「……どうしたものか」
場所は変わって冒険者ギルドの応接室。向かいにはミリアとガリアが座っており、俺の隣にはリリが、俺の太股の上にはポチがいた。
頭を悩ませる二人など気にしないといった態度で、ポチは俺の太股の上で眠ってしまっていた。
その佇まいはさすがフェンリル……というものではなく、ただの子犬のそれだった。
そんなポチの温もりに心を癒されながら、俺は少しだけ気まずそうに目の前の二人に向けて口を開いた。
「えっと……倒してこなかった方が良かったですかね?」
もっと諸手を挙げて喜ばれると思っていたのだが、目の前に座る二人は必死の形相で何かを考えこんでいた。
さすがに、これ以上この空気には耐えられそうにない。そう思って、こちらから口を開いた。
「いや、そんなことはない。ワイバーン討伐の依頼料が抑えられた分、助かってはいるんだ」
ガリアはそんな言葉の後に、ワイバーンの討伐してきた分の報酬も、今回の依頼の報酬に少し加えることを教えてくれた。
どうやら、俺達がワイバーンを倒してきたことは問題ではないらしい。
となると、何か別のことに頭を悩ませているのだろうか?
「正直、今回の依頼で冒険者ランクと、パーティランクをBにしようと考えていたんだ」
「え、そうだったんですか。あ、ありがとうございます」
冒険者ランクが二段階も一気に上がるなんて、普通なら考えられないスピードでのランクアップだ。
俺はリリに目配せをした後、二人してガリアに頭を下げた。
しかし、頭を上げた俺たちの前には、何か納得いっていなさそうなガリアとミリアの顔があった。
どうやら、話はまだ終わりではないようだ。
「ワイバーンを倒して、フェンリルを使い魔にしているパーティのランクをBにするっているわけには……」
「D級からA級にランクアップか。さすがに、前例がなさすぎる。何よりも、受けているクエスト数が少なすぎる」
ミリアが持ってきた資料には、俺たちが受けてきたクエストが並べられていた。
俺が受けたクエストの数は、昔ソロで受けていた分も合わせて十数個。リリの場合は今回が二回目のクエストだ。
これしかクエストを受けていない冒険者の冒険者ランクをBにしてくれるのだ。十分すぎるくらいの配慮だと言えるだろう。
そう思っているのは俺達くらいで、目の前にいる二人は頭を悩ませ続けていた。
「でも、ステータスだけ見れば十分……ステータス?」
そこでふと、ミリアが何かに気づいたように肩をピクリと動かした。
何かを確認するようで、訝し気でもあるような視線。ミリアはそんな目で俺たちのことを見ると、言葉を続けた。
「ちょっと、待ってください。タルト山脈って、馬車途中までしか行きませんよね? 確か、冒険者ランクがD級だと結構手前で降ろされるんじゃないですか?」
「はい。なので、降りてからは結構歩きましたね。魔物もいたので、苦労しました」
「……あの山を、登ったのか?」
「え、はい」
ガリアは微かに眉間に皺を入れながら、呆気にとられるような表情でこちらを見ていた。怒っているというよりも、信じられないと言いたげに小さく開けた口を開けっ放しにしている。
いや、ワイバーンの調査をするためには必要なことだったし。
ん? ああ、そっか。本来はそこまでする必要がなかったんだった。
「……ガリアさん。ちょっと、水晶持ってきますね」
「あ、ああ」
ミリアは俺たちのやり取りを見て、急に席を立ってカウンターの方に向かって行った。そして、すぐに別の職員を連れて二つの水晶を俺とリリの目の前に置いた。
