変わらず、ポチは俺たちの話などには興味なしと言った様子で、俺の太ももの上で丸くなって寝ようとしている。
ガリアは俺たちを座らせると、その男の隣を下ろした。
「『道化師の集い』に個人的な依頼がある。話を聞いてくれるか?」
「まて、ガリア。本当に条件を満たしているのか? 随分と若いような気がするが」
「あの、条件って何のことですか?」
応接室に連れてこられるなり、置いてけぼりで話が進んでいる気がしたので、聞いてみると、ガリアは一度こちらに顔を向けた後、静かに話を始めた。
「少数精鋭で、どこの国からも個人的な依頼を受けた実績はない。冒険者、パーティランク共にA級。それでいて、潜入を得意とするパーティ。このパーティの特徴をそのまま言ったような条件だぞ?」
「え、俺たちが潜入を得意とするなんて言いましたっけ?」
「【潜伏】のスキルを持っているのは、貴重だからな。クエストの報告書やミリアからの話から、潜入を得意とするパーティであることは知っている」
そう言われて、今まで少しでも一緒に行動をしたパーティのメンバーで、【潜伏】のスキルを使っている人に会ったことがなかったことを思い出した。
まさか、そんな情報からも俺たちのことを評価しているとは思わなかった。
冒険者ギルド的には、俺たちのことをそんなふうに評価してたのか。
「実力は私が保証しよう」
「……ガリアがそこまで言うなら分かった」
ガリアの言葉を聞いて気持ちを固めたのか、その男はこちらを向いて姿勢を正した。それから咳ばらいを一つすると、ガリアと話していた態度とは違う丁寧な口調で話を続けた。
「しばらく待たせて申し訳ありませんでした。折り入って、秘密裏に依頼をさせてください」
「秘密裏に、ですか」
「事情があって詳しくは言えないのですが、ある女性が誘拐されてしまいまして。その女性を救い出していただきたいのです」
「誘拐ですか? それって、冒険者の管轄ではないのでは?」
誘拐の対応などは憲兵とかが対応する問題な気がする。少なくとも、冒険者ギルドが扱う問題ではないのは確かなはずだ。
「そうだ。だから、これは冒険者ギルドを通しての依頼ではない。至って個人的な依頼だ」
「個人的って……もしかしなくても、大事にはできないことって意味ですよね」
「ノーコメントだ」
実質YESという意味合いの返答。これ以上のことを聞くなら、きっと断ることはできなくなるのだろう。
そうは言っても、ことがことだ。なんか過去に国に個人的な依頼をされたことがないかを気にしていたし、誘拐された女性というのも国絡みな人物のような気がする。
危険な橋は渡るべきではないのは分かってはいるが、冒険者に頼む時点で結構最悪な状況に陥っているのかもしれない。
「それで、頼まれてくれるか?」
「俺たちが断った場合って、次の当てはあるんですか?」
「いや、ないな。そして、断られると、結構まずいことになる。……かなりな」
ガリアこれまで見たことがないくらいに、真剣な顔つきになっていた。つまり、俺たちの選択としては、ここに連れてこられてしまった時点で一択に絞られていたということだろう。
「『道化師の集い』のお二方。ぜひ、力を貸していただけませんか? お礼はもちろん、普通の報酬額では済まないほどの額をお支払いいたします」
「……とりあえず、話を聞いてもいいですか?」
どのみち断ることはできないのだろう。事情はとにかくとして、女性が捕らわれているという状況を放置することもできないしな。
俺は覚悟を決めて、話の続きを聞くことにしたのだった。
俺たちはクエストの達成報告の後、ギルド長のガリアに連れられて応接室に通されてしまった。
以前はワイバーンの調査をして来いとのことだったが、今回はどんなクエストを依頼されるのか。
少しの不安が混じりに応接室に入ると、そこには初めて見る人が俺たちの正面に腰かけていた。
「ガリア、この人たちが条件に該当する冒険者の方か?」
正面に座っていたのは、冒険者ギルドにいるにしては畏まった服装をした男だった。年齢はガリアと同い年くらいだろうか。短髪の白髪頭はセットでもしたかのように整えられていた。
