「……難しいことはないって言われて、本当に簡単なことってあるのか?」
俺たちはミノラルから少し離れたドニシアという街に来ていた。
ミノラルから馬車で半日ほど移動した先にある都市で、ラエドと反対方向に位置する街である。
ラエドほど山の中にあるわけではないため、鉱山もなく、鍛冶師の街という訳ではない。
それでも、膨大な自然があることから、冒険者たちには好まれる街ではあった。
少し街から離れただけで、魔物がたくさんいる街。冒険にとって拠点にしやすい街として有名で、他の都市よりも冒険者ギルドが盛んだったりする。
そんな街で俺たちが何をしているのか。それは、ガリアからの依頼を達成するためだった。
「『ドニシアとミノラルの中間地、タルト山脈についての調査』。それも、ドニシアの冒険者ギルドで聞き込みをするだけでいいって、簡単過ぎないか?」
「聞き込みだけなら終わっちゃいましたもんね。最近、ワイバーンが暴れているとか」
「そもそも、ワイバーンが暴れてるって分かったから、その調査をしてくれってことだと思うんだけど、聞き込みだけで分かる情報って少なすぎないか?」
どうやら、最近タルト山脈でワイバーンが暴れているらしい。ワイバーンが数日間も暴れているため、ワイバーンよりも弱い魔物たちがその山脈から下りてきているとのことだった。
そして、ギリギリ管轄的にそのワイバーンが暴れている場所は、ミノラルの冒険者ギルドが管轄みたいだった。
この街に来てから、冒険者ギルドの職員や冒険者から聞き込みをして、ワイバーンがいると言われている場所と、その大きさと種類までは分かった。
しかし、俺たちをタルト山脈に向かわせようとしている時点で、このくらいの情報は掴んでいたと思う。
闇雲に何もない山脈の調査をさせたりはしないだろう。
「さすがに、この情報だけで帰るわけにはいかないよな」
ガリア達には、このクエストを受けることで冒険者ランクを上げるか決めると言われていた。
そんな大事なクエストだというのに、素直にこんな情報だけを持って帰るわけにはいかないだろう。
「今回のクエストって、絶対に俺たちを見定めるためのクエストだよな」
「見定める、ですか?」
リリは俺の言葉を受けて少しきょとんとしていた。
どうやら、リリは気づいていないようだった。このクエストの本来の意味に。
俺はそんなリリに答え合わせをするように、説明口調で言葉を続けた。
「ああ。これだけ自由度の高いクエストで、どこまでの成果を持って帰ってくるか。それを見ているんだと思う」
本当にお使いと言われて、言われたことをそのまま遂行するのか。もしくは、何かしらギルドに対して有益な情報を追加で持ってくるか。
そんな自主性を確かめようとするクエストに違いない。
「な、なるほど。……私達を見定める意味で、ギルド長自らクエストを依頼してきたんですね」
「そうだろうな。そうとしか考えられない」
正直、そこまで冒険者ランクにこだわりはなない。それでも、ずっとステータスと冒険者ランクが合わなすぎると、ミリア以外の人からも怪しい目を向けられる可能性がある。
それに、今後も冒険者ギルドにずっと目をつけられるようなことになるだろう。
そうならないためにも、少しでも冒険者ランクを上げていた方が良い気がする。
それに、今回のクエストで冒険者ランクを上げられなかったら、別のクエストを受けて冒険者ランクを上げるように言われそうだしな。
多分、そうなった場合に受けるように言われるクエストは、一個や二個では済まないだろう。
それなら、今回のクエストを完璧にこなしてしまった方が、後で大量のクエストを受けるよりも効率的だ。
「タルト山脈に行くまでに、馬車に乗っていても魔物に襲われるはずだ。その魔物達を倒して、実際にワイバーンを見て調査してきたかもポイントになりそうだな。……よしっ、少し気合い入れていくぞ、リリ」
「はい! 頑張ります!」
ふんすと鼻息を漏らしてやる気十分なリリと共に、俺たちは冒険者ギルドを後にしてタルト山脈に向かうことにしたのだった。