「アイクさん、リリさん。さ、上に手を置いてください」
まるで、何かを分かりきっているようなミリアに促されて、俺とリリはその水晶の上にそっと手を置いた。
すると、そこに映し出された水晶には、次のような情報が表示されていた。
【名前 アイク】
【ジョブ 道化師】
【レベル 51】
【冒険者ランク D】
【ステータス 体力 38100魔力 41000 攻撃力 38500 防御力 37650 素早さ 47260 器用さ 44280 魅力 43200】
【ユニークスキル:道化師 全属性魔法 助手】
【アルティメットスキル:アイテムボックス(無限・時間停止) 投てきS 近接格闘S 剣技S 気配感知S 生産S 鑑定S 錬金S】
【名前 リリ】
【ジョブ 助手】
【レベル 43】
【冒険者ランク D】
【ステータス 体力 26670 魔力 28700 攻撃力 27000 防御力 26400 素早さ 33000 器用さ 30100 魅力 30240】
【ユニークスキル:助手】
【スキル:アイテムボックス 投てきB 近接格闘B 剣技B 気配感知B 鑑定B 錬金C】
水晶に生じされたステータスに目を通して、俺は感心するような声を漏らしていた。
「おー、また随分とステータスもレベルも上がったな」
「あれだけ行と帰りで魔物倒しましたもんね! それでも、こんなに上がるとは思いませんでした!」
俺たちは互いのステータスを見ながら、二人で盛り上がっていた。
リリの成長と自分の成長に驚きながら、二人で称賛し合っているのに対して、目の前に座る二人は、俺たちのステータスを見て言葉を失っていた。
しばらく、リリとそんなふうに盛り上がっていると、ガリアが短く息を吐いてすっと立ち上がった。
「アイク、リリ。本日をもって、二人の冒険者ランク、並びに『道化師の集い』のパーティランクをAとする」
「「……え?」」
ガリアはそこまで言うと、仕事をやりきったような顔をしてその場を後にした。
そこに残されていたのは目をぱちくりとさせている俺たちと、驚くことに慣れてしまったようなミリアがいた。
「くぁ~」
そして、ポチはそんな俺たちの事情など知らないと言った様子で、俺の膝の上で大きなあくびを一つしていた。
こうして、俺たちの冒険者ランクとパーティランクはAになったのだった。
……一気に三段階アップって、マジですか?
場所は変わって冒険者ギルドの応接室。向かいにはミリアとガリアが座っており、俺の隣にはリリが、俺の太股の上にはポチがいた。
頭を悩ませる二人など気にしないといった態度で、ポチは俺の太股の上で眠ってしまっていた。
その佇まいはさすがフェンリル……というものではなく、ただの子犬のそれだった。
そんなポチの温もりに心を癒されながら、俺は少しだけ気まずそうに目の前の二人に向けて口を開いた。
「えっと……倒してこなかった方が良かったですかね?」
もっと諸手を挙げて喜ばれると思っていたのだが、目の前に座る二人は必死の形相で何かを考えこんでいた。
さすがに、これ以上この空気には耐えられそうにない。そう思って、こちらから口を開いた。
「いや、そんなことはない。ワイバーン討伐の依頼料が抑えられた分、助かってはいるんだ」
ガリアはそんな言葉の後に、ワイバーンの討伐してきた分の報酬も、今回の依頼の報酬に少し加えることを教えてくれた。
どうやら、俺達がワイバーンを倒してきたことは問題ではないらしい。
となると、何か別のことに頭を悩ませているのだろうか?
