「倒しちゃいましたね」
「……だな」
俺たちは冒険者ギルドからの依頼で、タルト山脈で暴れているというワイバーンの偵察に来ていた。
しかし、偵察中に謎のもふもふが襲われているところに遭遇してしまい、俺とリリはワイバーンに切りかかってしまった。
そして、もふもふを守ろうとした結果、偵察をするはずだったワイバーンを倒してしまった。
「そういえば、ガリアさんって、俺たちのステータスを見てからこのクエストを依頼してきたよな」
「……そういえば、そうでしたね」
「もしかして、俺たちのステータスなら、ワイバーンを倒せると見込んで依頼してきたのか?」
ガリアの言葉の裏を読めば、俺たちが現地に向かうということは安易に想像できるだろう。
そうなると、俺たちがワイバーンにやられてしまう危険性だってでてくる。それだというのに、その依頼をしてきたということは、俺たちならワイバーンを倒せると見込んでいたということだ。
もしかしたら、調査という名の討伐が本当の依頼だったとでもいうのだろうか。
「十分にあり得ますね」
「だよな。……ガリアさん、一体どこまで考えているんだ」
ただの強面のギルドの長かと思っていたが、ただ体が大きいだけではなく頭もかなり切れるらしい。
見事にガリアの手のひらで踊らされた気分だ。
「あれ? でも、よく見ると結構傷だらけだな、このワイバーン」
クエストを達成した証として、倒したワイバーンをアイテムボックスに入れていると、その体の表面に多くの傷がつけられていることが分かった。
掻き傷や、何かが噛みついたよう跡。それと……所々凍っている?
そういえば、俺たちが攻撃を仕掛ける前の状態を思い出すと、ワイバーンが万全な状態ではなかったような気がしてきた。
一体、誰が……。
「くぅーん」
「ん?」
そんなことを考えていると、俺の足元に白いもふもふが寄り添ってきていた。甘えるような声で体を擦りつけられて、俺は自分の顔が緩んだのが分かった。
「ふふふっ、もしかして、助けてもらったから懐いているんじゃないですか?」
「やっぱり、そう思うか?」
和むように口元を緩ませているリリは、そのもふもふに見惚れながら、そんなことを口にした。
こんな可愛い生き物に懐かれて嬉しくないはずがなく、俺もその気になりながら、白いもふもふの頭をそっと撫でた。
俺に撫でられて嬉しそうに目を細める表情が愛おしく、俺たちは完全に胸を射抜かれてしまった。
「アイクさん、この子飼っちゃいませんか?」
「え? 飼う? でも、この子魔物なんだよな? ……いや、魔物なのか?」
タルト山脈にいたということは、おそらく野生の魔物ということになる。さすがに、魔物を飼うわけにはいかないだろう。
いや、本当に魔物なのか?
小さい顔と真ん丸した瞳は、まるで魔物の遺伝子を感じない。
「でしたら、テイムして使い魔にしましょうよ」
「いや、俺そんなスキルないぞ?」
「できますよ! だって、アイクさん【道化師】なんですから、使い魔がいない方がおかしいくらいです」
どうやら、リリは俺以上にこの白いもふもふに魅了されてしまっているらしい。リリは目をキラキラとさせて、顔をずいっと近づけながらそんなことを言ってきた。。
そんなリリから視線を外して、ちらりとその白いもふもふの方に視線を向ける。
こんな魔物が多い所にこの子を放置でもしたら、数分後には他の魔物に襲われてしまうことだろう。
こんな可愛らしい生き物が、魔物に襲われる未来なんて想像したくもなかった。
「そうだよな。確かに、こんな所に残して魔物に襲われたら大変だもんな。なぁ、お前は俺たちと一緒に来たいか?」
「わんっ!」
俺の言葉を理解したかのような反応をして、その白いもふもふは尻尾をぶんぶんと振っていた。