俺たちはミノラルから少し離れたドニシアという街に来ていた。
ミノラルから馬車で半日ほど移動した先にある都市で、ラエドと反対方向に位置する街である。
ラエドほど山の中にあるわけではないため、鉱山もなく、鍛冶師の街という訳ではない。
それでも、膨大な自然があることから、冒険者たちには好まれる街ではあった。
少し街から離れただけで、魔物がたくさんいる街。冒険にとって拠点にしやすい街として有名で、他の都市よりも冒険者ギルドが盛んだったりする。
そんな街で俺たちが何をしているのか。それは、ガリアからの依頼を達成するためだった。
「『ドニシアとミノラルの中間地、タルト山脈についての調査』。それも、ドニシアの冒険者ギルドで聞き込みをするだけでいいって、簡単過ぎないか?」
「聞き込みだけなら終わっちゃいましたもんね。最近、ワイバーンが暴れているとか」
「そもそも、ワイバーンが暴れてるって分かったから、その調査をしてくれってことだと思うんだけど、聞き込みだけで分かる情報って少なすぎないか?」
どうやら、最近タルト山脈でワイバーンが暴れているらしい。ワイバーンが数日間も暴れているため、ワイバーンよりも弱い魔物たちがその山脈から下りてきているとのことだった。
そして、ギリギリ管轄的にそのワイバーンが暴れている場所は、ミノラルの冒険者ギルドが管轄みたいだった。
この街に来てから、冒険者ギルドの職員や冒険者から聞き込みをして、ワイバーンがいると言われている場所と、その大きさと種類までは分かった。
しかし、俺たちをタルト山脈に向かわせようとしている時点で、このくらいの情報は掴んでいたと思う。
闇雲に何もない山脈の調査をさせたりはしないだろう。
「さすがに、この情報だけで帰るわけにはいかないよな」
ガリア達には、このクエストを受けることで冒険者ランクを上げるか決めると言われていた。
そんな大事なクエストだというのに、素直にこんな情報だけを持って帰るわけにはいかないだろう。
「今回のクエストって、絶対に俺たちを見定めるためのクエストだよな」
「見定める、ですか?」
リリは俺の言葉を受けて少しきょとんとしていた。
どうやら、リリは気づいていないようだった。このクエストの本来の意味に。
俺はそんなリリに答え合わせをするように、説明口調で言葉を続けた。
「ああ。これだけ自由度の高いクエストで、どこまでの成果を持って帰ってくるか。それを見ているんだと思う」
本当にお使いと言われて、言われたことをそのまま遂行するのか。もしくは、何かしらギルドに対して有益な情報を追加で持ってくるか。
そんな自主性を確かめようとするクエストに違いない。
「な、なるほど。……私達を見定める意味で、ギルド長自らクエストを依頼してきたんですね」
「そうだろうな。そうとしか考えられない」
正直、そこまで冒険者ランクにこだわりはなない。それでも、ずっとステータスと冒険者ランクが合わなすぎると、ミリア以外の人からも怪しい目を向けられる可能性がある。
それに、今後も冒険者ギルドにずっと目をつけられるようなことになるだろう。
そうならないためにも、少しでも冒険者ランクを上げていた方が良い気がする。
それに、今回のクエストで冒険者ランクを上げられなかったら、別のクエストを受けて冒険者ランクを上げるように言われそうだしな。
多分、そうなった場合に受けるように言われるクエストは、一個や二個では済まないだろう。
それなら、今回のクエストを完璧にこなしてしまった方が、後で大量のクエストを受けるよりも効率的だ。
「タルト山脈に行くまでに、馬車に乗っていても魔物に襲われるはずだ。その魔物達を倒して、実際にワイバーンを見て調査してきたかもポイントになりそうだな。……よしっ、少し気合い入れていくぞ、リリ」
「はい! 頑張ります!」
ふんすと鼻息を漏らしてやる気十分なリリと共に、俺たちは冒険者ギルドを後にしてタルト山脈に向かうことにしたのだった。