「……冒険者ランクとパーティランクをB級に降格、だと?」

 ミノラルの冒険者ギルドにて、カウンター越しに立つギルド長のガリアは、ギース達に冒険者ランクとパーティランクの降格を告げていた。

 クエストの達成報告をした数日後、冒険者ギルドに呼ばれたギース達は想像もしなかった言葉を告げられて、言葉を失ってしまっていた。

 それからしばらくして、なんとかオウム返しのように言葉を絞り出したギースの反応を見て、ガリアは小さく頷いていた。

「ああ、それがギルドとしての判断だ」

「ふざけてんのか? あぁ?」

 ギースの声は怒りのあまり震えてしまっていた。心の奥で燃え上がる感情を抑えたような声は、所々裏返っている。

「ふざけてなどいない。真面目に判断して、お前たちにA級の力がないことが分かった」

「ちょ、ちょっと、待ってくれ! クエストは問題なく達成したじゃないか?!」

「そうよ! クエスト達成したのにランク下げられるってどういうこと?!」

 さすがに降格することになるとは思っていなかったのか、エルドとキースは戸惑いながら、大きな声を上げていた。

 ガリアはそんな二人を細めた目で見ると、小さくため息を一つ漏らした。

「ほぅ、クエストで何かしらの働きをしたのか。お前たちは」

「「……っ」」

 この前の大規模なクエストでは、ただギース達は他のパーティについていっただけだった。
そのことを自覚している二人は、ガリアの言葉を受けて視線を逸らして黙ることしかできなかった。

「ふざけんな、くそジジイ! 俺は認めないぞ!!」

 それでも、ギースだけは怒りの感情を冷ませるどころか、膨れ上がったその感情をガリアにぶつけるように口を開いた。

 ギースは腸が煮えくり返ったような表情でガリアを睨んでいるが、それがただの逆切れだということに気づいていないようだった。

「ギース。これでもかなり配慮した結果だ。これ以上ごねるようなら、もっと制裁を加えなくてはならない」

「脅す気か、クソ野郎! 絶対に認めないぞ! S級以外だなんて、絶対に認めない!! 今すぐ撤回しろ!!」

 血走ったような目でガリアを睨む目は、自分は間違っていないと確信を持つ目をしていた。

 ギース達がこれまでアイクにした扱いと、先日のクエストでの働きのすべてを報告されているということに気づいていない様子だった。

 いや、気づいても尚、自分の行動は間違っていないと確信を持っているようだった。

「ふぅ、やむをえんか。……本日をもって、『黒龍の牙』のパーティとしての活動を一時凍結させてもらう」

 これまでのパーティとしての功績を考慮して、パーティランクの降格に留めるつもりだったが、そんな配慮さえも受け入れらないギース達を見て、ガリアは本来すべきだった処分の内容を変えた。

 パーティとしての活動の凍結。それは一時的にパーティとしての活動ができなくなるという処分だった。

「は? 凍結?! 俺たちはS級だぞ! そんな横暴が許されるわけないだろ!」

 そして、そんな言葉をギースが受け入れるわけがなく、ギースはただ我儘を言うかのように声を荒くしていた。

 そんな幼稚すぎるギースを見て、ガリア心の底から漏れ出たようなため息を吐いた。

「それを決めるのは冒険者ギルドだ。ギース、これ以上ごねるなら、『黒龍の牙』のメンバーの冒険者としての権利を剥奪しなくてはならなくなるぞ?」

「てめぇ! 出来るもんならやってみーー」

 ギースがそれ以上の言葉を口にしようとしたとき、エルドがギースの体を後ろから羽交い締めにして押さえ込んだ。

 エルドの顔には焦りの感情が多く見られ、必死にギースを説得するように言葉を続けた。

「馬鹿野郎、ギース!! 抑えろ! 冒険者として活動できなくなるんだぞ!」

「ギース! 抑えて! さすがに、冒険者の権利剥奪はヤバいから!!」

 冒険者の権利の剥奪。それは、全ての冒険者ギルドで共有される情報で、権利を剥奪された冒険者は、生涯クエストを受けることができなくなる。

 それは、冒険者として生きていく未来を奪われることと同じだった。

 その言葉を聞いて、キースも顔を青くさせて、ギースを説得させようとしていた。

 しかし、二人の必死の説得が怒りに狂ったギースの耳に届くはずがなかった。

「放せ!! 認めないぞ! 俺はっ、俺はっ!!」

 ギースはエルドの拘束を無理やり解くと、ガリアを殺すんじゃないかという目つきで睨みつけた。

 しかし、そんな目で見られてもガリアは怯むことはなく、逆に睨みつけられたギースは歯ぎしりをさせながら、やり場のない怒りの感情を沸々と募らせていた。

 そして、そのやり場のない怒りの感情は、憎悪という形に姿を変えていった。

「クソがっ!!! ……あ、あいつのせいだっ、あいつが、急にクエストに参加してきたからだっ……くそっ、くそっ!!」

 ギースは最後に誰かを恨み殺すような表情でそんな言葉を残して、冒険者ギルドを後にした。

 当然、冒険者ギルドでこれだけ暴れまわれば、終始注目を集め続けることになる。

 ギースが冒険者ギルドから立ち去っても、その視線は他のメンバー達に向けられ続けていた。

 こうして、『黒龍の牙』は一時凍結に、そのパーティメンバーの冒険者ランクも一律でBに下げられたのだった。