そんな可愛らしい反応をされてしまっては、ここで置いていくわけにはいかないだろう。
俺は微笑を漏らしながら、手のひらをその白いもふもふの方に向けた。
イメージするのは【道化師】の中にあるスキルを引っ張り出す感覚。使い魔と契約する【テイム】のスキルを欲するように探し出すと、目の前にそのスキルを垂らされたような感覚があった。
俺が【テイム】を使用すると、俺の手のひらが微かに光ったようだった。それと同じ光がポチの首元に光って、茶色い革のような首輪が形成されたのが分かった。
「……【テイム】。うん、上手くいったっぽいな。名前はそうだな……犬みたいだし、ポチにしようか」
ポチは嫌がることなくその名前と首輪を受け入れたようで、その首輪がきゅうと首元に付けられたことで契約が完了したらしかった。
「さて、念のために【鑑定】をしておくか」
使い魔は冒険者と共に街に入ることができる。でも、その使い魔がなんなのか聞かれたときに、堪えられないというのはさすがにマズいだろう。
そう思って、俺はポチに向かって【鑑定】のスキルを使用した。
すると、俺の頭にはポチのステータス一覧が流れてきた。
【鑑定結果】
【種族 フェンリル】
【レベル 3】
【ステータス 体力 9700 魔力 8600 攻撃力 7800 防御力 7900 素早さ 10000器用さ 5500 魅力 8400】
【スキル:硬化B 突進A 噛砕B 探知A】
「ん?」
ステータスがえらく高い気がする。このレベルでこのステータスとなると、かなりの優良株だと言えるだろう。
しかし、どうしてもそこ以外に気になってしまう箇所があった。
【種族 フェンリル】
フェンリルって、神話か何かに出てくる怪物的な奴だった気が……
「ポチー、よーし、よしよし」
「きゃん、きゃんっ!」
そんな俺の前のまえでは、リリがポチと戯れていた。
可愛い女の子と子犬が遊んでいるという状況はとても絵になるが、今はそんな景色を見て和んでいられる状況ではなかった。
そんな目の前の状況と、頭に流れてきた鑑定結果を前に、俺はしばらく脳がフリーズしたように固まってしまったのだった。
「……だな」
俺たちは冒険者ギルドからの依頼で、タルト山脈で暴れているというワイバーンの偵察に来ていた。
しかし、偵察中に謎のもふもふが襲われているところに遭遇してしまい、俺とリリはワイバーンに切りかかってしまった。
そして、もふもふを守ろうとした結果、偵察をするはずだったワイバーンを倒してしまった。
「そういえば、ガリアさんって、俺たちのステータスを見てからこのクエストを依頼してきたよな」
「……そういえば、そうでしたね」
「もしかして、俺たちのステータスなら、ワイバーンを倒せると見込んで依頼してきたのか?」
ガリアの言葉の裏を読めば、俺たちが現地に向かうということは安易に想像できるだろう。
そうなると、俺たちがワイバーンにやられてしまう危険性だってでてくる。それだというのに、その依頼をしてきたということは、俺たちならワイバーンを倒せると見込んでいたということだ。
もしかしたら、調査という名の討伐が本当の依頼だったとでもいうのだろうか。
「十分にあり得ますね」
「だよな。……ガリアさん、一体どこまで考えているんだ」
ただの強面のギルドの長かと思っていたが、ただ体が大きいだけではなく頭もかなり切れるらしい。
見事にガリアの手のひらで踊らされた気分だ。
「あれ? でも、よく見ると結構傷だらけだな、このワイバーン」
クエストを達成した証として、倒したワイバーンをアイテムボックスに入れていると、その体の表面に多くの傷がつけられていることが分かった。
掻き傷や、何かが噛みついたよう跡。それと……所々凍っている?
