「ふぅ、ようやく着いたな」
俺たちは昨日と同じ森に来ていて。今日のクエストはワイドウルフの討伐と、ファング肉の採取、ワイドディア肉の採取。
家畜を食べてしまうような魔物は結構頻繁に討伐の依頼が出たりする。冒険者にとって結構ありがたいが、家畜を襲えるほど獰猛な魔物でもあるので、初心者が手を出したら逆に狩られる可能性もある。
今回のクエストでは、そのワイドウルフの小規模な群れが目撃されたとのことだったので、その群れの壊滅が目的だ。
今までの俺だったら少しためらっていたが、昨日のクエストのおかげで自分がどのくらい動けるのか把握できた。
群れ事態も小規模だって話だし、そんなに難しい依頼ではないだろう。
「じゃあ、始めるか。【気配感知】【鑑定】」
俺は歩きながら二つのスキルを使用して、ワイドウルフの居場所を探した。
全方位に対して【気配感知】を使用して、徐々にその範囲を広げていく。それからしばらく経って、赤い炎のような気配が複数個見られた。
その炎に対して【鑑定】を使うと、その炎の正体が炙り出された。
【鑑定結果 ワイドウルフ……狼型の魔物。家畜や自分よりも体の小さい魔物を襲う。その牙は装備品の材料などに使われる】
「……見つけた。数は六体か」
「どっちの方角ですか?」
「こっちだ。行くぞ、リリ」
俺はリリを連れて赤い炎がする方に向かって走っていった。
このまま走っていったら、どこかで勘づかれるだろう。群れでいるワイドウルフが俺たちを見て逃げるとは考えにくいが、相手に待ち構えられるというのはあまり良いものではない。
何か対策とかできたりしないだろうか。
「道化師っぽいこと……姿を消すのも道化師っぽいか?」
「アイクさん?」
俺は昨日のリリの言葉を思い出して、道化師にできそうなことの一つを想像した。道化師なら、何かを隠すことくらいできるんじゃないか? それこそ、自分を隠すくらいのことなら。
そして、【道化師】を使用するイメージをすると、ぽろっと何か新しいスキルが上から落ちてきたような感覚があった。いや、元からあったスキルが見えたと表現した方がいかもいしれない。
俺は【道化師】を使用して、その中にあるスキルを使用した。
「え? あ、アイクさん?」
隣にいたはずの俺が突然姿を消した。そう思ったリリは俺の姿を探すようにきょろきょろと辺りを見渡していた。
どうやら、上手くいったらしい。
俺がそのスキルを解くと、リリは突然俺が目の前に現れたように目を見開いて驚いていた。
「え、アイクさんどこに行ってたんですか? ていうか、今突然現れました?」
「違うって。【道化師】を使用して姿を消してたんだよ。【潜伏】っていうスキルみたいだ」
俺が先程使用したスキルに細かく【鑑定】をかけると、それが【潜伏】というスキルであることが分かった。
【鑑定結果 潜伏……姿を見えにくくするスキル。レベルやステータスが上の相手には効きにくい。触れている間は対象物も隠すことができる】
このスキルを使用して近づけばワイドウルフにもバレずに近づける。このスキルは中々便利なスキルだ。
「リリ。リリに【潜伏】を教えるにはどうしたらいい? そうすれば、リリもこのスキル使えるんだろ?」
「そうですね……しばらく、【潜伏】を使った状態でいてください。私も【助手】を使用し続けてみます。おそらく、それで使えるようになるかと」
「分かった。それまでは、手を繋いでるから安心して覚えることに集中してくれ」
「え、あ、ありがとうございます」
俺が手をリリの方に差し出すと、リリは顔を仄かに赤くして俺の手を両手で握ってきた。そのまま沈黙の時間が流れるに連れて、リリの頬の赤さを増していくようだった。
これは、何か勘違いをされているんじゃないか?
