「アイクさん、この後どうするんですか?」

「バングの所に行くには、少し時間が早いよな……どうするか」

 俺たちは冒険者ギルドで冒険者カードの更新を終えて、その後の予定について話し合っていた。

 昼前に来てくれと言われているバングの所に行くにしてはまだ時間が早すぎるが、宿まで戻るのはそれはそれで面倒くさい気がする。

 程よく街で時間を潰してもいいが、がっつり見て回るにしては時間があまりない。

「少し武器でも見て、時間を潰すか」

 どうするかと考えていると、視線の先にちょうど武器を扱っている店があった。リリのレンタル品も一ヵ月後には返さなくてはならない。そうなると、今後必要になる武器を見ておくのもいいだろう。

「そうですね、ちょうど近くにありますし」

 どうやら、リリもその意見に反対ではない様子だったので、俺はリリと一緒に近くになった武器屋に入ることにした。

 王都の冒険者ギルドの近くにある二階建ての武器屋。冒険者ギルドが立てられた当時からあるらしく、昔からこの一等地に店を構えている。

 つまり、何が言いたいかというと……。

「(高いなぁ)……」

 一番安い短剣で20万ダウもする中々の値段だった。俺が田舎で買った中古8万ダウの短剣の二倍以上もの値段だ。

 当然、そんな言葉を口に出す訳にはいかない。そんな心の中の声を漏らしたら、リリが気にしてしまうだろうから口には出していない。

 それでも、お財布事情を考えれば極力安く済ませたいという物。

 この店は昔から有名だし、物は良いと思うのだがその分値段も張る。いや、しかし、せっかくリリに持たせるなら良い物を持たせたいよな。

 武器って結構値段が物を言うところあるし、他の店で買うよりもここで買った方がいいかもしれない。

「あ、アイクさん。私こんな高い物いりませんからね?」

「み、店で高いものとか言うんじゃありません。いや、武器って言うのは良い物使った方がいいんだよ」

 どうやら、隠していたつもりが顔に出ていたようで、リリは慌てたように俺の服の裾を掴んできた。

 別に遠慮して欲しいとかそんなことは思っていなかったのだが、俺が買ってしまうことを恐れているような顔をしている。

 この感じだと、俺が短剣を買い与えても嬉しさよりも申し訳なさが勝ってしまいそうだ。

 ……なんとかその申し訳なさを払拭させてやらないとな。

「それに、この短剣だって出来がいいんだよ。ほら、良く見てーー見て?」

 俺がその短剣をじいっと見ると勝手に【鑑定】のスキルが発動してしまったようで、【鑑定】の結果が頭に流れてきた。

【鑑定結果】
【種類 短剣】
【武器ランク B】
【材料 ワイドディアの角、鉄鉱石】
【付加 なし】

「へぇ、ワイドディアの角使ってるのか」

 クエストでワイドディアの角の採取というのも見たことがあった。その用途までは考えたことがなかったのだが、こんな身近に使われているとは知らなかったな。

「うん、武器ランクもBらしいし、結構良い物みたいだぞ」

 というか、【鑑定】ってこんなふうにも使えるのか。

 ん? そういえば俺のスキルに【生産】と【錬金】っていうのがあったよな。ていうことは、もしかして俺も武器が作れたりするのだろうか?

「ほぅ。見ただけで全て見抜いたか。中々良い【鑑定】を持ってるな」

「え?」

 俺が声のした方に視線を向けると、そこにいたガタイの良い大柄な男と目が合った。無精ひげを生やした作業服を着た五十代くらいの職人気質な男。何か接客でも受けていたのか、椅子に片膝を乗せて話していたが、俺の声を聞いてこちらに体ごと振り向いてきた。

「同業者……って感じではないな。ん? ほぅ、お前さん中々のステータスだな」

 一瞬で俺のステータスを見抜いたということは、この人も【鑑定】のスキル持ちらしい。

 武器屋で会って同業者か確認をして、同業者ではないと言っていた。ということは、この人は冒険者ではないのだろう。

 そうなると、考えられることは……。

「お前さん、ちょいと使いを頼まれてはくれないか?」

 職人気質に見えたその男は意外にも子供のような笑みを向けて、俺にそんな言葉を投げかけてきた。