そういえば、俺たちが攻撃を仕掛ける前の状態を思い出すと、ワイバーンが万全な状態ではなかったような気がしてきた。
一体、誰が……。
「くぅーん」
「ん?」
そんなことを考えていると、俺の足元に白いもふもふが寄り添ってきていた。甘えるような声で体を擦りつけられて、俺は自分の顔が緩んだのが分かった。
「ふふふっ、もしかして、助けてもらったから懐いているんじゃないですか?」
「やっぱり、そう思うか?」
和むように口元を緩ませているリリは、そのもふもふに見惚れながら、そんなことを口にした。
こんな可愛い生き物に懐かれて嬉しくないはずがなく、俺もその気になりながら、白いもふもふの頭をそっと撫でた。
俺に撫でられて嬉しそうに目を細める表情が愛おしく、俺たちは完全に胸を射抜かれてしまった。
「アイクさん、この子飼っちゃいませんか?」
「え? 飼う? でも、この子魔物なんだよな? ……いや、魔物なのか?」
タルト山脈にいたということは、おそらく野生の魔物ということになる。さすがに、魔物を飼うわけにはいかないだろう。
いや、本当に魔物なのか?
小さい顔と真ん丸した瞳は、まるで魔物の遺伝子を感じない。
「でしたら、テイムして使い魔にしましょうよ」
「いや、俺そんなスキルないぞ?」
「できますよ! だって、アイクさん【道化師】なんですから、使い魔がいない方がおかしいくらいです」
どうやら、リリは俺以上にこの白いもふもふに魅了されてしまっているらしい。リリは目をキラキラとさせて、顔をずいっと近づけながらそんなことを言ってきた。。
そんなリリから視線を外して、ちらりとその白いもふもふの方に視線を向ける。
こんな魔物が多い所にこの子を放置でもしたら、数分後には他の魔物に襲われてしまうことだろう。
こんな可愛らしい生き物が、魔物に襲われる未来なんて想像したくもなかった。
「そうだよな。確かに、こんな所に残して魔物に襲われたら大変だもんな。なぁ、お前は俺たちと一緒に来たいか?」
「わんっ!」
俺の言葉を理解したかのような反応をして、その白いもふもふは尻尾をぶんぶんと振っていた。
そんな可愛らしい反応をされてしまっては、ここで置いていくわけにはいかないだろう。
俺は微笑を漏らしながら、手のひらをその白いもふもふの方に向けた。
イメージするのは【道化師】の中にあるスキルを引っ張り出す感覚。使い魔と契約する【テイム】のスキルを欲するように探し出すと、目の前にそのスキルを垂らされたような感覚があった。
俺が【テイム】を使用すると、俺の手のひらが微かに光ったようだった。それと同じ光がポチの首元に光って、茶色い革のような首輪が形成されたのが分かった。
「……【テイム】。うん、上手くいったっぽいな。名前はそうだな……犬みたいだし、ポチにしようか」
ポチは嫌がることなくその名前と首輪を受け入れたようで、その首輪がきゅうと首元に付けられたことで契約が完了したらしかった。
「さて、念のために【鑑定】をしておくか」
使い魔は冒険者と共に街に入ることができる。でも、その使い魔がなんなのか聞かれたときに、堪えられないというのはさすがにマズいだろう。
そう思って、俺はポチに向かって【鑑定】のスキルを使用した。
すると、俺の頭にはポチのステータス一覧が流れてきた。
【鑑定結果】
【種族 フェンリル】
【レベル 3】
【ステータス 体力 9700 魔力 8600 攻撃力 7800 防御力 7900 素早さ 10000器用さ 5500 魅力 8400】
【スキル:硬化B 突進A 噛砕B 探知A】
「ん?」
ステータスがえらく高い気がする。このレベルでこのステータスとなると、かなりの優良株だと言えるだろう。
しかし、どうしてもそこ以外に気になってしまう箇所があった。
【種族 フェンリル】
フェンリルって、神話か何かに出てくる怪物的な奴だった気が……
「ポチー、よーし、よしよし」
「きゃん、きゃんっ!」
そんな俺の前のまえでは、リリがポチと戯れていた。
可愛い女の子と子犬が遊んでいるという状況はとても絵になるが、今はそんな景色を見て和んでいられる状況ではなかった。
そんな目の前の状況と、頭に流れてきた鑑定結果を前に、俺はしばらく脳がフリーズしたように固まってしまったのだった。