「……触れてる間はリリのことを【潜伏】で隠せるから、手を繋ごうって意味だからな?」
「え? わ、分かってますよ! 私は助手ですから!」
謎に意気込んでいるリリの姿に首をかしげて、俺はリリの手を引いて走り出した。
リリの手の柔らかさを意識しなかったかというと、そんなこともなかった。
俺たちは昨日と同じ森に来ていて。今日のクエストはワイドウルフの討伐と、ファング肉の採取、ワイドディア肉の採取。
家畜を食べてしまうような魔物は結構頻繁に討伐の依頼が出たりする。冒険者にとって結構ありがたいが、家畜を襲えるほど獰猛な魔物でもあるので、初心者が手を出したら逆に狩られる可能性もある。
今回のクエストでは、そのワイドウルフの小規模な群れが目撃されたとのことだったので、その群れの壊滅が目的だ。
今までの俺だったら少しためらっていたが、昨日のクエストのおかげで自分がどのくらい動けるのか把握できた。
群れ事態も小規模だって話だし、そんなに難しい依頼ではないだろう。
「じゃあ、始めるか。【気配感知】【鑑定】」
俺は歩きながら二つのスキルを使用して、ワイドウルフの居場所を探した。
全方位に対して【気配感知】を使用して、徐々にその範囲を広げていく。それからしばらく経って、赤い炎のような気配が複数個見られた。
その炎に対して【鑑定】を使うと、その炎の正体が炙り出された。
【鑑定結果 ワイドウルフ……狼型の魔物。家畜や自分よりも体の小さい魔物を襲う。その牙は装備品の材料などに使われる】
「……見つけた。数は六体か」
「どっちの方角ですか?」
「こっちだ。行くぞ、リリ」
俺はリリを連れて赤い炎がする方に向かって走っていった。
このまま走っていったら、どこかで勘づかれるだろう。群れでいるワイドウルフが俺たちを見て逃げるとは考えにくいが、相手に待ち構えられるというのはあまり良いものではない。
何か対策とかできたりしないだろうか。
「道化師っぽいこと……姿を消すのも道化師っぽいか?」
「アイクさん?」
俺は昨日のリリの言葉を思い出して、道化師にできそうなことの一つを想像した。道化師なら、何かを隠すことくらいできるんじゃないか? それこそ、自分を隠すくらいのことなら。
そして、【道化師】を使用するイメージをすると、ぽろっと何か新しいスキルが上から落ちてきたような感覚があった。いや、元からあったスキルが見えたと表現した方がいかもいしれない。
俺は【道化師】を使用して、その中にあるスキルを使用した。
「え? あ、アイクさん?」
隣にいたはずの俺が突然姿を消した。そう思ったリリは俺の姿を探すようにきょろきょろと辺りを見渡していた。
どうやら、上手くいったらしい。
俺がそのスキルを解くと、リリは突然俺が目の前に現れたように目を見開いて驚いていた。
「え、アイクさんどこに行ってたんですか? ていうか、今突然現れました?」
「違うって。【道化師】を使用して姿を消してたんだよ。【潜伏】っていうスキルみたいだ」
俺が先程使用したスキルに細かく【鑑定】をかけると、それが【潜伏】というスキルであることが分かった。
【鑑定結果 潜伏……姿を見えにくくするスキル。レベルやステータスが上の相手には効きにくい。触れている間は対象物も隠すことができる】
このスキルを使用して近づけばワイドウルフにもバレずに近づける。このスキルは中々便利なスキルだ。
「リリ。リリに【潜伏】を教えるにはどうしたらいい? そうすれば、リリもこのスキル使えるんだろ?」
「そうですね……しばらく、【潜伏】を使った状態でいてください。私も【助手】を使用し続けてみます。おそらく、それで使えるようになるかと」
「分かった。それまでは、手を繋いでるから安心して覚えることに集中してくれ」
「え、あ、ありがとうございます」
俺が手をリリの方に差し出すと、リリは顔を仄かに赤くして俺の手を両手で握ってきた。そのまま沈黙の時間が流れるに連れて、リリの頬の赤さを増していくようだった。
これは、何か勘違いをされているんじゃないか?
「……触れてる間はリリのことを【潜伏】で隠せるから、手を繋ごうって意味だからな?」
「え? わ、分かってますよ! 私は助手ですから!」
謎に意気込んでいるリリの姿に首をかしげて、俺はリリの手を引いて走り出した。
リリの手の柔らかさを意識しなかったかというと、そんなこともなかった。