上下黒の服で決め込んで、皺ひとつない服装。俺たちも人のことを言えた義理ではないが、俺達以上に冒険者らしくない格好だった。
商人にしても、しっかりとし過ぎている気がする。
「お前が言った条件はすべて満たすと思うぞ。ほら、とりあえず、二人とも座ってくれ」
俺たちはガリアに言われて、その男の正面に腰を下ろした。
俺の隣にリリが座って、俺の上にはポチが飛び乗ってきた。相変わらず、ポチは俺たちの話などには興味なしと言った様子で、俺の太ももの上で丸くなって寝ようとしている。
ガリアは俺たちを座らせると、その男の隣を下ろした。
「『道化師の集い』に個人的な依頼がある。話を聞いてくれるか?」
「まて、ガリア。本当に条件を満たしているのか? 随分と若いような気がするが」
「あの、条件って何のことですか?」
応接室に連れてこられるなり、置いてけぼりで話が進んでいる気がしたので、聞いてみると、ガリアは一度こちらに顔を向けた後、静かに話を始めた。
「少数精鋭で、どこの国からも個人的な依頼を受けた実績はない。冒険者、パーティランク共にA級。それでいて、潜入を得意とするパーティ。このパーティの特徴をそのまま言ったような条件だぞ?」
「え、俺たちが潜入を得意とするなんて言いましたっけ?」
「【潜伏】のスキルを持っているのは、貴重だからな。クエストの報告書やミリアからの話から、潜入を得意とするパーティであることは知っている」
そう言われて、今まで少しでも一緒に行動をしたパーティのメンバーで、【潜伏】のスキルを使っている人に会ったことがなかったことを思い出した。
まさか、そんな情報からも俺たちのことを評価しているとは思わなかった。
冒険者ギルド的には、俺たちのことをそんなふうに評価してたのか。
「実力は私が保証しよう」
「……ガリアがそこまで言うなら分かった」
ガリアの言葉を聞いて気持ちを固めたのか、その男はこちらを向いて姿勢を正した。それから咳ばらいを一つすると、ガリアと話していた態度とは違う丁寧な口調で話を続けた。
「しばらく待たせて申し訳ありませんでした。折り入って、秘密裏に依頼をさせてください」
「秘密裏に、ですか」
「事情があって詳しくは言えないのですが、ある女性が誘拐されてしまいまして。その女性を救い出していただきたいのです」
「誘拐ですか? それって、冒険者の管轄ではないのでは?」
誘拐の対応などは憲兵とかが対応する問題な気がする。少なくとも、冒険者ギルドが扱う問題ではないのは確かなはずだ。
「そうだ。だから、これは冒険者ギルドを通しての依頼ではない。至って個人的な依頼だ」
「個人的って……もしかしなくても、大事にはできないことって意味ですよね」
「ノーコメントだ」
実質YESという意味合いの返答。これ以上のことを聞くなら、きっと断ることはできなくなるのだろう。
そうは言っても、ことがことだ。なんか過去に国に個人的な依頼をされたことがないかを気にしていたし、誘拐された女性というのも国絡みな人物のような気がする。
危険な橋は渡るべきではないのは分かってはいるが、冒険者に頼む時点で結構最悪な状況に陥っているのかもしれない。
「それで、頼まれてくれるか?」
「俺たちが断った場合って、次の当てはあるんですか?」
「いや、ないな。そして、断られると、結構まずいことになる。……かなりな」
ガリアこれまで見たことがないくらいに、真剣な顔つきになっていた。つまり、俺たちの選択としては、ここに連れてこられてしまった時点で一択に絞られていたということだろう。
「『道化師の集い』のお二方。ぜひ、力を貸していただけませんか? お礼はもちろん、普通の報酬額では済まないほどの額をお支払いいたします」
「……とりあえず、話を聞いてもいいですか?」
どのみち断ることはできないのだろう。事情はとにかくとして、女性が捕らわれているという状況を放置することもできないしな。
俺は覚悟を決めて、話の続きを聞くことにしたのだった。