「正直、今回の依頼で冒険者ランクと、パーティランクをBにしようと考えていたんだ」
「え、そうだったんですか。あ、ありがとうございます」
冒険者ランクが二段階も一気に上がるなんて、普通なら考えられないスピードでのランクアップだ。
俺はリリに目配せをした後、二人してガリアに頭を下げた。
しかし、頭を上げた俺たちの前には、何か納得いっていなさそうなガリアとミリアの顔があった。
どうやら、話はまだ終わりではないようだ。
「ワイバーンを倒して、フェンリルを使い魔にしているパーティのランクをBにするっているわけには……」
「D級からA級にランクアップか。さすがに、前例がなさすぎる。何よりも、受けているクエスト数が少なすぎる」
ミリアが持ってきた資料には、俺たちが受けてきたクエストが並べられていた。
俺が受けたクエストの数は、昔ソロで受けていた分も合わせて十数個。リリの場合は今回が二回目のクエストだ。
これしかクエストを受けていない冒険者の冒険者ランクをBにしてくれるのだ。十分すぎるくらいの配慮だと言えるだろう。
そう思っているのは俺達くらいで、目の前にいる二人は頭を悩ませ続けていた。
「でも、ステータスだけ見れば十分……ステータス?」
そこでふと、ミリアが何かに気づいたように肩をピクリと動かした。
何かを確認するようで、訝し気でもあるような視線。ミリアはそんな目で俺たちのことを見ると、言葉を続けた。
「ちょっと、待ってください。タルト山脈って、馬車途中までしか行きませんよね? 確か、冒険者ランクがD級だと結構手前で降ろされるんじゃないですか?」
「はい。なので、降りてからは結構歩きましたね。魔物もいたので、苦労しました」
「……あの山を、登ったのか?」
「え、はい」
ガリアは微かに眉間に皺を入れながら、呆気にとられるような表情でこちらを見ていた。怒っているというよりも、信じられないと言いたげに小さく開けた口を開けっ放しにしている。
いや、ワイバーンの調査をするためには必要なことだったし。
ん? ああ、そっか。本来はそこまでする必要がなかったんだった。
「……ガリアさん。ちょっと、水晶持ってきますね」
「あ、ああ」
ミリアは俺たちのやり取りを見て、急に席を立ってカウンターの方に向かって行った。そして、すぐに別の職員を連れて二つの水晶を俺とリリの目の前に置いた。
「アイクさん、リリさん。さ、上に手を置いてください」
まるで、何かを分かりきっているようなミリアに促されて、俺とリリはその水晶の上にそっと手を置いた。
すると、そこに映し出された水晶には、次のような情報が表示されていた。
【名前 アイク】
【ジョブ 道化師】
【レベル 51】
【冒険者ランク D】
【ステータス 体力 38100魔力 41000 攻撃力 38500 防御力 37650 素早さ 47260 器用さ 44280 魅力 43200】
【ユニークスキル:道化師 全属性魔法 助手】
【アルティメットスキル:アイテムボックス(無限・時間停止) 投てきS 近接格闘S 剣技S 気配感知S 生産S 鑑定S 錬金S】
【名前 リリ】
【ジョブ 助手】
【レベル 43】
【冒険者ランク D】
【ステータス 体力 26670 魔力 28700 攻撃力 27000 防御力 26400 素早さ 33000 器用さ 30100 魅力 30240】
【ユニークスキル:助手】
【スキル:アイテムボックス 投てきB 近接格闘B 剣技B 気配感知B 鑑定B 錬金C】
水晶に生じされたステータスに目を通して、俺は感心するような声を漏らしていた。
「おー、また随分とステータスもレベルも上がったな」
「あれだけ行と帰りで魔物倒しましたもんね! それでも、こんなに上がるとは思いませんでした!」
俺たちは互いのステータスを見ながら、二人で盛り上がっていた。
リリの成長と自分の成長に驚きながら、二人で称賛し合っているのに対して、目の前に座る二人は、俺たちのステータスを見て言葉を失っていた。
しばらく、リリとそんなふうに盛り上がっていると、ガリアが短く息を吐いてすっと立ち上がった。
「アイク、リリ。本日をもって、二人の冒険者ランク、並びに『道化師の集い』のパーティランクをAとする」
「「……え?」」
ガリアはそこまで言うと、仕事をやりきったような顔をしてその場を後にした。
そこに残されていたのは目をぱちくりとさせている俺たちと、驚くことに慣れてしまったようなミリアがいた。
「くぁ~」
そして、ポチはそんな俺たちの事情など知らないと言った様子で、俺の膝の上で大きなあくびを一つしていた。
こうして、俺たちの冒険者ランクとパーティランクはAになったのだった。
……一気に三段階アップって、マジですか?